北極亭日乗 |
平成十六年二月 |
平成十六年二月二十九日(日曜)曇一時雪 二月も本日にて終わりなり。閏年なれば一日儲けて余裕の月末と言ひたきところなれど然に非ず、日々諸々の皺寄せ一気に押し寄せ来たりて未だ処理つかぬ件二、三残り来月へ持ち越しとはなりぬ。女房の言ふ如く、普段よりこまめに処理為しおけば斯様なる事態避け得るは重々承知なれども、今月も亦先月同様に雪降りて除雪に時間潰されし故、こまめなる処理に手が回らなんだが実情。なんやかや、やいのやいのと謂はれても為す身一つなれば如何ともし難きを知りもせで、女房は「ですから、普段から……」を繰り返すばかりなれば少々腹立ちたり。 記すまいと思ひ定めし雪の事なれど最後の日故、若干。二十二日朝からのベタ雪、翌朝には二十センチ程積もりて一時吹雪模様。風終日強し。道東方面にては二十三、二十四日と降りて交通マヒの大混乱。我が裏庭の雪捨て場も既に満杯状態なれば、此の日より玄関両側に積み上げ置くことに成りし。二十七日朝、所用在りて北地区へ赴く。家を出でし折は曇り空にてありしに、北に着きみれば激しき吹雪。何たる不運、已んぬるかな、南無三とばかり顔伏せ前屈みに歩くこと十分余、目指す建物に辿り着きし我が姿、紛ふこと無き雪達磨と化し居りぬ。此処暫く体験せなんだ吹雪故、今年二月の強烈な想い出とは成りぬ。 ☆ ☆ 一連のオウム事件、オウム真理教とは一体何でありしか。否、ありしでは無く、オウムは「アーレフ」と名を変へ今も存在し居る。其れ等を我が内にては未だ総括し得ず、「何故」の数ばかりが増え続く。更に、此れ迄のオウム裁判は何を裁かんと……など考へ行けば益々以ってオウムの迷路は暗く深し。二十七日、オウム・松本被告判決公判ありて「死刑」を宣したり。 二十七日夕、所用の帰り札幌駅コンコースにて読売新聞号外を入手す。「松本被告死刑」を報じしものなり。以下に全文記し置く。 《松本被告死刑。地下鉄、松本サリンなどオウム13事件首謀。東京地裁判決》 ◇……………◇ ◇……………◇ ◇……………◇ 〔 松本被告が起訴された13事件 〕 〔 オウム事件と松本公判 〕 ☆ ☆ 寝過ぎ寝不足は死亡率高く、七時間睡眠が一番長生きなそうな。四十歳から七十九歳迄の男女十万人を対象に十年間追跡調査したる結果より判明せると謂ふ。睡眠時間四時間以下は七時間に比し男で62%、女で60%死亡率が高く、十時間以上も各73%、92%高くなる由。従来最良と喧伝されし「八時間睡眠」も亦、七時間に比し男11%、女23%死亡率高くなるらし。 さて我は幾時間派かと考へみるに、四時間以下の後は十時間、十時間の後に四時間以下もあれば、五時間が一週間続く場合もあり十時間が連続せることもありて、日々不規則にて定まりたる睡眠時間無し。斯く在れば我が死亡率相当高きか。 「危なし、長生き到底叶わじ」の声聞こえ来るも、此れは一大事と今夜から七時間睡眠厳守せんの気毛頭無し。眠く無ければ幾時間でも起き居りて眠くなれば寝るが我が暮らし。体の要求せるが侭に寝起きするが自然にて、我には楽なり。幾年長生きできるやは知らねど眠りは個々のもの、勝手気侭に寝たし。思ふに、眠くても起き居ねばならぬ時多く在る此の厄介な世に生き居りて、日々規則正しき「七時間睡眠」は難しかろふ。 ☆ ☆ 道議会総務委員会は二十四日の理事会にて、元釧路方面本部長・原田宏二氏ら三人の参考人招致を決定せり。三月四日に総務委員会を開催、原田氏への参考人質疑を実施の方針と謂ふ。道議会が追及を開始せるは当然の事、此の動きに道警如何に反応するか興味深し。議会には今後、百条委の設置も視野に徹底的な真相解明を望みて止まず。途中腰折れ状態にて終結となれば、今度は議会不信を招きて道民の非難浴びるは必定と知れ。 悪事を隠さんとせる輩は矢張り人前には出辛きか。参考人招致決まりし旭川中央署・元署長の二人は二十五日、議会事務局の打診に対し体調不良等を理由に委員会出席を拒否したる由。不正を闇の奥深く隠さんとする者も、不正を白日の下に曝さんとする者も、共に道警OB。いずれが正しき行為かは自明の筈。 道警報償費不正支出疑惑に関連し、北海道新聞が独自に入手せし弟子屈署の裏帳簿を二十六日付朝刊で公表。九六年度から二〇〇〇年度に作成されたる裏帳簿にて、「この資料には、市民を架空の捜査協力者に仕立てたうえで、国費の捜査費と道費の報償費を裏金にし、署長ら幹部のヤミ手当などに充当していたことが記されている」と報じたり。此の裏帳簿の出現、先の元釧路方面本部長・原田宏二氏の証言を裏付ける事にもなり、道警の組織的不正の存在は疑い得ぬ事実となりたり。 ☆ ☆ 二十四日午後、参院本会議場にてアナン国連事務総長演説。「(資金面で)寛大な貢献を表明した。困難な議論を経て、人道復興支援を行うためにサマワに自衛隊を派遣した」「窮状に立ち向かうイラクに対して称賛されるべき連帯姿勢を示した」「困難な挑戦だが、国際社会が一致してイラク人を支持すれば、乗り越えられないものではない。日本はこの挑戦に率先して向かい合った」(2月24日付読売夕刊)と、我が国の為せし一連の対イラク行動を評価、称賛せり。 傍目には褒め過ぎに映ろふが、あれ程の金を出した国民から見れば至極当然。不景気に喘ぐ我ら貧乏人からせば寧ろ褒め足りぬぐらいなり。アナン演説心地よく聞いたは小泉首相、石破防衛長官ら政府与党の連中と自衛隊派遣に賛意を示す人々のみと考ふるが、間違ひか。派遣慎重・反対派にせば「誰に頼まれしか。今時余計な演説苦々し」と謂ふ感じならん。 解せぬは「多忙なアナン総長、何用あっての来日か」の一点のみ。まさか政府を称賛せんがために飛び来たった訳でもあるまい。なれば何ゆえの来日。「もう少々イラク復興支援に拠出願いたし」と金の無心にでも来たるか。其の目的につきて報道無きも些か気になるところなれど、皆目分からず解せぬなり。 ☆ ☆ 東京高裁は二十三日、薬害エイズ事件の安部英被告の控訴審公判停止を決定せり。一九九七年三月の初公判より七年余、医師の刑事責任の有無確定せぬ侭終結を迎へたり。弁護側申し立てに因る精神鑑定結果に基づき「心神喪失」と認め、刑事訴訟法の定めに依り公判手続きを停止せるものなり。 「予見可能性の程度は低く、結果回避義務違反があったとは言えない」と無罪にせし二〇〇一年三月の東京地裁一審判決。「此れ程の大罪、何故無罪なのだ」と我憤りたるを覚へおる。初公判開始以前より、マスコミは非加熱製剤の危険性を予見できたとする幾多の証拠を掘り起こし、産官医の安易・無責任な判断が薬害エイズの元凶と連日報じたれば、我有罪疑わずに居りし。其れが「無罪」。どうにも納得行かず憤りたり。 公判停止の新聞報道に弁護団の一人が語りし言葉あり。曰く「ほとんどの医師が当時、非加熱製剤の使用を続けたのに、トップだからといって刑事責任を問うのはおかしい」。斯様な認識もて法廷に臨み来たったとせば死し者、遺族、患者の怒り収まらず。当時、血友病治療を主導せしは安部被告。危険性指摘してクリオ製剤使用を推す医師の意見を無視、厚生省に非加熱製剤使用を説きしも安部被告。多くの医師が厚生省・安部被告の指示に従いて使用し続けたを忘れおるか。総ての災いの源は厚生省薬事行政の粗雑さと安部被告の独断に因るを忘れおるか。トップだからこそ刑事責任を負わねばならぬを理解せぬか。 一旦事起こりて、さて其の責任の所在何処に在るやを問ふ時、此の国にては関係せし者並べて我関せずの風潮。最たるは官僚連。行ふに権威・権力もて強引に為しし後、失敗せば不測の事態にて已む無しの態度。企画立案施行せし政策・事業の失敗数多あれど責任とりたる例寡聞にして聞かず。御上斯くの如く在る故、安部被告が出で来、弁護士の一言が出で来たる。嘆かわし。 ★ ★ ◆29日=サマワ近郊、米軍発砲で騒然。イラク人死亡、陸自郡長の訪問中止。 ◆28日=6か国協議、「核」進展なく閉幕。議長総括発表、共同文書見送り。/苦肉の「総括」前途多難。北朝鮮、核心で一歩も譲らず。 ◆27日=東京地裁、松本被告に死刑判決。「極限の非難に値」、オウム13事件指示。/弁護団、控訴し辞任。 ◆26日=6か国協議。作業部会設置、大筋了承。核凍結・廃棄、手順を検討。/北「核兵器計画放棄」、全面廃棄要求の米と溝。 ◆25日=6か国協議開幕。北「柔軟に協力」表明、日米は全面核廃棄を要求。/北「ウラン濃縮」改めて否定、初日の議論進展せず。 ◆24日=イラクへの自衛隊派遣、「称賛されるべき連帯」。アナン総長、国会演説で評価。 ⇒イラク選挙、「年末か来年初めに」。アナン事務総長が勧告、管理委の設置も。 ⇒米海兵隊50人ハイチ入り、大使館員ら国外退去。 ⇒対北朝鮮、完全な核廃棄要求へ。日米韓、6か国協議に向け調整。 ⇒脱北者8人駆け込み、北京のドイツ人学校。 ⇒道路新会社、国の株保有「1/3」で調整。保有機構が債券発行。 ⇒国連総長が首相と会談、イラク支援で日本を評価。 ⇒東京円急落、一時109円台。 ⇒イカネボウ社長辞任へ、支援要請で経営責任取る。 ⇒安部被告、公判停止。薬害エイズ心神喪失で、事実上の終結。東京高裁決定。 ⇒保険金放火に無罪、2000年3月杉並の事件「自白は不自然」。(東京地裁) ⇒自衛隊ヘリ2機接触、墜落。乗員2人死亡。 ⇒中2、自分の学校に放火未遂。容疑で逮捕、灯油まきバーナーで火。(山口・岩国市) ⇒沖縄中2暴行死、17歳に傷害致死で有罪。4−6年の不定期刑、殺人罪は適用せず。(那覇地裁沖縄支部) ⇒組長を誤認逮捕、顔似た知人が名刺使い恐喝未遂!?(宮城県警) ⇒大阪の家族殺傷、大学生・少女とも「精神疾患」鑑定。 ⇒暴力団抗争、和解の動き。/苫小牧、帯広で厳戒続く。 ⇒猛吹雪「新千歳」閉鎖、紋別で72センチ。道路、JRマヒ状態。/空陸、終日大混乱。新千歳225便欠航、300人が空港で夜明かし。 (以上、読売新聞から) |
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平成十六年二月二十二日(日曜)雪 昼餉終わりて暫しまどろみし後、朝より続くべた雪降るを眺め窓辺にて読み止しの新聞広げ紫煙燻らしおれば、猫ども二匹物憂げに近寄り来て我が背後からひょいと窓枠に飛び乗り、庭木の枯れ枝をば眺め始む。やや間ありて雌猫「にゃにゃ、にゃにゃ」と短く小さく鳴くを聞きて窓外に視線移せば、林檎置きし餌場に名も知らぬ野鳥の二羽飛来し来たりて周囲を窺い交互に林檎を突きだせり。雄猫無言のまま目をば円くして凝視、雌猫鳥の鳴き声真似しおるか声押し殺し「にゃにゃ、にゃにゃ」と続け居たり。 近所に森、林無ければ何処より飛び来たりしものか。雪の中、林檎を突つきおる姿、哀れにてもあり健気にてもあり、妙に懐かしくいとおしく不憫に思はれてならず。腹空きて餌求め来るは本能の為せる業なるも、野に生きる過酷さ思へば其の本能憎くし。比べ見よ、眺め居る猫どもよ。思ひ起こせ猫どもよ、嘗ての野良の暮らしを。腹空けば「にゃご」と鳴きて食事の催促を為す知恵、何時何処で身に着けしか……いや、其れも本能か? などと由無き事ども考へ居れば、不意に納得せり。食い入るが如くに見詰める猫二匹、自由に空翔る野鳥の姿に、ひもじくも自由であった嘗ての野良の我が身を投影し眺め居るを。 今一つ確信に至りたる事在り。我が家の周りを徘徊せる野良を見つけたる折、其の姿追いて家中の窓と謂ふ窓を駆け回り眺め居るも同じ理由ならん。雨の中、雪の中、痩せ細った体を濡らし歩き行く野良を見て我らは憐憫の情を抱くも、二匹の猫ども然にあらず、敬意と憧憬の念持ちて眺め居るに相違無し。父母と共に生きた自由な日々を回想し、生き別れた父母にてやあらむと面影探し求めて追い眺め居るに相違無く、父母との再会期して何時の日か再び野良に戻ることを夢想し続け居るに相違無し。 ……なれど、と考へる。戸開け放ちても外へ出で行かぬは如何したものか。未だ出立の準備整わず、今は其の時に非ずと謂ふ事か。ちょいと散歩でも、てな気持ち起きぬものか。拾い育ててより四年余、外界へ飛び出し行く気配とんと見へぬは何故か……。野良どもよ、お前達はなぜに……と窓辺を見遣れば既に野鳥飛び去りたるか、猫ども所在無げに毛繕いし居りぬ。 ☆ ☆ 十九日、新生銀(旧日本長期信用銀行)が東京証券取引所へ上場。経営を引き継ぎし米投資会社リップルウッド・ホールディングス、1000億を超える利益を得たり。其れに引き換へ我ら国民の負担はと見れば、投入せし公的資金7兆8676億円うち旧長銀の債務超過分穴埋めに金銭贈与せる3兆5889億円は損失確定、今後国買い取りの債権にも損失が見込まれ、最終的には4―5兆円の負担。しかも上場で得たる約2300億円の売却益に課税もできぬ状態。 言ふてみれば、我ら日本国民が8兆円の資金を出し、米国の会社に銀行を作り与え、「金は返さずともよし、儲けには課税もしません」と謂ふ馬鹿げた話。政府の無策で我らに負担を強いておきながら、竹中経済財政・金融相は新生銀を「再生のモデルだ」と称賛しおるとか。彼の学び研究しおった経済学と如何なものでありしか。斯様な「再生」なれば二度と為しくるるな。 ☆ ☆ 警察庁に責っ付かれたか十七日、道警が「予算執行調査委員会」を設置せり。芦刈勝治本部長は「全力で調査を行い、事実解明を通して道民の理解を得たい」とするも、幾度も申す通り第三者が入らぬ手前味噌の調査では意味無く、道民の理解など到底得られぬ事何故に分からぬか。十八日付読売に以下の記事在りたり。 「参院選を間近に控えた各会派は、次の定例道議会で従来の静観姿勢から一転、疑惑追及に乗り出す構え。調査委設置は、こうした変化を察知した道警が、答弁乗り切りを策した『道議会対策』ではないかと疑ううがった見方さえ、議会内で出ている」 考へられなくも無し。議員質問に「其の点につきては調査委にて鋭意調査中」と逃げを打つには便利。とは申せ、如何に窮し居るにせよ左様な策を……と否定はするが、議会始まりて後如何相成るか。二十四日の定例道議会開会迄に調査委が何処まで真相解明できるものか疑わしけれど、此処に来て万が一にも「不正存在せず」とは答弁しまい。議会での徹底究明に期待したし。 ☆ ☆ 教育研究機関・日本青少年研究所が日米中韓にて実施せる「高校生の生活と意識に関する調査」結果、十七日付朝刊にて些かの驚きと納得持ちて読み終へり。「今時の高校生は何とも……」云々と日頃考へ居る事と重なりて、深刻なる問題内包せるを感ず。 設問「女は女らしくすべきだ」を肯定28.4%(米58.0%、中国71.6%、韓国47.7%)。他国に比し突出しての低き数値なり。設問「男は男らしくすべきだ」を肯定43.4%(米63.5%、中81.1%、韓54.9%)。50%を割り込みおるは日本のみ。設問「結婚前は純潔を守るべきである」を肯定33.3%(米52.0%、中75.0%、韓73.8%)。他3か国に比し著しく低し。 実際、日々見おる高校生男女共に「らしさ」無き者多し。乱暴なる口調、大声での会話と馬鹿笑ひ、慎み無く羞恥心皆無が如き振る舞い為せる女子高生。軽佻浮薄なる精神構造持ちて忍耐・克己心を欠き、覇気無く無気力にして自立心無き男子高生。無論全員とは謂はぬが、此の高校生の在り様が調査結果に表れおるは確か。指摘されおるジェンダーフリーの教育内容も問題ながら、其れ以前に教育せねばならぬ事――男と女は肉体的にも精神的にも区別される。性差は認められねばならぬ――をば学校も家庭も忘れ置き去りにし来たったが問題。性差別と性差は別物なり。 「純潔を守るべき」の設問に於いて肯定男性が肯定女子を上回りたるは日本のみ。男子40.9%、女子29.2%。情け無き事なれど此の数字、若年女子の性の乱れを如実に示しおる。大日向雅美・恵泉女学園大学教授(心理学)曰く「メディアに性や暴力が氾濫し、日本の大人が命や性の大切さを若者に示していない現状が表れているのでは」。此の調査結果、我らも重く受け止めねばならぬ。 ☆ ☆ 道警旭川中央署の報償費不正流用による裏金疑惑に関し十三日、上級官庁たる警察庁がようよう重き腰上げたり。如何な鈍き組織でも元釧路方面本部長・原田宏二氏の実名証言公になりては口閉ざし沈黙守り通すは所詮無理。此処は一番、やる気の在る処見せなば国民の批判かわす事もできずと踏んだるか。 と謂ふて、やる気微塵も見えず。今回疑惑の真相解明目的に「予算執行検討委員会」設置したる迄は可なるも、後悪し。真相解明の調査は道警に任せ、其の結果を基に対応検討とありては如何にもならぬ。「疑惑・不正無し」を主張し来たった道警が、不正疑惑の張本人・道警自身を調査できよう筈が無かろうふ。 不祥事を引き起こせし本人に其の不祥事を調査して真相解明せよ、と謂ふが如き警察庁の無能ばかばかし。事情聞きたしと原田氏に面会求めたとて、当の相手が道警では拒否も当然。警察庁も此の体たらく、国会発言聞くに小野国家公安委員長も頼りにならぬ。上級組織に真相解明の意思無しとあらば、国会の場で原田氏が再度証言為す以外無かろうふ故、残るは参考人招致のみとなろふが、其の前に知事、道議会の調査、究明在りて然るべきなり。 ★ ★ ◆22日=自爆テロ8人犠牲、エルサレムで路線バス狙う。 ◆21日=国連事務総長、自衛隊派遣を評価。24日の国会演説で言及へ。 ◆20日=イラク、民主化プロセス見直し。主権受け皿、米が「選出会議」方式断念。 ◆19日=イランの列車爆発、死者295人に。 ◆18日=イランで貨物列車爆発、180人以上死亡。 ◆17日=イラク・サマワで連続爆破、ビデオ店前とビリヤード場で。 ◆16日=バグダッド。小学校で爆発、児童2人死亡。 ◆15日=イラン議員選、穏健派ら607人不出馬。急進改革派に同調。 ◆14日=イラク中部、武装集団が警察襲撃、銃撃戦で22人死亡。 ⇒チェチェン元大統領代行暗殺か、カタールで車が爆発、死亡。 ⇒昨年の米貿易赤字4893ドル、過去最大。対中赤字20%増。 ⇒悲鳴だった露大統領候補「薬飲まされ誘拐された」。ロンドンで記者会見、「工作の狙いは信用失墜」。 ⇒日朝拉致協議。拉致被害者5人を北に「戻すべき」、「北」が主張。/平壌協議終わる、日朝の溝埋まらず。拉致協議「継続」で合意、「6か国」時に再交渉へ。 ⇒特定船舶入港禁止法案。「考える会」、国会事後承認盛る。 ⇒都、総連施設の公売手続きへ。全国初、税5600万滞納で。 ⇒4月から改定の診療報酬。初診料、病院で50円上げ。小児科に手厚く。 ⇒防衛庁リストに個人情報、東京地裁がプライバシー侵害認定。 ⇒武富士9億所得隠し。不良債権の売却偽装。6億追徴。 ⇒愛犬の死、「医療ミス」500万求め提訴。横浜の男性と家族。 ⇒道警報償費。警察庁、真相解明へ。検討委設置、会計処理も見直し。 ⇒道、報償費3割削減。来年度、知事方針。 ⇒高卒予定の今春就職、内定率なお厳冬。北海道53.3%。 (以上、読売新聞から) |
平成十六年二月十二日(木曜)曇一時雪 道警旭川中央署の報償費不正支出疑惑を巡る住民監査請求に対し、道監査委員が九日、請求を棄却せるを「何故に」と怒り、日乗に記し置かねばと熱り立ったも束の間、機能せぬ監査委員が情けなく筆を執る気にも為れずに居りしが、十一日付読売朝刊一面トップ「元釧路本部長が『裏金』証言」を目にし意気回復せる思ひ。「ようよう、遂に、良くぞ」の言葉以外出で来たらず。 道警の腐敗堕落につきては稲葉元警部事件の折、十二分に味わい知り申したが改善は遂に為されなんだ。現場で働く署員の告発は幾つも在りしが、階級が低いが故に其の信憑性を疑われ相手にされず、不心得者として組織内で抹殺されしと聞き及ぶ。事件後発表されし再発防止・組織再生策の空疎な内容に、最早自浄能力皆無と思ひてより幾年過ぎしか。今此処に高い階級・幹部の告発証言為されし事、主権者として喜び喝采す。道警の反応冷ややかと報じられ居るも、告発証言せし元旭川中央署長、元釧路本部長歴任の原田宏二・元警視長への称賛、我惜しまず。 斯く成りたる上は、警察庁等関連上級官庁による徹底的調査は勿論、第三者機関による調査結果の徹底検証を行いて事実を白日の下に晒すが先決。さすれば第二、第三の原田氏出で来たりて証言為すやも知れず。今更申すまでも無き事ながら、間違っても「道警自身が調査せよ」などと指示を出さぬが肝要なり。 「証言」万人に称賛されて然るべき。此処に経過を記し置く。 《旭川中央署の捜査用報償費疑惑を巡る主な経過》 北海道警旭川中央署が捜査協力者に払うべき報償費を内部で流用していたとされる問題で、同署の署長や釧路方面本部長を務めた元警視長・原田宏二氏(66)が十日、札幌市内で記者会見し、「道警は報償費などで組織的に裏金づくりをしていた」と証言した。裏金捻出には報償費だけでなく、国費の捜査費・旅費なども利用、帳簿とつじつまを合わせるため架空の事件をねつ造したことも明らかにした。道警の報償費不正支出疑惑を巡って、組織の中枢にいた元幹部が実名で証言するのは初めて。(04.2.11 読売新聞1面から〉 道警の報償費疑惑で、裏金づくりの手口や動機を明らかにした原田元警視長の証言の要旨は次の通り。 ☆ ☆ 秘書給与詐欺事件の判決公判は本日、東京地裁で開かれ、社民党元衆院議員・辻元清美被告に懲役二年、執行猶予五年(求刑・懲役二年)、土井たか子前党首の元政策秘書・五島昌子被告に懲役一年六月、執行猶予四年(求刑・同一年六月)を言い渡せり。 追及の主役、庶民派論客等々と呼ばれ書かれた辻元氏、一巻の終わりの日となりたり。秘書給与詐欺では国会議員で三人目の有罪判決。秘書給与流用は日常茶飯どの議員もやり居りしと聞きし時分故、彼女の場合、見せしめの為の逮捕と言へるかも知れぬ。議員として目立ち居たる分だけ見せしめには打って付けの存在だったろふ。もひとつ付け加へれば、「出る杭は打たれる」。仲間内か政敵(と謂ふ大袈裟な相手では無かろうが)からの密告があっての発覚だったやも知れぬ。悪しき事を為したは事実にて裁かれるは当然ながら、正直なところ不運、気の毒の思ひも亦在り。 嘗ての地元である大阪高槻市にては辻元氏、既に過去の人と為りたるか、政界復帰に期待せる声絶えて無き状態と謂ふ。「今後はさらに身を律して歩んでまいりたい」の談話通り、平凡なる“おばん”として実直に生き行く事を切に願ふて止まず。 ☆ ☆ 仙台地裁にて二日間に亘り行われおりし筋弛緩剤事件の最終弁論は十日、守大助被告の意見陳述をもって終了、結審せり。初公判から結審迄二年七か月、此の期間、長きか短きか。迅速化を図る為の集中審理と「争点主義」を明確化しての公判により、目標の「三年以内の判決」達成せるも、尚長し。判決は三月三十日。守被告は意見陳述で「筋弛緩剤を点滴に入れたりしたことは絶対にありません」と述べた由。真実か、はた又……霧の中。 弁護側は当初より「事件そのもが存在しない」とし、被害者の容態急変は個々の病変に因るものにて、検察側論告の「筋弛緩剤の混入に因るもの」ではないと主張。最終弁論にても容態急変の病因、原因を「一時的な虚血性脳発作」「心筋梗塞」「てんかん発作」等と反論せり。裁判官が如何に判断せるか判らぬが、我にせばどうにも合点が行かぬ。同一病院にて、其れまで安定しおりし患者五人が続け様に容態急変、死亡する蓋然性が如何ばかり在るものか。「何かが介在せぬ限り、斯様な事態が起きよう筈が無い」と考へるは素人か。人の体故、いつ何時どうなるか判らぬと云ふことか。弁護側弁論は検察側論告を否定する為だけのものなるや……。元最高検検事・土本武司帝京大教授の「特異な薬剤を使う犯行が同一病院で繰り返されたのは犯行の連鎖性を推認させ、有罪の補強証拠となる」とのコメント聞きしが、さて判決は。 ☆ ☆ 先月三十一日の衆院承認に続き九日参院も承認(賛成百三十、反対百三)、イラク復興支援特別措置法に基づく国会承認手続き終了せり。衆院委にては国民への説明責任充分に果たし得たと謂い難き小泉首相、参院イラク支援・武力攻撃事態特別委にても「自衛隊は戦争に行くのではない。人道復興支援に行く。日本の責任を果たすために行く」の一点張り。説明粗雑にして野党との論議、最後まで噛み合ふこと無く終わりたり。 旭川で一日行われし隊旗授与式での首相訓示に「政治的には賛否両論ある」とありたれども、考へおる両論は既成の固定的概念に対しての賛否にて、論議を尽くした結果の両論に非ず。もし首相に説明責任果たさんとする意思有らば、斯様な訓示はせなんだやに思わるる。億の民を納得させるに億の言葉を以って語り掛ける努力せぬは傲慢なり。況やレトリックを操り詭弁を弄すが如き答弁に終始せること、断じて許されず。兎にも角にも今回の自衛隊派遣論議、拙速にして軽薄と感じ情け無く思へたは我のみか。 自衛隊派遣国会承認を報じたる読売新聞記事に「首相が強気の姿勢で通したのは、一月の読売新聞社の世論調査で53%が自衛隊派遣を『評価』し、『評価しない』(44%)を上回るなど、派遣を容認する空気が広まってきたという判断からだ」とあり、同社説に「最近の読売新聞の世論調査では、過半数が自衛隊派遣を支持している。自衛隊による人道復興支援へ、国民の理解が深まってきている表れだ」とありたり。果たしてそうか。全国紙とは言え一社の世論調査が全国民の意思を反映しおると考へるかや。朝日、毎日、日経、更には地方紙・道新の論調、如何読む。 ☆ ☆ 札幌市幹部職員の天下り改善策、余りに手緩き策ばかりにて効果の程期待できず。為すべきは天下り全廃。課長以上の幹部職員は退職後三年間、市と関係せる総ての私企業、公的機関・組織への再就職を禁ずる事。職業選択の自由を制限するは憲法違反だ、などとほざく輩は当の幹部職員ぐらいなもの。一般職員は其れが当然と考へおろう。天下り全廃規則が気に入らねば幹部職に就かねば良いだけの話にて、幹部故に退職後も優遇されねばならぬ理由など皆無なり。上田市長は断固、全廃を敢行すべし。 ☆ ☆ ロシア軍対チェチェン武装勢力の戦い。真っ向勝負なれば帰趨は明らかなれど、ゲリラ的テロ攻撃となれば先は見えぬ。チェチェン共和国内にては制圧し得たと思へても、実の所は外へ押し遣ったるに過ぎぬか? テロの矛先、確実に首都モスクワへ集中しおるやに見ゆ。六日午前八時四十分(日本時間六日午後二時四十分)ごろ、モスクワの地下鉄で爆破テロ。 司馬遼太郎氏の講演で聞きし言葉、「ロシアと言ふ国は、一旦手中にした領土は絶対に手放さない」。ソ連崩壊せると雖も其の強権・軍の圧倒的武力は連邦離脱、独立を許さなんだ。過去に遡れば十九世紀帝政ロシア時代、カフカス地方に侵攻せるロシアに最後まで抵抗せるがチェチェン人。第二次大戦中スターリンにより中央アジアに強制移住させられたるチェチェン人。幾多の無体過酷なる仕打ち為したるロシアに対するチェチェン人の嫌悪と怨念は消えることは無かろふ。人口の70%がイスラム教徒のチェチェン人であるを考ふれば、あの時、一九九一年ドゥダエフ大統領の独立宣言を認めおれば、斯様な事態には至らずに済みしものを、と思ふ。 チェチェンの民に神の御加護無きか。一九九七年五月の和平条約にて独立の是非決定は二〇〇一年迄五年間棚上げされたるが先ず以って不運。是非を問ふ其の年九月に米同時テロが起きたも亦不運。其れ迄、戦略的見地・経済権益への思惑・対ロシア牽制策等から分離独立派に理解を示しいた米国が、俄かに方向転換してのロシア支持。結果、プーチン政権は露軍によるイスラム武装勢力の掃討作戦断行をもって独立の夢を粉砕せる構へ。強きを挫き弱きを助け「独立、是」とせる味方無くば、「是非決定」の話し合いなど為されよう筈も無し。あの和平条約は何でありしか。 二〇〇二年十月二十三日のモスクワ劇場占拠、百二十九人死亡テロにては犯人グループ五十人中十八人が女性。昨年七月五日のモスクワ・野外コンサート会場で女性二人の自爆テロ、十五人死亡。同十二月九日、三人死亡のモスクワ・ホテル前自爆テロも女性三人。今回の地下鉄爆破実行犯も亦女性の可能性有りと謂ふ。何故に女性自爆テロが横行するか。露軍に夫、恋人を殺されし女性を自爆テロに誘ふがチェチェン武装勢力の作戦らしも、自爆テロを決意する彼女等の胸中や如何。愛する者を失いての絶望か、独立を展望できぬ故の自暴自棄か、はた又……。恐らくは帝政ロシアに併合されし時に芽生え、幾世代にも亘って膨らみ来たったロシアへの恨みと憎悪が彼女等をして自爆テロへと駆り立てるおる、と我には思われてならず。其処には「神の啓示」など存在せぬ。 ★ ★ ◆12日=イラク。米軍司令官狙い攻撃、応戦し無事。予定漏洩か。 ◆11日=バグダッド南東部。イラク国軍新兵募集センターで自爆テロ、46人死亡54人負傷。 ◆10日=イラクの警察署に爆弾テロ、50人?死亡。 ◆9日=自衛隊派遣を国会承認。参院採決、来月までに第2−4陣。 ◆8日=陸自本隊第1陣サマワ着、宿営地建設を本格化。検問所の人数倍増、現地警察が警備強化。 ◆7日= ⇒イラク大量破壊兵器。米が独立調査委を設置、来年3月までに報告。 ⇒インド側カシミールで銃撃戦、18人死亡。 ⇒リビアへの核技術漏洩、マレーシア企業を捜査。 ⇒南北「五輪合同入場」、閣僚級会談で原則合意。 ⇒シュレーダー独首相、党首辞任へ。 ⇒外貨準備高、5か月連続で過去最高。円売りで膨張、7412億ドル約78兆円。大半は米国債。(財務省発表) ⇒イオン、パートも店長昇格。新人事制度、正社員との賃金格差縮小。 ⇒足利銀経営計画発表。人員削減1年前倒し、収益計画は先延ばし。 ⇒鳥インフルエンザ。「豚からウイルス検出」、ベトナムの国連機関所長が発表。 ⇒ヤコブ病の症状改善、東北大教授ら成功。英国の19歳男性、血栓予防薬を継続投与。 ⇒韓国・済州島で5万年前のヒトの足跡化石発見。 ⇒住基ネット。接続「区民選択方式」容認求め、杉並区が国を提訴へ。 ⇒占冠・赤岩トンネルで道方針。事業再評価やり直し、増額予算案も見送り。他工事も調査、吉沢副知事表明。 ⇒合否情報、道立高の41%提供。道教委調査、半数が謝礼受け取る。 (以上、読売新聞から) |
平成十六年二月五日(木曜)雪 第五十五回さっぽろ雪まつり開幕す。地下鉄の込み具合からして相当の人出あるを思ふ。見物に出かけ行くの気持ちさらさら無けれど、如何な雪像出来おるか些かは気になるところ有り。 開幕を祝ふての事でもあるまいが、夕べよりの雪、今朝にはどんと積もりて、二日夕より三日朝にかけての雪と合わせ玄関前に掻き集めたる量尋常ならず。午前中二時間、午後二時間かかりて運搬・排雪す。雪掻きに追われ愚痴ばかりなりし先月故、月入り早々の雪なれど悪態吐かず愚痴言わず、唯黙々と作業せり。 夕方より再び雪降り始む。激し。銭湯より戻りて玄関前の雪、掻き集む。掻き集めたる傍から直ぐに積もりて際限無し。現在午後十一時過ぎ、小降りになり来る模様なれば日乗認めし後、就寝前の一仕事、もふひと掻きせねばなるまい。 ☆ ☆ 高橋尚子選手は四日、アテネ五輪代表最終選考レースの名古屋国際女子マラソン(三月十四日)欠場を表明。女子マラソン出場枠は三つ。既に野口みずき選手(昨年パリ世界選手権銀メダル)が代表内定、坂本直子選手(先月二十五日の大阪国際で優勝)が出場確実にて、残る一つを手にするには名古屋出場以外無しと思ひおりしが、「駆けない方に賭けた」の見出し。 報道に拠れば、「高橋選手は、大阪国際二位で世界選手権銅メダリストでもある千葉真子選手と、名古屋国際で日本人トプの選手を加えた三人で、三枚目の五輪切符を争う形となるが、▽大阪国際の千葉選手のタイム(2時間27分38秒)が東京国際の高橋選手のタイム(2時間27分21秒)より悪かった▽名古屋国際は気象やコース条件の面で好タイムを出すのが難しい――などから、名古屋を回避しても代表選考では有利と判断した」とのことなり。 マラソン五輪代表選考は毎回もめおる故、今回ももめるやに思はる。レース成績、実績等は勿論、五輪で勝てる可能性も含め検討され選考されるが、果たして此れが最良の方法かどうか。選考は同一条件下で行われるべきにて、判り良いは一回の選考レースで上位三人を選ぶ方法。選考レースは難コースと言はれる名古屋国際とし、出場条件は過去一年以内の世界選手権、東京国際、大阪国際に出場し五位以内の者全員としてはどうじゃろか。 「駆けない方に賭けた」高橋選手なるも、名古屋国際に出場の土佐礼子、大南敬美、橋本康子、田中めぐみ各選手のうち一人が高橋選手の大会記録2時間22分19秒を上回りたれば代表は難しくなろふ。又、東京国際の高橋選手の記録は、千葉選手の大阪国際とのタイム比で17秒速けれども、世界選手権とのタイム比では2分12秒の差を付けられおる故、陸連の判断如何では千葉選手代表も充分考へられる事にて、賭けの勝算如何ばかり在るものか? ☆ ☆ 神戸市の産婦人科医が着床前診断せる事、報道あり。男女産み分けの為二例、染色体異常検査の為一例と謂ふ。言語道断。我認め難し。日本産婦人科学会は治療法の無い重い遺伝病に限り、申請による個別審査を条件に着床前診断を容認せるも、此れ迄認めたる例無し。今回は申請も為されず、遺伝病回避の為で無く男女産み分けが主理由とありては、独断専行の愚挙と謂ふの他無し。 同産婦人科のホームページでは「体外受精や顕微授精で妊娠しても染色体異常が見つかることがあり、とても悩むことになる。異常の有無を検査しておけば、悩みを未然に防げる」と説明しおるとかや。診断法の信頼性が極めて低いと言われる着床前診断なれば、正常な命を抹殺する可能性無きにしも非ず。考ふれば恐ろしき所業なり。男女産み分けは間違い無くどちらかを抹殺し選別する行為にて、命を弄ぶが如きは如何な理由にても許すまじ。 なれば、現在日常茶飯行われおる妊娠中絶は如何。妊娠中の診断にて男女を産み分けるとの話も聞き及ぶ。望み叶わず中絶せば、其も生命の選別にて着床前診断と同じ。又、我が国の母体保護法は遺伝疾患、先天異常を理由にせる中絶を認めおらぬが、経済的理由在りとして行われおるも確か。此れも亦、着床前診断と同根の選別。受精卵も胎児も「命」に変わりなきを考ふれば中絶も亦、言語道断。母体保護法の見直し、改正あって然るべきなり。 新聞の取材に対し、院長は「アメリカではごく普通にやっていることが、何で日本ではできないのか」と言ひ、日本では倫理面を議論しているが、の問いに「男女産み分けは好きじゃないが、技術的にも倫理的にも問題ない」と宣ふ。古来より培い来った我らの精神風土・文化を無視又は考慮せず、何処かでやっている事は日本でやって当然と謂ふ暴論。「脳死」を巡る議論の中にも見られた無定見なる実例論の類。此の院長、果たして倫理観を持ち合わせおるや些か疑問。好きでない事はせぬが一番と思ふが……。 ☆ ☆ イラク復興支援の陸自本隊第一陣約九十人は三日午後、政府専用機にてクウェートへ向け出発。七日にもイラク・サマワに入りて早速に陸自本隊宿営地建設に着手の予定なりしと。 イラク支援特別措置法に基づく派遣国会承認は先月三十一日、衆院にて承認されおるも参院にてはまだ。斯くも重要なる案件が事後承認を認められ、国会承認手続き終了前に兵を送り出すが許されてよきものか。拙速、余りに拙速に過ぎはせぬか。 「国会審議も最後は数の力で捩じ伏せて終わり」の与党の驕り危険極まり無し。一兵にても死す事あらば其の責任逃れ得ず。派遣承認せる議員は其の時、如何責任を取るか今から考へ置くが宜しかろう。我神仏に祈るのみ。人助けしおる兵士に御加護を……。 ☆ ☆ 陸自本隊第一陣出発を前に一日、第二師団旭川駐屯地にて隊旗授与式行わる。小泉首相、石破防衛長官出席せり。 首相訓示に曰く「日米同盟と国際協調という日本の平和と繁栄に最も大事な方針を、口だけではなく行動で示すのは皆さんだ。イラク人から評価され、歓迎される仕事を立派に果たしてくれると確信している。……。自衛隊をイラク復興支援に赴かせることに政治的には賛否両論ある。しかし、口には出さなくても、敬意と感謝の念を持って送り出そうとする国民はたくさんいる」と。 賛否両論が在るは「赴かせること」にて非ず、其の「赴かせ方」につきてなり。主要国・仏独露中が兵を送らぬ米英占領地に兵を送るは、つまらぬ日米同盟のしがらみのみにて、国際協調の意味微塵も無し。国連旗の下、PKO(国連平和維持活動)に拠るイラク復興支援派遣なれば、仏独露中も加わりて国際協調の大義名分も立ち、PKO参加の実績を踏まへて容易に派遣可能であったらふ。同盟国・米に対し国連統治を主張せなんだ己の追従・弱腰が、今回賛否両論を生んだ元凶なるを認識せぬ首相や哀れ。 戦闘地域に派兵するは憲法違反、其れを知りおる故、首相、防衛長官は「非戦闘地域」を主張し来たった。が、ゲリラ的テロ行為が頻発せる地域を「非戦闘地域」とは言い難し。二日付朝刊一面。隊旗授与式の記事下に「イラク北部 連続自爆テロ56人死亡」の記事在り。防衛長官より隊旗を受ける指揮官の写真は、既にして戦地へ赴く兵士の姿其のものと見えたは我のみか。 ★ ★ ◆5日=インド・カシミール。銃撃、爆発で23人死亡。 ◆4日=陸自本隊第一陣、クウェート到着。 ◆3日=イラク。陸自本隊第一陣90人、午後に千歳基地を出発。医療支援、来月にも。 ◆2日=サマワのイスラム導師が宗教令、「自衛隊を守れ」。「雇用の保証を」要求も。 ◆1日=イラク北部で連続自爆テロ、56人死亡。クルド2大政党狙う。 |