北極亭日乗


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平成十四年五月



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平成十四年五月三十一日(金曜)雨後晴

 早や五月も終わりの日となりぬ。齢を重ぬるにつれ日々の過ぎ去り行くは早し。窓辺に見ゆる桜も散り初めて、いとわびしく哀れをもようす。緑いよいよ深まりて万物みな躍動の季節なれど、心中寂寥として楽しまず。

 第17回サッカー・ワールドカップ(W杯)、韓国・ソウルW杯スタジアムにて開幕せり。午後八時半キックオフのセネガル対フランス戦は1−0にてセネガル勝てり。開幕戦において初出場チームが前回王者に勝つは初めてのことなり。驚きて見しも大いなる喝采惜しまず。決勝戦は来月三十日・横浜。

 昨日行われたる拓銀特別背任論告求刑公判、元頭取二人に懲役五年、借り手社長に同三年の求刑あり。

 午後一時五十五分ごろ、JR札幌駅構内にて信号ケーブルの一部が焼損、復旧の午後六時まで列車運行停止。混乱。

 追記す。
 大やけどを負い札幌医大病院にて治療中のサハリン国境警備隊長ビタリー・ガモフ氏(39)二十八日午後死す。妻ラリーサさん(38)は現在、東京・三鷹市の杏林大付属病院にて治療を続行中。



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平成十四年五月二十六日(日曜)曇

 無為に日を送りきたりて日乗の記載すら怠る。この体たらく如何ともし難し。時事の手控のみにても記し置く。

 本日、近所の小学校にて運動会あり。風向きによりて拡声器の声・音楽など時折、耳に届きぬ。完全週五日制の実施により、土曜日に運動会を行う学校多しと聞くも、我が校区にては日曜に行われたり。

 二十日午前零時(日本時間同)、今世紀初の独立国「東ティモール民主共和国」誕生。独立運動指導者シャナナ・グスマン氏、初代大統領に就任。本格的な国造りはこれから。前途多難なれどまずは船出を祝う。

 中国・瀋陽の亡命者連行事件で中国政府出国を許可。二十二日午後四時過ぎ北京空港出発、マニラ経由にて二十三日午前三時四十三分ソウル着。北朝鮮住民五人の人権は守られたるも、我が主権の侵されたるは未解決。これにて一件落着とはいかず。以下に事の経過をば記し置く。
  「亡命者連行事件の経過」(02.05.23 読売)
 ◆8日午後3時=瀋陽の日本総領事館に北朝鮮住民5人が駆け込み、中国武装警察官に連行される
 ◆8日=米国務省のバウチャー報道官が「北朝鮮市民が本国に送還され、処刑されることがあってはならない」との見解表明
 ◆9日午前=竹内外務次官が武大偉・駐日中国大使を呼ぴ抗議、北朝鮮住民の引き渡し要求。中国側はウィーン条約違反を否定
 ◆9日=孔泉・中国外務省報道局長が記者会見で、「ウィーン条約に基づき、総領事館に不法侵入した身元不明者を連行した」と述べ・日本側抗議を拒絶
 ◆9日夜=NHKがニュースで駆け込みの様子を撮影したビデオ映像を放送。5人全員が総領事館の敷地内に入ったことが判明
 ◆10日=昨年韓国に亡命した北朝鮮住民5人の親類がソウルで会見し、日本側の対応を「自尊心がない」と批判
 ◆11日夕=川口外相が武大使を呼ぴ、身柄引き渡しと陳謝、再発防止を要求
 ◆11日未明=孔泉・中国外務省報道局長が「武装警察は日本側の同意後に入館」とする独自調査結果を発表。日本外務省は否定
 ◆11日午前=小野正昭外務省領事移住部長らが調査のため藩陽入り
 ◆13日午後=川口外相が「日本側の同意はなかった」との調査結果を発表
 ◆13日夜=在京中国大使館の黄星原・参事官が会見し、外務省調査結果に対し、連行時の状況などを具体的に挙げて反論
 ◆15日午前=竹内次宮が武大使と会談、人道的観点から5人の第三国出国で一致
 ◆17日=民主党調査団が現地調査結果を発表。小泉首相は「自虐的」と批判
 ◆19日午後=杉浦外務副大臣が東ティモールで唐中国外相と接触、唐外相は「人道的対処」を確認
 ◆20日午前=福田官房長官が記者会見で5人の早期出国を最優先すると表明
 ◆21日深夜=中国が日本政府に5人をマニラ経由で韓国に出国させると事前通告

 二十二日未明、大やけどのサハリン国境警備隊長夫妻、札幌の二病院に搬送さる。カニ、ウニの密漁摘発を強化したため、ロシア・マフィアに狙われたらし。自宅に火炎瓶を投げ入れた由。

 二十四日午前、札幌市内及びオホーツク海沿岸の紋別市などにて、局地的に激しき雷、雹に見舞われたり。札幌にては落雷相次ぎ、中央区の伏見小学校にては一階給食調理室をば直撃して天井が崩れ落つ。停電一万六千世帯に及びたり。



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平成十四年五月十九日(日曜)曇一時小雨

 中国・瀋陽の亡命者連行事件膠着気味なれど、人道的観点から人権最優先、第三国への出国で決着の方向。それにしても我が外務省の対応ぶり情け無し。国を守るの気概いずくにありや。

 十一日、国内四頭目のBSE感染牛、釧路支庁音別町で見つかりたり。前三頭と同じく1996年春の生まれとて、感染経路解明につながるやも知れず。されど道内農家の被りたる打撃、大なり。

 十二日、コンサドーレ今季道内初勝利。室蘭市入江運動公園陸上競技場にて行われしナビスコ杯予選、対柏レイソル戦。MF和波智広のゴールせし1点を守り切り、道内初勝利なる。ナビスコ杯は既に予選敗退が決まりおるも、この勝利うれし。七月十三日再開のJリーグに向け奮起せよ。

 十六日、小さん師匠死す。昭和の名人に黙祷を捧げるのみ。

 十七日午前十時三十分、円山動物園におりし世界最長寿のオオワシ「バーサン」大往生を遂ぐ。推定年齢五十二歳、人間であれば百二十歳超なり。半世紀、人の様を見て来たりて、最期は何を思いおりしか。こにもまた黙祷を捧げるのみ。



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平成十四年五月九日(木曜)晴

 昨日午後三時ごろ、中国・瀋陽の日本総領事館に亡命を求めたる北朝鮮人五人を中国の武装警官が拘束、連行せり。しかも、日本公館内にてのことなり。在外公館の不可侵を無視したる蛮行? あるいはまた警官の軽挙妄動か。普通にては考えられぬことなり。
 事の一部始終はテレビにて報道されたり。何故、カメラがそこに在ったのか不思議なるも、ただ傍観するのみの公館職員の姿を映し出したるは確かなり。外務省改革が叫ばれおる折、海外で働く外務職員の能力・資質につきても調査の必要ありと認む。今回の公館職員の対応は甚だ悪し。この問題、深刻化の気配…?

 中国機墜落で中国北方航空は「百十二人全員が死亡」と発表せり。悲しみにくれるは幾家族か。航空機事故の都度、文明の裏にある残酷・無慈悲の暗い穴を思う。目撃情報によると、空中で機体炎上の可能性ありと言う。やはり人災。

 追記す。
 【大連(中国遼寧省)8日=古谷浩一】在北京の日本大使館が明らかにしたところによると、8日午後2時ごろ、遼寧省藩陽の日本総領事館に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)住民とみられる男女5人が入ろうとし、中国の武装警察当局に拘束された。うち男性2人は総領事館の敷地内で拘束された。日本側は、高橋邦夫・駐中国公使が同日、中国側が許可なしで総領事館内に入ったことに対し、中国外務省に抗議するとともに、5人の身柄の引き渡しを求めた。(02.5.9付 朝日新聞)



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平成十四年五月七日(火曜)晴

 午後十時二十四分(日本時間)中国遼寧省の大連市近郊の海上に中国北方航空の旅客機墜落、乗員・乗客百十二人の生存絶望視さる。日本人乗客は三人とかや。

 スー・チー女史解放さる。ミャンマーの軍事政権は自宅軟禁中のアウン・サン・スー・チー女史を解放、政治活動の再開を認めらる。「新しい夜明けが来た。この夜明けがやがて完全な朝になることを望みます」と語りき。過酷な試練に耐えて民主化への信念を貫いた五十六歳、痩身の女史に敬意を表したし。

 太りたる人、交通事故に遭いし場合の死亡率高きこと米・シアトルの研究機関が発表せり。100`以上の人は60`以下の人の2.5倍高くなるらし。肥満に良きところなしか。

 都営住宅にて独り暮らしの六十五歳男性、ロウソクの火が元にて焼死せり。仕事なく、電気を切られおりしという。斯様な生活を強いる国に民主政治ありや。情け無し。涙こぼるる。



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平成十四年五月三日(金曜)晴

  ゴールデンウイーク、人それぞれに楽しみおるは良し。今日これだけは記し置く。朝日新聞阪神支局襲撃事件の公訴時効成立の件なり。

  87年5月3日、私の手帳にはこの事件について一行の記述もなし。ただ「雨模様」とあるのみ。大方、酒を喰らいて遊びいたるに違いなし。
 同年1月、右翼と思われる過激派団体による朝日新聞東京本社への銃撃事件があったことは記しあるを見れば、「またか」の思いありて一考だにせなんだか。惰性に流さるる日々を送りいたるが故の結果なり。慙愧に堪えず。

  87年5月3日、朝日新聞阪神支局(兵庫県西筥宮市)に目出し帽を被った男が侵入して散弾銃を発砲、小尻知博記者(当時29歳)を殺害し、犬飼兵衛記者(57)に重傷を負わせたる事件は3日午前0時、公訴時効成立となれり。
  「赤報隊」を名乗る犯人は、朝日新聞の論調が気に入らぬとて批判をば繰り返し、言論の自由、戦後民主主義を封殺するが如き犯行声明を出しつつ、犯行に及びぬ。犯行後の6日、「赤報社」の名称で共同通信社などに「すべての朝日社員に死刑をいいわたす」などとする声明文を寄せ来たると言う。
 怒りあるのみ。言論の自由あらば論調は幾通りありても当然のことなり。少なきよりは多きが健全。彼らには、その事の理が判らぬらし。短絡思考の弊害ここに極まれりか。

  事件から15年、長い。捜査当局は十分に手を尽くしたか? 尽くしたと信じたい。しかし、不祥事続きの当局に何ができたか、の思いも拭い難し。
  一連の朝日新聞襲撃事件(警察庁指定116号)のうち、公訴時効に至らぬは静岡支局爆破未遂事件(88年3月)だけとなりぬ。兵庫県警捜査本部は、来年3月の静岡支局事件の時効まで捜査を継続することを強調す。

 ●116号事件とは=朝日新聞東京本社銃撃(87年1月)。阪神支局襲撃(同5月)、名古屋本社寮襲撃(同9月)、静岡支局爆破未遂(88年3月)、リクルート元会長宅銃撃(同8月)を指す



 

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平成十四年五月一日(水曜)晴

 連休の谷間にて、それぞれに一息つきしか。新聞のUSO放送に「息抜きに出社した ―サラリーマン」とあり。
 人込みは苦手なれば何処へも出掛けず、ごろり横になりて書見などなせば何時しかまどろみて、夕刻を迎う。サンダル突っ掛け銭湯へ急げば、既に常連の面々の姿なく閑散として客まばらなり。こも連休の影響なりしや。

 鈴木宗男議員の公設第一秘書ら、ムネオハウス建設工事を巡り偽計業務妨害容疑で逮捕さる。鈴木氏の辞職は不可避と思わるるも、潔く身を処するとは考え難し。己自身の逮捕の時まで延々醜態を晒し続くるか? もはや鈴木氏の政治生命は断たれたり。これからの選挙にて勝利すること絶対になかりせば、早々に謹慎蟄居するが肝要なり。

 先にマスコミを賑わしたる野村克也・前阪神タイガース監督の妻沙知代氏、脱税の罪で懲役二年・執行猶予四年の有罪判決。老後の蓄えは誰しも欲しきもの。さりながら、脱税してまで貯め込むは、ちと強欲にて赦し難し。我らにては貯めえぬ多額の金を持ちながら、なお脱税とは…。欲は人の性なれども、守銭奴と呼ばれるはもはや人でなく、餓鬼なり。



              
                  
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