北極亭日乗


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平成十七年十月



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平成十七年十月二十八日(金曜)曇

 先日内科受診してより妻の「診て貰って下さひ」と言ふが日課の如く成りて、厄介御免蒙りたき我は其の都度「瀕死の重病人にあらねば急ぐ事も無からふ。街に出る用出来たれば序に……」と言を左右にはぐらかし来たれど、そろそろ潮時かとも思ひ、昨日のサイクにても不調感じなんだ故、万が一にも入院・通院治療なんぞと面倒な事言ふまひから、此の後煩しきを引き摺り行くよりは増しとも思ひ、紹介状持ちて出掛けたり。

 病院に着きたが十時半頃か。受付・会計前ロビーに座すは二十数人程にて、「大病院にしては随分と少なひが……」と訝りつ受付へ行きて来院の趣旨を述べ内科医よりの紹介状渡したれば、受付嬢「彼方に受付用紙が御座ひますから、記入なさって、此方の方へ入れてお待ち下さひ」。指示に従ひ、用紙に必要事項記入為して指定の書類箱に入れ、空きを見つけて椅子に座せり。見回せば座り居るは少なけれどロビー、通路行き交ふ人多し。

 約五、六分置きに名前呼ばれ席立ちて、或は会計終へて帰り、或は書類受け取り他所へ移動せば、受診済みて会計依頼せる者来たりて座し、次に又新たなる受診者来たりて受付箱に用紙入れ、座りおる人数一向に減らず、「どっと押し寄せる訳も無く、入れ代はり立ち代はり間断無く来る故、然程込み合はぬか……と言ふて歩きおるは結構な数に見受けらるれば……」等と考へつ待つ事十数分、我が名呼ばれ「意外に早し」と立ち上がりたり。

 受付へ赴きたれば、受付嬢「彼方の廊下の奥に診察待合室が在りますから、此れを受付にお出し下さひ」と云ひて数枚の用紙挟み入れし透明フォルダー渡し呉れたり。又々受け付けとは面倒な事よなぁ、と廊下の奥へ進み行けば何と!! 此処に居る者皆診察待ちなれば、我が番来るは夕暮れぞ――と思ふ外無き待合室の人の数。何故に総合病院・大病院には日々斯くの如く病人集まり来るかや――とぼやきても詮無き事と諦め、受付へ。

 フォルダー受付に渡し、「名前を呼ばれる迄、彼方でお待ち下さひ」と云はれたに従ひ、隅に空き見つけ腰下ろして周囲眺め数へ遣れば、待つ人ざっと七、八十人か。やれやれとんだ事よ、此れなれば半日掛かりに成るやも知れぬと溜息つきたれば、なにや一時に疲れ出で来るやふにて今一つ溜息つきしなり。名前呼ばれるを聴きおれば、此の奥に更に「中待合室」なるもの在りて、其処にて再度待たねばならぬ者もおるらしく、我気滅入り始めり。

 斯く成りては居眠するの外無しかと腕組み眼瞑りても即座に船漕げる訳は無く、朝一番に受け付け済ませねば半日掛かりと知り乍、十時回りて病院に辿り着く暢気ぶりにては斯く成るは当然の事と反省せり。愚痴言はず身から出た錆びと諦め、神妙に我が番来るを待つが常道。やれ疲れたの気滅入るのと御託並べるは笑止。苦しゅふて苦しゅふて耐へ難きを耐へ待ちおる者も居るを考へれば、ちと診て呉れろと暢気に出掛け来し我が阿呆と思ひたり。

 然ふ斯ふせる内、我が迂闊さに突然気付きて苦笑す。何たる馬鹿者ぞ。総合病院なれば待つ人夫々に受診科違ふて、我が循環器科受診するは此処に居る中の幾人かに過ぎぬなれば、さふさふ待たずに名前呼ばれるやも知れぬに、人数の多さ眼にして単純に我が順番勝手に推察したが愚か。然も其の後、愚痴めいたる事共思ひて心安らかならざるは正に小人。事ある毎に「年齢相応に気長に構へましょ」と妻に言はれおりし事反芻せり。

 三十分も待ちしか、我が名呼ばれ「五番診察室へお入り下さひ」の放送。何ぼも待たぬに呼ばれ、中待合室経由せず直接診療受けられるに、年甲斐も無く彼が悪し是が悪しと毒突きし我が小人ぶり反省しつ席を立ち診察室へ向かひたり。待合室出でて廊下十メートル隔てし所に中待合室在りて、此処にも三十人程座り居りたり。中待合挟み右手に診察室、左手に処置室在りて、看護師数人行き来して受診者に指示与へおる様に見へし。

 我が目指す五番診察室は何処と見遣れば、眉目麗しき妙齢の看護師ドアの前に立ちて我が名呼びおりたり。急ぎ行きて「我なり」と告げたれば、「だふぞ、お入り下さひ」とにこやかに応対為し呉れたは嬉しき限り。「失礼します」と中に入れば、年の頃三十五、六か、頑健屈強にて病気の経験皆無と思はせる男性医師机を前に座りて、我持参せし紹介状読みおりたり。「お早ふ御座ひます」と挨拶したれば、一瞥為して「はひ、お座り下さいひ」。

 暫し間在りて、回転椅子くるり回して我が方に向き直り「紹介状拝見しました。彼方の先生の所にては心電図取りおらぬやふ故、先ず心電図室へ行って下さひ。診察は其の後で」と言ひて、紙切れ一枚渡し呉れたり。看護師ドア開けて心電図室への通路順細かに教へ呉れ、「済みましたら、中待合室にてお待ち下さひ」。何たる事か、循環器科の診察室なれば心電図の機器備へ置くが当たり前なるに別室、然も二階とは――と思ひつ二階へ向かへり。

 辿り着きし心電図室、四畳半程の室内に置かれ在るはベッド一台、心電図機器、事務机と椅子のみなれど雑然として清潔感皆無。此処にて心電図取りたれば、健康なる者も脈に異常出るやに思はれり。居りたは中年の女性看護師一人のみ。医師より渡されし検査依頼用紙差し出したれば、「胸と足首が出るやふにして、仰向けに寝て下さひ」。指示に従ひてベッドに横になり、胸・足首に電極装着為して機器の小さき唸り音聴くこと数分、検査終ふ。

 病院なれば今少し整理整頓、清潔感醸し出さねば検査受ける患者の気が滅入るは必定。彼の心電図室、如何にかせねば二度と入りたふは無ひ気分。室内乱雑なれば、「検査も亦粗雑にして不正確、病の兆候見逃して大事に至らしめる危険性無きにしも非ず」と患者に要らぬ心配させぬやも知れぬに、病院管理者及び現場で働きおる医師・看護師は何を考へおるか。惰性にて働きおるとせば――なんぞと考へつ、中待合室にて待つ事十数分。

 先の妙齢なる看護師に名呼ばれ五番診察室へ入れば、医師コンパス持ちて心電図眺め、ふむふむと頷き一人納得しおる様子にて居れり。我より声発するを躊躇し椅子に座せば、医師向き直りて「問題無し」と一言、心電図指し示し「健康人にも見られるものにて、此の乱れは心配無用。一拍一拍全て乱れおれば病なれど、見ての通り他は波形一定にして安定しおる故、病気に非ず。治療も不要。まあ、年齢相応の脈の乱れと思はれよ」と申せり。

 「普段の生活にて支障来たしおるや?」と訊く故、我「別に無し。脈乱れるは寝起き、夜床に就きし折等安静にしおる時にて、自転車漕ぎてもサウナに入りても乱れぬなり」と答へたれば、ふむふむと頷きて「なれば大丈夫。動きおりて脈速き時、不規則な乱れ続くやふなれば病気。其の時は速やかに受診されるが良きなり」と言ひてカルテに何やら書き込み、「診察の結果は彼方の先生に報告致し置く。今日は此れにて宜し」と申して終はりたり。

 労煩はせし医師に礼申し、「会計にお出し下さひ」と看護師渡し呉れた透明フォルダー持ちて五番診察室を辞せり。中待合尚も込み合ひ、外待合も未だ変はらぬ人数有るを横目に、此処に待ちおる幾人が「病に非ず、治療の必要無し」と言はれ、安堵して家路に就き得るか。多くは病名告げられ、或る者は入院余儀無くされるも有らふ。不謹慎にも我は幾分足取り軽く会計へ急ぎ行きて受付箱にフォルダー置き入れ、空席見つけ、座して一息つけり。

 病院出でれば既に一時近く。大病院受診為して二時間強にて終了とは僥倖に恵まれしか、有り難や有り難し――と思ふも、診断結果の為せる業ならん。若し投薬なんぞ受けたれば、「二時間も拘束しおって!」と毒突きたに相違無し。妻に責っ突かれ「大事無ひ」と言ひつも胸中に不安湧き来たは偽り無けれど、「長年の不養生此処に極まりたるなれば、病に倒れるも已む無し」と考へたれば不思議と心落ち着きし事思ひ出しつ、家路辿りたり。

 帰り着きて卓袱台の前に腰下ろせば何やら疲れ出で来て、間置かずして横臥せり。妻、茶持ち来たりて「だふでしたか?」と訊く故、診断結果話し遣りたれば「良かった事。一安心……」の言。「若医者が小癪にも、年齢相応の脈の乱れと言ひおった」と我言ひたれば、「普段から『俺は年寄りだ』って云ってる事ですし、何でも年齢相応が良ひんですよ」と言ひて台所へ立ちたり。昼餉に饂飩食したる後、銭湯の時間迄猫共の脇にて眠りたり。

 彼の夜、何故に脈の乱れが気に成りしか。床に入りし時に度々起こりおりて、其れ迄気にも留めなんだに、何故彼の夜に限りて「何時もと違ふ」と気に成りしか。加へて翌朝の突然の連想は、はて?何処より湧き出でしか……。其れこそ年齢相応に妙な錯覚に陥りて勝手にあたふた、心筋梗塞のドグマに嵌りしか。兎にも角にも、彼の夜無く彼の朝無ければ行く事無かりし循環器科。少々長く成りたれど、受診の模様記し終へて今日の日乗を閉ず。

                    ☆       ☆

 二十七日。晴れにて暖かなればと、妻の言ふ侭に残し置きしミニトマト、ササゲの後始末為せり。黄橙に色付きおりたはやや赤み増したる程度、青きは若干黄色み帯びたる状態にて、此の時期完熟期待するは所詮無理。妻に色合ひ報告、「未だ残し置くかや」と問はば、全て収穫せよと言ふに依り大中小悉くもぎ取りて枯株引き抜き始末せり。収穫せし実、「やや赤みたはサラダにて食せるも青黄色きは無理故、酢漬けにせん」と言ひおれども、果たして旨きや? 頗る疑問なれど言ふに任かせたり。

 種取らんと二株に残せしササゲ四莢、枯れ具合も良からふとてもぎ取り、蔓這はせし竹の棒引き抜きて蔓外し、枯茎・根株・落ちおる枯葉始末す。然る後、スコップにて土壌掘り起こし合成肥料施し遣りて鋤き返し来季に備ふ。毛虫付きて葉食ひ荒らし一時は農薬散布も考へたれど、無農薬で育て遣らねば自家栽培の意味無からふと放り置ひたに良く生りて食卓賑はせ呉れたを我感謝せり。家に入りて莢開き見るに種に成りさふなは数粒、「此れっぽっちじゃ、如何にもならんねェ」と妻と笑ひたり。

            ◇……………◇          ◇……………◇          ◇……………◇

 天気上々なれば「体育の日」の遣り直し、併せて精密検査前の我が心臓の調子如何なものか、一っ走りせんとて午後よりサイクへ出ず。目指すは北広、帰路江別回りと決め一時五分基点出発す。北広着二時五分、発二時十分。心臓に異常発生無く快調に走りしが、江別に入りてよりサドル上の臀部些か痛み出し速度落としたれば我が家着五時二十分となれり。

 ロード諸所枯葉に覆はれ、周囲の木々紅葉黄葉せるも在り、葉落ち尽くし裸に成りおるも在りて、緑生ひ茂る夏とは又一味違ふ風情醸して見飽きず、眺めつ走りたり。北広の畑地既に収穫終へて土色の所多く、疎らに緑成すは大根か将又秋蒔き小麦か。産直の幟立てし道路沿ひの野菜市場には馬鈴薯、玉葱、南瓜、大根、白菜、長葱、白蕪、赤蕪等々山成し並びて、買ひ求める客参集して賑はひおるを見て熟々冬近きを実感せり。

 今年の乗り納めと決めて出掛けた訳でも無けれど、今日の様なサイク日和、後幾日も無きを考ふれば遠出は此れにて仕舞ひやも知れず、今日が今年の乗り納めの日と成るやも――。さふ考ふれば些か寂しき思ひ無きにしも非ずなれば、雨雪降らぬ日は晴曇問はず後一、二度出掛けたし。戻りて湯に浸かり、晩酌終へし後の此の心地良き疲れ、老人性不眠症の我には中々の妙薬にて、今宵も久々に熟睡出来さふな予感して寝るが愉しみなり。

                    ☆       ☆

 二十六日。駒大苫小牧高、又一つ冠戴きたり。第六十回国民体育大会(晴れの国おかやま国体)秋季大会高校野球硬式決勝にて遊学館(石川)を9−1で破り優勝せり。三年生最後の公式戦にて優勝出来たを選手諸君と共に我も喜びたし。駒苫の実力折り紙付きにて、現在只今、此のチームに勝ち得るチームは国内に存しまひ。更に申せば三年生抜けし後も連戦連破し、「常勝駒苫」は高校球史の伝説とならふ。先ずは明治神宮野球大会優勝――

                    ☆       ☆

 二十五日。朝方雨降りた所為か昨朝より幾分気温低めかと、目覚めて思ひおりたれば、道内各地に初雪の報有りたり。稚内、岩見沢、留萌、旭川、紋別、倶知安にて何れも昨年より二日遅き初雪なりと。札幌市内にては降雪無かりしも、南区・定山渓及び中山峠近くにては草葉薄っすらと白く成りたる由、銭湯にて耳にせり。雪便り平地・街中で眼にするも間近らし。

 昨冬、我が棲家に雪積もりしは何時ならんと日乗繰りみれば、「十月二十七日(水)雪のち曇、最高気温5.1度。昨夜十一時頃よりちらつき始めし雪、今朝九時頃には七、八センチ程も積もりて尚少々ぱらつきて風冷たし」の記述有りたり。昨年に比して温き十月なれば、我が棲家への雪便り明日明後日と言ふ事は有るまひが、菜園の始末も終はりおらず庭木の囲ひも未だなれば、心急かせる初雪の報にてはあり。

                    ★       ★

 二十九日、仙台スタジアム。コンサドーレ対ベガルタ仙台戦は、2−2でコンサ今季十度目の引き分け。通算成績15勝13敗10分け。勝ち点55、順位一つ上げ五位。
 次節十一月六日、対水戸ホーリーホック戦(札幌ドーム)。

 二度のリード守り切れなんだは何とも惜しけれど、二十二本のシュート打ち込まれ、終盤池内退場にて数的劣勢に陥るも同点に持ち込みしは天晴れなり。遣れば出来るのだよ、コンサ戦士諸君!! 攻める、守る共に見応への有るプロの戦ひぶりでありき。J1入れ替へ戦進出賭けての三位争奪戦、仙台、甲府、山形と四つ巴の混戦抜け出さんとせば負けは許されず、今節引き分けて得たる勝ち点1大ひに価値有るなり。然れば残る六試合一戦たりとも負けられず、負けたる時点にて入れ替へ戦参戦の道断たれるを忘れず、今節見せし如くプロの闘魂剥き出して戦ひ抜くの外無し。此処に来て悔ひ残す素人試合はすなや。



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平成十七年十月二十日(木曜)晴

 現役時代の定期健診にて不整脈見つかりてより三十年余も付き合ひおる故持病と謂へば持病やも知れぬが、此れ迄の生活に支障来たしたる事は無く、況してや医者に通ふて治療受けし事も無ければ、我は持病と思ひおらぬなり。定期健診の折、医者申すに「二十年も酒呑みおれば間違ひ無く不整脈は出ます。まあ、不整脈は酒呑みの宿命でしょう。今のところは治療の必要有りません。普段生活しておって、胸苦しかったり頻脈が出るやふなれば専門医に診て貰ふやふに」。此の御言葉を守り来た訳ではあるが……。

 昨夜、床に入りて大の字に手足伸ばし「やれやれ、今日も一日無事に終了」と大欠伸、胸上に手組みて置き、眼静かに閉ずれば「極楽、極楽」と成る筈であったに、心悸亢進して不整脈の頻度何時にも増して多き状態。「此れは如何に? 酒呑み過ぎてもおらず、就寝前の放尿為して静かに床に就きしが、此れは如何なる事か」と考へたとて判る訳も無く、我が不整脈も治療の段階に至りしかと脈取れば、ドッキンドッキンドッドッキンの繰り返しにて細動の兆候見られず胸苦しさも無き故、一つ深呼吸為して放り置きたれば間もなく眠りたり。

 今朝目覚めれば我が身体に何処と云ふて異常認められず、昨夜の動悸夢幻の如きなり。酒の利き少々良過ぎたのやも知れぬ等と思ひつ顔洗ひ、妻に気付けの茶所望して今日の天気の事共語りつ啜りおりたれば、茶の苦味より連想せしか「良薬口に苦し」の俚諺思ひ浮かび、続ひて薬師如来像脳裏に現れしなり。何で又、薬師様まで御出座しなさるかやと茶一口飲み込めば不意に、「御告げ」の一言我が口突きて出でしなり。妻訝りて我が顔見詰め、「御告げって、何の話?」。我、己の連想の奇態なるに動顛して声無かりしなり。

 暫し間在りて、「実は」と昨夜の心悸亢進の話為し、何気無き連想より「御告げ」に至りし事聞かせ遣りたれば、妻「其れは間違ひなく仏様の御告げ。大事に成らぬ前に診て貰へと云ふ、仏様の御告げですよ」と真顔なり。「不整脈有りと診断されてより三十余年、難儀無ければ治療の必要無しと生き来たれど、此処に至りて治療必要に成りおるのやも知れぬなあ」と我しみじみ言ふを聞きて、「三十年治療せずに済む病気なんて在りませんよ、絶対に。早速今日にでも専門の病院で確り診て貰って下さひ」と妻。

 「大した事は無かろふさ」と言ふ我と、「然し……」「なれど……」「如何して……」「だから……」と言ふ妻と堂々巡りの問答続きて、今日は取り敢へず近所の内科医受診する事に決したり。不整脈と謂ふたとて常時続きおる訳で無く、日に何度か時折思ひ出したやふに発生せる程度。然も体動かしおる時、湯に浸かりサウナにて汗流しおる時は出現せず、寧ろ安静にしおる時に出で来る症状なれば我には何の苦も無く、脈取らねば不整脈起きおることも感知できぬ状況。詰まらぬ事言ふたばかりに……、治療なんぞ……と思ひつ午前九時、内科医院へ出掛く。

 医院待合室。我と同年輩の男女十数人、或は神妙なる表情にて一人ぽつねんと座し、或は二人三人塊りて話しおる者在りて毎度変はらぬ待ち合ひ風景。一人帰れば一人来院し、診察待つ人一向に減らぬ盛況ぶり?に「何故、世に斯くも病人溢れ居るか」と其の訳考へみたれど答容易に見つからず、寿命延びおる分だけ抱へる病の分量も多く成りおるのやも知れぬと考へたれど、病抱へて何の為の長寿かとも思はれてならず、まさか病院繁盛させる為長生きして我が身に病つくり出しおる訳は無からふ故、如何したものか……。やふやふ名前呼ばれ、診察室へ。

 挨拶為し、医師の前の椅子に座す。「どんな具合ですか?」と問ふ故、此れ迄の不整脈の件及び昨夜の心悸亢進の件話したり。医師カルテ見つつ「去年検診の折に不整脈出てましたが、此れ迄異常は無かったのですね? はひ、ちょっと胸を開けて下さひ」。シャツのボタン外し下着捲し上げたれば、医師我が心の蔵辺りに聴診器宛がひて心音聴きし後「今は出てませんねェ」と言ふ故、「夜床に就ひた時とか朝起きた時とかに多く出るやふにて、常時に非ず」と言ふたれば、「昨晩の脈の打ち方、リズムはどんな具合でした?」と尋ねたり。

 「時々と言ふか、何拍か脈打ちし後、一拍弱く打つやふなり。ドッキンドッキンドッドッキンてな具合にて……」と答へたれば、「面白ひ表現だ。ドッドッキンかぁ。ドッだけでキンが無ひかぁ。やあやあ実に判り易ひ」と医師笑ひたり。「去年も同じ具合だったかなぁ……? 大体同じ間隔でドッが入るんですね」と医師、「さふです」と我。「一度、詳しく診て貰った方が好ひですね。心電図は向こふで採って貰ひましゃふ」と医師。

 カルテに何やら書き込みし後、我の方向きて「去年の検診時にも言ったと思ひますが……念の為、専門医を受診して下さひ。治療の必要が無ひ不整脈かも知れませんが、心房よりの刺激が心室へ伝はる迄に時間がかかったり、刺激が伝はらなかったりする心室ブロックと謂ふ症状で治療が必要かも知れません。循環器科の有る病院に紹介状を書きますから、精密検査を受けてみて下さひ」にて診察終了せり。

 然程心配する症状でも無きやふなれど、「紹介状書く故、精密検査受けよ」と言はるれば心中些か穏やならず、一つ重荷背負ひたる思ひにて戻りたり。帰り着きたれば妻早速に「だふでした?」と訊く故、「病気じゃないが、精密検査受けよと言ふて循環器科病院の紹介状書ひて遣したが、行く必要有るまひさ」と言ふて着替へ始めたれば、寄り来たりて「紹介状まで書ひて頂ひて行かぬは無ひでしゃふ。御医者の指示に従はなんだら診て貰った甲斐が有りませぬ」と気色ばみて言ふに圧されて我、「行きますよ」と言ふてしもふたり。

 茶入った故座れと急き立てられて卓袱台の前に座すれば、妻又々「で、だふでしたの?」。斯く成れば一部始終話し聞かせる以外手無しと、面倒乍診察の模様再現して聞かせ遣り、「御前さんの申す通り精密検査受けます故、御安心下されや」と言ふて話すを終へり。昼食の後、病院疲れ癒やさんとごろ寝為し、夕刻銭湯に赴きて汗流せば漸くに人心地。昨夜より続きし不整脈騒動、「何で斯く成りしか」と考へるだに馬鹿らしき事なれど、斯く成りたれば流れに乗り行くの外無く、面倒なれど循環器科受診決したるを記し、日乗を閉ず。今宵はなんや疲れおる故、心悸亢進も起こるまひ……。

                    ★       ★

 二十二日、函館市千代台公園陸上競技場。コンサドーレ対モンテディオ山形戦は、3−1でコンサ勝てり。通算成績15勝13敗9分け。勝ち点3増やし54とするも、順位六位は変わらず。
 次節二十九日、対ベガルタ仙台戦(仙台スタジアム)。

 七連敗中の対山形戦、此処で勝たねば我等に申し訳が立たぬと奮ひ立ちしか、コンサ戦士獅子奮迅の戦ぶりにて勝利せり。些か溜飲下がる思ひ。対山形戦勝利は二〇〇三年十一月十六日、札幌ドームでの本拠地最終戦にて4−1で勝ちてより八試合ぶりなり。引き分け二試合後の勝ち点3、其の価値重し。さて首位京都、3−1にて水戸を下し三シーズンぶりのJ1昇格を決め、シャンパン掛け為したる由。コンサ戦士に其の日在るを信じたし。



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平成十七年十月十六日(日曜)晴

 朝八時、洗面為して朝食。昨夜少々呑み過ぎにて食欲無く、飲むヨーグルト一合のみ。窓より空模様眺め遣れば、晴れ行く気配。なれば菜園の後始末でもと思ひて、女房殿に「そろそろ裏の片付けせねばなるまひ」と訊けば、「直赤くなりさふなミニトマト残りおれば、今少し置きても……」と言ふ。此の時期なれば最早熟す事もあるまひに、未練よなふ――と思ひつ嘆息一つ。

 「寒さ募りてよりの作業は億劫故、なれば其れ等は残し、収穫終はりしものは引き抜きて始末せん。思ひ立ったが吉日ぞ」と身支度始むれば、「ササゲの大きなは種取る故、其の侭に」との注文。此のところ女房任せにて裏見ておらぬが、彼も残せ是も残せと云ふて、収穫時期疾ふに過ぎおれば然程残りおるまひにと思ひつ塵袋、シャベル手に裏へ行きたり。

 暫く草毟りせなんだ故、プランター周りに雑草我が物顔に繁茂しおりて我が菜園見る影も無し。ミニトマトや如何にと見遣れば、葉既に或るは緑の侭萎へ縮み或るは枯れ初めて黄色褐色に変じおるも有りて終末迎へし姿なれど、女房殿の言ふ如く黄橙色の実幾つか。

 「此の時期に成りても未だ熟さんとするか。健気よのふ」と懸命の生への営み愛でつ他のプランター見るに、大小の青き実十五、六個付けおりたり。己が茎葉枯らしても尚、実生かさんとするか。程無く命尽きると知りながら尚、実育まんとせるか。強固なる意志持て死と対峙しおるやに見へ、「此れが、死ぬ迄生きると謂ふ事か」と不図思ふたが……。

 今季一株初植へせし胡瓜、幾つも花咲き実付けしも殆どが大きく成らず小さき内に萎びて出来悪しく、食したは二本のみ。よく陽当たらぬ場所に植へしが不作の第一の原因なるも栽培法に難有るは確かなれば、来季迄に育て方学ばねば……と考へつ、「もちっと陽当たる所へ植へ遣る故、来年は存分に大きく育ち呉れろ。いざさらば」と茎葉共に枯れ初めし株抜き遣りぬ。

 予想以上に莢付け、我が食卓賑はせしササゲの状況や如何と見遣れば、なるほど種に成りさふな大なる莢四つばかし枯れ蔓にぶら下がりて在りたり。莢未だ枯れ切らず幾分水分残しおるやふなれば、女房殿の注文通り莢付けし二株其の侭となし、「随分と食べさせてもろた。ありがとよ」と残る八株引き抜きて始末す。四株植へし南蛮、色合ひ大小考慮せず、成りおるを悉くもぎ取りて収穫終了宣したり。我等老夫婦に旨き野菜与へ呉れしを唯々感謝。

 引き抜きし茎葉掻き集めて塵袋に圧し入れ片付け、固まりおるプランターの土シャベルにて鋤き返し、合成肥料施し遣りて作業終へしなり。家に入りて、「御希望通り豆、トマト残し置きたり」と女房殿に申せば、「後三日もせば赤く熟しますよ。きっと」と茶差し出したるを受け取り、ひと啜りして「中々、さふも行くまひさ。御日さんも低く成りて陽当たり悪しく、此れからは気温も然程上がらぬし……」と顔見遣れば、暢気に笑みおりたり。

                    ☆       ☆

 十日。昼前より雨降りおりたれど一時前には上がりて曇天、折角の「体育の日」家に燻り居るも面白からずとて、行く先も決めず二時頃サイクに出ず。「さて今日は何処へ走り行かん」と町内抜け、取り敢へず国道東へ向け十五分程走り行けば雨ぱらつき始む。空模様眺むれば灰色の中に所々薄っすら明るき部分在りて、走り雨に終はる気配。本降りには成るまひと尚走ること三十分、雨脚徐々に強く成り来たるに因り国道沿ひビル入口庇にて雨宿りせり。

 走り雨と思ひたに暫し降り止まず、時に小降り時に強き雨脚繰り返す事数度。此の分なれば晴れる事は無からふ故、小降りに成るを待ちて一気に漕ぎ帰るに如くは無しと天仰ぎて十五分程も待ちしか、雨粒小さく疎らに成りたを見計らひ踵廻らせり。車道側帯に出づれば泥水浴びねばならぬ故歩道走行せば、傘差せる通行人避けつ走りて速度上がらず、頻りに信号に引っ掛かり進まず。五十分程走りて直我が家と言ふ頃、奇態に空明るみ雨上がりたり。

 「何たる事ぞ!」と熱り立ちても雨空に苦情抗議為す訳にも行かず、我に付き無かりしだけの話と諦め、シャッポ、ジャンパー、ズボン、ズック靴濡らし、ビル庇より一時間余りにて我が家に辿り着けり。洗面場にて着衣下着替へ、烏龍茶飲みて一服せば漸くに人心地つきし思ひ。「全く以って、とんだ体育の日に成ってしもふた」と言へば、女房殿「雨上がって晴れると思ったのにねぇ。女心と秋の空。そふ、御風呂屋でも探して入ればよかったのに」と真顔にて申すを聞き、「其の手も有りしか」と笑ひたり。然る後、早々に銭湯へ赴く。

                    ★       ★

 十五日、神奈川・平塚競技場。コンサドーレ対湘南ベルマーレ戦は、0−0でコンサ二試合連続の引き分け。通算成績14勝13敗9分け、勝ち点1増へて51。順位六位は変わらず。
 次節二十二日、対モンテディオ山形戦(函館市千代台公園陸上競技場)。

 何故に打ち込めぬ!? シュート数13−5なるに0−0の引き分けとは如何なる訳か。切歯扼腕、ごまめの歯軋りと言はりょふと我行きて手本見せ遣りたき気分なり。と云ふて如何にも成らず、残り八試合見届け遣るのみ。



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平成十七年十月九日(日曜)晴

 昨日、昼前より雨降るらしの予報聞きて予定しおりし網戸外し中止したれば、本日実施す。殊の外土埃付着して汚れおり、其の侭仕舞ふ訳にも行かず外水栓よりホース延ばし洗ひ遣りたり。水掛けつつ洗車ブラシにて洗へば難無く落ちるだらふと思ふたに、埃こびり付きしか容易に落ちぬ故、バケツに微温湯汲み来て液体洗剤入れ洗ひ遣りたれば汚れ綺麗に落ちたり。網戸乾く迄間も有り、気温昨日程高くなけれど晴れなれば序に玄関フードの硝子拭き為さんと始めたれど、外側結構な汚れ具合にて此れ又難渋せり。

 屋根に鴉の糞なれば判るが、垂直に張られおる硝子に糞付着せるとは如何な訳か。庇より飛び立たんとせる刹那、勢ひよく脱糞為し浴びせ掛けしか? 将又屋根に飛び来たりて庇に止まらんとせる刹那、脱糞したる処へ一陣の風吹きて押し流され硝子に付着せしか? フード前面の硝子なれば疾ふに眼に入りて始末したらふに、普段眼も遣らぬ側面の然も上の方故とんと気付かなんだは不覚。物置より脚立引き出し屁っ放り腰で登りて、硝子クリーナー噴き付け擦りても落ちず。白塗料垂らし固まりたるが如き有様なれば、道具箱より紙鑢探し出し来て漸く擦り落としたり。

 我難儀しおるに、何処より飛び来たったか鴉電柱に止り野太ひ声にて能天気に啼くを聞かば、「年寄りに世話焼かせるとは全く以って不届き千万、にっくき鴉め」とホースの水浴びせ遣りたき衝動に駆られたれど、鴉は綺麗好きにて水浴びるが大好きと聞きしを思ひ出し「鴉めを喜ばしてなるものか」と止めにせり。綺麗好きなれば糞するにも場所弁へて為し、塵袋突付き回し散らかし放題にて餌漁り為すも慎むがよからふに、御主等賢ひと云はれる程賢く無ひか? 「お鴉様と崇められ御札に刷り込まれるも在れば、凶事運び来る縁起悪しき鳥と疎まれ嫌はれるも在りて、兎角浮世は住み辛ひ」と啼くなや鴉……

 ……なんぞと、よしなきことども思ひては手休ませ、斯くの如くにて網戸外し及び洗浄に一時間余、フード硝子拭きに二時間半要せり。網戸陽に当てし侭、妻の催促に従ひて昼餉。食後猫共撫で遣りたりしてゆるりと休息、午後二時頃より網戸の乾き具合みて物置に収納す。凡そ十五分程にて収納完了、ホース等洗浄用具後片付けに凡そ十分程掛かりて本日予定の作業悉く終へり。然る後は平常。銭湯に浸かり、晩酌為し、ほろ酔ひにて只今日乗認めおるところなり。一つ冬備へ成したるやふに思へ、心持ち良き酔ひ心地にて今宵の安眠保証済みなれば、そろそろ床に就く頃合か――

                    ★       ★

 五日、東京・西が丘サッカー場。コンサドーレ対横浜FC戦は、1−1で引き分け、連勝成らず。通算成績14勝13敗8分け、勝ち点50。順位六位に後退。
 次節十五日、対湘南ベルマーレ戦(神奈川・平塚競技場)。

 前節同様退屈はせなんだが、かと言ふて「面白し」とは云ひ難く、我等の不満鬱積せるのみ。攻めの姿勢貫くは良けれど、ゴールに繋がらねば徒労。決定力不足否めぬなればシュート数増やす以外に手立て無く、今節も前節並みに21本打ちおれば勝ったやも知れぬ。下位と戦ひて斯様な状態なれば当然上位チームに勝てる訳は無く、「昇格」なんぞ口にも出せぬ。――と言ふてしまへば御仕舞ひよ。残り九試合全勝せばよひのだ、コンサ選手諸君!! 我等は未だ諦めおらぬぞや。進め!進め!!我等がコンサ勇士、勝利讃へる其の日迄、進め!進め!!

            ◇……………◇          ◇……………◇          ◇……………◇

 第85回天皇杯3回戦。九日、室蘭市入江運動公園競技場。コンサドーレ対JFLの佐川急便東京SC戦は、0−2でコンサ完敗。1、2回戦シードのコンサは二〇〇一年以来の初戦敗退、JFLチームに敗れたはJリーグ入り以来初なり。

 全選手社員、日中は配送業務に就きおると云ふアマチュアチームに完封され、PK2本で敗退とは……。「どなひ、なっとるねん」と呆れたれども、直に「呆れる事も無ひか」と考へたり。我常日頃「プロなればプロの試合為せ」と言ひしが、其を怠り来る報ひが今日の試合結果に現れた迄の事。此の屈辱の敗因那辺に在るか、コンサ選手諸君は真摯に考へみるべし。其れ無くて諸君に明日は無ひと知れ。

 流石の柳下監督にも手の打ち様在るまひから、此の際、全日本ユース選手権決勝に進出せる札幌ユースUー18の選手諸君に教へを乞ふてみては如何か。皮肉に非ず。己のプロ意識をば再検討し、プロに徹した試合、観客に恥じぬ試合見せるには如何せばよひか、U−18選手諸君の直向きな戦ぶりに接して考へみるがよからふと我は思ふ。



 

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平成十七年十月二日(日曜)曇

 窓辺より曇天見上げて長嘆息、「早十月、我何を為し来たりしか」と自問したは昨日の事。彼是雑事ばかりに日暮れ行きて、日々三省するを怠り時に思考停止のまま唯飯食らひ鯨飲為したる日も在りたは慙愧に堪へぬ――と考へつも、其れも亦よしとせる我が内なる声聞こへ来て早々に納得、自得したり。人間、黄昏時迎へたれば無理に考へず無理に為さず、日向ぼっこしつコックリ居眠るが好ひと思ふなり。

 老残の身には正に光陰矢の如しなれば「残り少なき我が人生、硬ひ事謂はず気楽に気楽に生きるを愉しめ。遊べや呑めや」で暮らし行くが一番。身辺雑事に追はれおれど、其れとて慌てず急がず気楽に己のペースにて熟すだけの話。雑事少々滞りても今日明日の暮らしに支障出で来る訳も無ければ、早々に遣り終へねばと齷齪せる必要微塵も無く、明日の退屈凌ぎに仕事残し置くだけの事と思へば気も急かぬなり。

 ――とは申せ、脳味噌なんぞと云ふ厄介な物備はりおれば、日頃太平楽並べおりても時に「ありゃりゃ」時に「トホホ」も在りて、「此れは又何とせし事か」などと思ひ惑ふが人の常。然すれば如何にせん、と我が惚け頭脳に問ふたとて答へ出る筈も無く、今は「其れが人間、だから人間」と思ひおりて心穏やなり。惑ひ、悩み、苦しむも人間なればこそ。人間は弱く愚かな一生物に過ぎぬと自覚せば、案外気楽。此れ年寄りのみの思ひか?

                    ☆       ☆

 一日。先月二十八日未明に発生せる根室沖のサンマ漁船転覆事故、当て逃げの可能性大の状況。イスラエル船籍コンテナ船が漁船転覆時刻に同海域を航行せるが判明、韓国・釜山港入港中の同船左舷に衝突痕有るを釜山海洋警察署が確認し、同船の塗料片採取したる由報道されり。サンマ漁船に付着せる塗料片と照合鑑定し、其の結果、同一塗料と特定さるればコンテナ船の当て逃げとして本格捜査開始とならふ。唯、事故は公海上で発生しおる故、捜査権及び裁判権は当て逃げ船の船籍国に存し、被害に遭ひし我が方が直接裁けぬを考ふれば、亡くなりし七船員の御遺族が充分納得できる刑罰が科されるかだふか。

 四万トンの巨船が十九トンの漁船横っ腹に衝突、漁船に圧し掛かかりて海中に沈めたと仮定して、巨船乗組員は其の異状に気付かぬものか。全員就寝中とあらば納得もしやふが、航行中なれば当直航海士若しくは見張り番が居た筈であり、大型船故レーダーも対象物をば精緻に捉へる高性能装置な筈。レーダーにて他船舶の航行状況を把握し、前方注視の見張りしおれば衝突事故なんぞ万が一にも起きはせぬ。にも拘らず何故? レーダー未作動状態での航行か、航海士・見張り番の怠慢或は居眠りか……。

 四万トンが約二千分の一の十九トンと衝突しても然程衝撃は感じられぬだらふと我には思はるれど、「衝撃感じなんだ故、衝突は知らなんだ」と当て逃げ否定する事は出来ぬ。安全航行義務規則遵守しおれば起こり得ぬ事故。自船針路とサンマ漁船針路をばレーダーにて確認し、前方見張りおれば衝突する筈無きに、其れが起きたとあらば航海士・見張り番の怠慢或は居眠り以外考へられぬなり。当て逃げしたは己の責任回避の為、知らぬ顔の半兵衛決め込まんとせしものか。衝突後、即救助態勢に入りたれば尊ひ命七つ迄も失はずに済みたやも知れぬを考ふれば残念至極なり。

 此処迄記せし事共、皆々我の勝手な推測に過ぎねど、如何な場合にても衝突為して衝突感知せざるは無き筈と考へるが常識にてやあらむ。若し当て逃げとせば、海の男の友情・信頼皆無にして船乗り魂地に落ちしを唯々嘆くのみ。

                    ★       ★

 一日、札幌厚別公園競技場。コンサドーレ対徳島ヴォルティス戦は、2−0でコンサ五試合ぶりに勝利し、連敗を脱せり。通算成績14勝13敗7分け、勝ち点49。順位五位に上がる。
 次節五日、対横浜FC戦(東京・西が丘サッカー場)。

 九月四日のヴァンフォーレ甲府戦に勝利して三位浮上、此の分なれば昇格も……と思ひおれば後悪く、まさかの四連敗。実力無くば負けて当然なれど、プロの試合見せずに負け続けたが許せなんだ。今日の試合は如何か。「流石プロ」と大向ふ唸らせるやふなプレーナ無かりしが、攻めに徹したシュート21本が出て退屈せなんだは確か。然れどゴール前にての決定力不足は相変はらずにて、我「あややや……」の外声無き状態。J1上位チームなれば10〜15本は決めおる状況にてやあらむにと、溜め息ばかり出でしなり。



              
                  
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