北極亭日乗 |
平成十七年三月 |
平成十七年三月二十七日(日曜)曇時々雪 午前九時過ぎ、身内の不幸知らせる電話有りて終日わさわさしおりたり。病の床に伏したも聞きおらず、唐突の知らせなれば今尚気持ちの整理付きかねる始末。訃報に接してより「死を忘るな」の囁き強く耳に響きて、老残の身晒す我が胸中命の儚さに震へおりたり。今は唯々、合掌念佛唱へて冥福祈るばかりなり。明日友引故、通夜は明晩、告別式は二十九日の由。 ◇ ◇ 帰命無量寿如来/南無不可思議光/ほうぞうぼさいんにじ/ざいせじざいおうぶっしょ/とけんしょぶじょうどいん/こくどにんでんしぜんまく/こんりゅうむじょうしゅしょうがん/ちょうほっけうだいぐせい/ごこうしゆいししょうじゅ/じゅうせいみょうしょうもんじっぽう/ふほうむりょうむへんこう/むげむたいこうえんのう/しょうじょうかんぎちえこう/ふだんなんしむしょうこう/ちょうにちがっこうしょうじんせ/いっさいぐんじょうむこうしょう/ほんがんみょうごうしょうじょうごう/ししんしんぎょうがんにいん/じょうとくがくしょうだいねはん/ひっしめつどがんじょうじゅ にょらいしょいこうしゅっせ ゆいせみだほんがんかい/ごじょくあくじぐんじょうかい/おうしんにょらいじっごん/のうほいちねんきあいしん/ふだんぼんのうとくねはん/ぼんしょうぎゃくほうさいえにゅう/にょしゅうしにゅうかいいちみ/せっしゅしんこうじょうしょうご/いのうすいはむみょうあん/とんないしんぞうしうんむ/じょうふしんじしんじんてん/ひにょにっこうふうんむ/うんむしけみょうむあん/ぎゃくしんけんきょうだいきょうき/そくおうちょうぜつごあくしゅ/いっさいぜんまくぼんぷにん/もんしんにょらいぐぜいがん/ぶっごんこうだいしょうげしゃ/ぜにんみょうぶんだりけ/みだぶほんがんねんぶ/じゃけんきょうまんあくしゅじょう/しんぎょうじゅじじんになん/なんちゅうしなんむかし/いんどさいてんしろんげ/ちゅうかじちいきしこうそう/けんだいしょうこうせしょうい/みょうにょらいほんぜいおうき/しゃかにょらいりょうがせん/いしゅうごうみょうなんてんじく/りゅうじゅだいじしゅっとせ/しっのうざいはうむけん/せんぜだいじょうむじょうほう/しょうかんぎじしょうあんらく/けんじなんぎょうろくろく/しんぎょういぎょうしどうらく/おくねんみだぶほんがん/じねんそくじにゅうひっじょう/ゆいのうじょうしょうにょらいごう/おうほうだいひぐぜいおん/てんじんぼさぞうろんせ/きみょうむげこうにょらい/えしゅうたらけんしんじ/こうせんおうちょうだいせいがん/こうゆほんがんりきえこう/いどぐんじょうしょういっしん/きにゅうくどくだいほうかい/ひっぎゃくにゅうだいえしゅしゅ/とくしんれんげぞうせかい/そくしょうしんにょほっしょうしん/ゆぼんのうりんげんじんづう/にゅうしょうじおんじおうげ/ほんじどんらんりょうてんし/じょうこうらんしょ/ぼんしょうせんぎょうきらくほう/てんじんぼさろんちゅうげ/ほうどいんがけんせいがん/おうげんえこうゆたりき/しょうじょうしいんゆいしんじん/わくぜんぼんぶしんじんほ/しょうちしょうじそくねはん/ひっしむりょうこうみょうど/しょうしゅじょうかいふけ/どうしゃっけっしょうどうなんしょう/ゆいみょうじょうどかつうにゅう/まぜんじりきへんごんしゅう/えんまんとくごうかんせんしょう/さんぶさんしんけおんごん/ぞうまほうめどうひいん/いっしょうぞうあくちぐぜい/しあんにょうかいしょうみょうか 合掌。念佛申しましょう。 南無阿弥陀仏なまんだぶなまんだぶ 南無阿弥陀仏なまんだぶなまんだぶ 南無阿弥陀仏なまんだぶなまんだぶ 南無阿弥陀仏なまんだぶなまんだぶ 南無阿弥陀仏なまんだぶなまんだぶ ★ ★ 二十六日、札幌ドーム。コンサドーレ対ベガルタ仙台戦は、0−3でコンサ連勝成らず、ホームゲーム連敗。通算成績1勝2敗1分け。勝ち点4、順位八位。 |
平成十七年三月二十日(日曜)曇 曇天ながら本日の最高気温8度。 甥が子等連れて正月に訪ね来し折、「息子は小学校卒業して中学へ、娘は中学三年に進級。祝わにゃなるまひ」とて、子等に御馳走すると約束しおりたに由り、今夕五時半より甥一家と我等二人、狸小路四丁目「香州」にて会食せり。先ずは「子等の進級目出度し」と乾杯、然る後は甥と我の酒盛りと成りたる様にて紹興酒四合瓶二本空けて御開きの体。「誰が為の祝ひか」と、先程戻りて女房殿より一言頂戴せり。老ひの身なるに慙愧に堪へぬなり。起き居ればもう一言二言来さふなれば、口漱ぎて早々に寝ることにす。日乗此れにて閉ず。 ◇ ◇ 十八日、稚内に住みおる友より便りあり。最北の地にも春の兆し確かなりと、写真同封されおりたり。ロシアよりの蟹輸入減少して、観光客相手の蟹小売業者四苦八苦らしと伝へ来たり。値上がり必至、已む無しか。 ★ ★ 十九日、群馬県立敷島公園サッカー場。コンサドーレ対ザスパ草津戦は、4−0でコンサ初勝利。通算成績1勝1敗1分け。勝ち点4、順位七位。 |
平成十七年三月十三日(日曜)雪後曇 晴れの日続き雪解け進むと思ひおりたに、冬に逆戻りの一週間。七日、八日は早朝雪降りたれど其の後晴れて気温も8.7度、5.5度と暖かであったに、九日以降今日迄最高気温氷点下にて雪も降りたり。昨夜よりの雪は二十センチ程も積もりたれば、午前中に「春よ来ひ、早く来ひ」と鼻歌交じりにて掻き、玄関脇に積み上げ片付けり。此の調子なれば未だ降りそうにて、今暫し天よりの便り頂戴致しませふ。如何に降ったとて淡雪なれば知れたもの、冬の名残と愛おしみて雪掻きせぬも亦一興やも知れぬ。 ☆ ☆ 十日、比羅夫行。ニセコ・比羅夫のスキー場に豪州よりの観光客多く、別荘建てる者も有りて地価上昇中との話聞き、「如何な状況なるか見聞するも後学の為」と勝手な理由付け。本当の処は久々に比羅夫の湯に浸かるが望みにて、「後学の為になど成らぬ」と言ふ女房殿説き伏せての出発となれり。 札幌午前十一時二十八分発ニセコライナーに乗車、車中にて駅弁の昼食、午後一時三十五分倶知安着。タクシーにて比羅夫の宿へ向かふ。運転手の話にては昨日は大雪の由なるも、今日はまずまずの天気。沿道の雪壁未だ三メートル強の高さ。点在せる別荘、ペンション等の屋根雪も亦一メートル強もありて、どの建物もすっぽり雪に埋もれおりたり。山中故か、尋常ならぬ積雪なり。羊蹄雲の中にて見へず。 予約せる宿、学習院高等科の修学旅行生宿泊の為、入浴時間及び食事時間ずれ込みたれど急ぐ旅にてもなければ、存分に温泉に浸かりサウナにて汗流したり。然る後、夕餉の馳走肴に麦酒で喉潤せば正に温泉旅行の醍醐味、貧しき老夫婦には過ぎたる贅沢なれど幾年ぶりの温泉なれば許されやふし冥土の土産にもならふさと、女房殿と乾杯又乾杯。旨し、全き旨さなり。 食事後、テレビ眺めてごろ寝しおりたれば、女房殿「外の土産屋覗きたし」と言ひ出し「寒き故、明日でよからふ」と言ふに聞かず、着替へ為して八時半頃出掛けり。ひらふ坂の両側に立つ宿屋、土産屋、食堂、飲み屋の灯り賑やかにてスキーの若者の往来多く、聞きし通り外国人の姿も交じれり。坂途中の土産屋に入りて店内一巡り、地元特産とて馬鈴薯原料にせる「豪雪うどん」購いて店を出でり。 ひらふ坂下りて343号線左へ行けば倶知安市街、右へ行けばニセコ市街へ通ずるなり。坂下左手にコンビニ在りて、若者参集しおるを見つけ何事なるやと近付き見れば、食べ物飲み物買ひて店先にて宴会中。我らもスポーツドリンク求めんと中に入ればレジ前行列成す繁盛ぶりにて、若き外国人男女七、八人宿にて酒宴催すつもりか酒瓶等抱へて並び居たり。豪州よりのスキー客は長期滞在する故、コンビニ利用にて経費節約しおるに違ひ無しと勝手に独り合点。女房殿に申せば、納得せしか「ふむ、ふむ」と肯きたり。 コンビニ斜め向ひに「居酒屋『樹幸』」の看板。雪舞ひ始め冷へ来たれば熱燗にて一献遣りて後戻らんと暖簾潜り見れば、此処にも外国人の姿在りたり。家族なるか、此方に麦酒飲みつ談笑せる五十代夫婦と屈強な若者二人。彼方には男女取り混ぜたる三人、四人のグループ二つ其々に楽しげにて時折どっと笑ひ声。酒酌みつ眺めおれば、「ママサン、アリガトゴザイマス」と礼述べて帰る者、女将と記念写真撮る者もおりて店内和気藹々なり。 居酒屋主人の話に依るに、豪州よりのスキー客今の時期既にピークを過ぎ極僅からし。別荘地の件訊ぬれば、比羅夫・ニセコ共に目ぼしき所売れ切れしと言ふ。豪州人購入の他、値上がり期待の地元資本の買い漁りもあり、豪州資本入る前は坪一万より一万五千円であったに、いまは十万円にも成りおる由。「一儲け企んで欲の皮の突っ張った事したらば、折角の福の神が逃げるべさ。地元の人間が先の事考へんで、目先の儲けばかり考へて如何するじゃ。頭に来るべ、お客さん」と居酒屋主人憤慨の体にて語りき。 二合程も聞こし召したか温もりて居酒屋を出れば、ひらり舞ふ雪頬に涼し。ひらふ坂ゆるりと上りつ、「我も千坪ばかし別荘地買ほうかい」と言ったれば、女房殿即応へて「そうしましょ、そうしましょ」。何とも愉快にて二人腕組み笑ひて宿へ戻りぬ。就寝前に温泉に浸らんと思ひおりたに、酒呑みての湯浴み体に悪しと女房殿止める故、素直に聞き入れ床に就きたり。 ◇……………◇ ◇……………◇ ◇……………◇ 十一日、朝より雪ちらつく。起床六時半、窓外見やれば既に圧雪車出でてゲレンデ整備に余念無し。朝風呂に浸かりサウナにて昨夜の酒気抜けば気分爽快、極楽極楽。八時、食堂にて朝食。スキー客にて満杯、外国人の数思ひの外多し。飯二膳平らげ部屋に戻りて寛ぐ。リフト運転始まりてゲレンデに人の増へ行くを暫し眺む。我らは温泉入浴客にてスキー客に非ざれば、他人の滑り降りるを眺め「彼は上手、是は下手」と専ら批評のみ。「貸しスキーが有る故、我らも繰り出すかや」と気負ひ立ちても、女房殿「年寄りの冷や水」の一言。 部屋掃除の都合にて十一時過ぎ、ぶらり当ても無く外出す。晴れなればひらふ坂下り真正面に見へる羊蹄、今日も見へず。昨夜寄りし土産屋へ再度入り、店内一巡。仔細に見て回れば品数多く、結構時間要したり。種類は豊富なれど地元特産、地元生産の品少なく、表示見れば道内各地にて作られし物が殆どなり。此処比羅夫に限らず何の温泉地の土産も似たり寄ったり、何故にもふ一工夫凝らさぬかと思ふが、然ふ思ふのは道内在住者だけやも知れぬ。失礼乍、本州客は「北海道産」であれば文句無きやふなり。訪ねる先無き散策なれば、下り上りてひらふ坂に沿ふて立ち並ぶ建物眺めて戻りたり。 朝食しっかり摂りし故か、動かぬ所為か、昼食刻に成りても然して腹も空かぬなれば食さず。我は昼寝、妻はテレビ観て過ごし、午後四時浴場へ。湯船に四、五人の若き外国人在りて「ジャパニーズオンセン、ジャパニーズオンセン」と喋りおるを聞きたり。我には甚く感激しおる様に見へたれど、其の後の会話とんと解せず、如何な気分なるかは分からず仕舞ひなり。たっぷり一時間半、温泉に浸かりサウナに入りて酒呑む準備万全。先ずは湯上がりの缶麦酒一本。 六時過ぎ夕食。麦酒にて乾杯、馳走を食す。今宵も亦、旨し。麦酒の後、冷酒小瓶一瓶。二晩の贅沢勿体無くも有り難き事なり。ゆるり一時間余の夕食終へし後、「宿の売店覗かん」と言ふ女房殿に従ひ行きたれど、並びおる品々土産屋と変わらず直に引き揚げたり。寝床に横臥して暫し休息の後、比羅夫最後の夜を口実に昨夜訪れし「居酒屋『樹幸』」行き提案したれど女房殿に断られ、已む無く自販機より麦酒一缶、缶酎ハイ一缶購ひ来りての二次会となれり。呑みつ他愛無き事ども語りおればやがて眠気催し、「明朝早起きなれば」との女房殿の言に従ひ、十時前静かに床に就きぬ。 ◇……………◇ ◇……………◇ ◇……………◇ 十二日、六時起床。曇天なれど雪の気配無きを喜ぶ。朝風呂に入りつ思ふたは――「はてさて、温泉に浸かるが目的の旅でありしに朝夕のみの湯浴みにて、終わり見れば計四回と些か少なし。せめて就寝前のひとっ風呂浴び置けばと思へど、二晩共酩酊状態にては其れも叶わず、詰まりは自業自得にて大ひに反省すべきなり」と。何はともあれ比羅夫最後の湯浴み一時間、存分に堪能す。 今朝も込み合ふ食堂にて飯二膳食し腹拵へも万全、九時二十分宿を出でタクシーにて倶知安駅へ向かふ。今朝も羊蹄見へず。九時四十分駅着。待ち時間有るからと女房殿、駅前通りの菓子舗「ふじい」にて洋菓子購ひたり。「誰が食すや」と問はば、「我」と一言。呆れつ駅へ戻りたり。十時二十分「ニセコスキーエクスプレス1号」にて倶知安を離る。エクスプレス1号は御座敷列車にて我等は乗車初体験なれど、年寄りには寛げる車両にて、一杯遣りつつの移動には持って来ひの造りなり。二人旅に良し、四人旅に良し、貸切団体旅行にも亦良し。 わが車両に乗客少なく、乗り合はせたは若者ばかり。何れも卒業旅行なるか、二人、四人の女性グループ二組。共に恋人同士なるか、ペア二組。我等老夫婦を入れて十二人、加へて車内清掃係の御婦人が一人。倶知安発ちて十分も経たぬ間に女性グループ二組、畳にごろ寝して桑園過ぎる迄起きず。我等二人車窓外の雪景色眺めつ、今冬の雪の多さをば語り、舞ひ始めし雪に「居ぬ間に雪降りて玄関埋もれおるやも知れぬ」「いや大丈夫」等と話す中、十一時五十四分札幌駅に到着せり。 大丸に寄る。沖縄フェア開催中にて、島ラッキョウの漬物、ゴウヤの漬物珍しとて買ひ求む。一時半過ぎ我が家着、玄関前雪積もりおりたれど量僅かにて新聞、郵便の配達人踏み固めしか、歩くに何等支障無し。入りて無事旅装を解きたり。夕刻四時半銭湯へ赴き、六時前戻る。麦酒で喉潤し、大丸にて求め来たりし惣菜をば食卓に並べて夕餉とす。豪華にして贅沢なる比羅夫行に感謝し、我等の無事の帰着に乾杯せり。 ★ ★ 十三日、札幌ドーム。コンサドーレ対サガン鳥栖戦は、0−1でコンサ黒星。ホーム開幕戦飾れず。通算成績0勝1敗1分け、勝ち点1。順位八位に後退。 |
平成十七年三月六日(日曜)曇 本日の最高気温2.8度にて久々に温し。散歩せむとて出でみれば裏通りの轍、表通りの横断歩道の窪みに雪解け水溜りて長靴履きにても歩行難儀す。幹線路は両側未だ雪堆かれど車道既に雪無く、傍の街路樹見上ぐれば所々に小さき芽見へて、春の訪れ着実なるを知りたり。なれば公園の状況如何にと行き見れば、遊具も腰掛も今尚半ば雪に埋もれし儘にて人影無し。其れにても雪の嵩は確かに減りて、木々の根元周りの雪深く窪み既に消へて地面露出せるものも散見せり。此の儘の気温一週間続き行けば雪解け急速に進むは間違ひ無き処にて、氷割りの準備等せねば……と考へつ戻りたり。 ☆ ☆ 此の処、土日の銭湯に客増へおるを感ず。我赴く夕刻四時より六時頃迄の状況にて、他の時間帯につきては知らず。雪解けて歩き易く成りたる故か、将又スーパー銭湯なるものに飽きて横丁の銭湯へ回帰し始めたる故か。何れにせよ客減りて嘆きおりし銭湯の主にとりて嬉しき事喜ばしき事にてやあらん。 増へし客多くは見知らぬ顔、風体も種々雑多にて些か煩はしけれど、己一人の銭湯でもなし我儘は言へぬなり。馴染みの御隠居連、「賑やかに成りたは結構な事。此の込み様が銭湯なり」と少々込み合ふたとて一向意に介さず、湯船が空けば湯に浸かり、サウナが空けば入室して相も変らず世事談議に花咲かせおる姿、正に大人の風。分かりもせぬにしたり顔にて仲間入りしておりしを恥じてより語るを止めし我なれば、今は聞き役にて相槌打つばかり。御隠居連の如き大人の風、我が身に着くは何時の日か。 ◇……………◇ ◇……………◇ ◇……………◇ 「熟(つらつら)監(かんがみ)るに、銭湯ほど捷径(ちかみち)の教諭(をしへ)なるはなし。其故如何となれば、賢愚邪正貧福貴賎、湯を浴んとて裸形(はだか)になるは、天地自然の道理、釈迦も孔子も於三も権助も、産れたまゝの容(すがた)にて、惜(をし)い欲(ほし)いも西の海、さらりと無欲の形なり」と式亭三馬『浮世風呂』に書きたれど、裸形に成るは同じにても今は惜しひ欲しひばかりにて迚も「さらりと無欲」とは行かず、地位肩書き身に付けし儘湯浴みせる御仁稀ならず。 其等の御仁、物言ひ聞けば賢きとも思へず、一癖二癖有りて聖人君子に程遠く、其の風体立ち居振る舞ひ富者貴人には到底見へぬに、裸形に成りても尚体裁繕ふて野郎自大、慇懃無礼なるも哀れなり。矢鱈と偉ぶる者、威張りたがる者、己の自慢話に終始して聞く耳持たぬ者等、大人たる御隠居連でさへちと顔そむけて閉口の体。身も心も裸にして湯に浸るが湯浴みなるに、裸形に成れぬなれば湯浴みの甲斐無からふ。とは申せ、当人には其ふせねばならぬ訳在るやも知れず、些か迷惑なるも打ち捨て置くが一番か。 ★ ★ 五日、山梨・小瀬スポーツ公園陸上競技場。コンサドーレ対ヴァンフォーレ甲府戦は、2−2でコンサ今季引き分けスタート。0勝0敗1分け、勝ち点1。順位五位。 西嶋のオウンゴールが無ければ勝てた、とは思はぬ。1−1で引き分けたかも知れぬし、1−2で負けたやも知れぬ。評価すべきは敗戦濃厚の終盤に同点に持ち込んだゴールへの執念。最後迄諦めずゴールを狙って果敢に攻撃するイレブンの闘争心が勝ち点1に繋がりしを評価したし。甲府の決定力不足に助けられし面あれど、攻撃に耐へて1ゴールに抑へた守備も立派。前半リード後半逆転負けの昨季思へばチーム守備力は確実に成長しおるなり。最後迄勝ちを諦めぬ姿勢が決定力不足克服へ繋がるは間違ひ無く、甲府の8を上回る11のシュート数は攻撃力の成長を示しおる。先、明るし。優勝視野に在り。
|