北極亭日乗


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平成十七年十一月



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平成十七年十一月二十九日(火曜)雨

 昨晩仲間内の忘年会有りて些か呑み過ぎ、零時前には床に入りたれど今朝は九時頃迄寝床の中。起きみれば、何時頃より降り出したるか強風伴ひたる雨激しく路面に水飛沫上げ、窓硝子叩きて宛ら暴風雨の如き様相呈しおりたり。気温下がらば大吹雪に成りたやも知れぬ荒れやふなりき。昨夜街より戻り来る十一時頃は穏やなる空模様なりしに斯く成りたを驚き眺めおれば、二日酔ひにてふやけ気味なる我が身体・脳味噌徐々に融解しゆくやに思へたり。

 ならじと口漱ぎ洗面為したれど、如何せん身体・脳味噌共に完全覚醒に至らぬまま、倦怠感身に纏はり付きて去らず。妻「朝食摂らねば」と勧め呉れたれど食欲無く、「直昼食の時間故、要らぬ」とスポーツドリンク二杯飲みて済ませり。「此の雨風では買ひ物にも出られませんから、夕飯は有る物で……」と妻が言ふ故、「今日のやふな日は蟄居するに如かず。一日二日なれば梅干しだけにても何とか成らふさ」と答へ遣りたり。やがて風雨も徐々に弱まりて午後よりは降りみ降らずみ、夕方銭湯へ行く頃には上がりたり。

 老ひて意地汚く成りた訳でも無からふが、注がれれば注がれただけ呑んでしもふて翌日頭抱へる事多く成りたは反省すべきなり。足元覚束無き面々集ひ来るなれば雪積もる前に――との幹事連の深慮遠謀に由りて師走前に開催の忘年会なれど、集ひて酌み交はす老ひの気分は早や師走。皆々今年の事共にけりつけて、年明けたれば彼為さん是為さんと語りおる。けりつけられず未だに今年引き摺りおるは我くらひか、と考へたればつひつひ盃重ねたり。

 幹事より「病にて出席叶はなんだ者在り」と聞けば、我等も歳故年々病人増へて集ふ数も減り行くかと考へたれば、何やら切なき思ひ込み上ぐ。然り乍らと周り見回せば、何処其処が悪ふて入院したの通院中だのと語る割りには皆元気にて、逢ふ度に若返りおるやに見へる者居るも心強し。麦酒だ酒だ焼酎だと夫々に呑む物違へど、「まあ一献」と注ぎ遣れば誰も皆「だふも、だふも」と呑み干して二次会終了するも乱れ見せず、足元ふらつきし者居らなんだは正に驚異。連中なれば来年も来れやふ。……実に愉快な一夜でありき。

 食欲無ければと妻昼に作り呉れた卵雑炊食して体温まりたれば、やふやふけだるきも消へて脳味噌の歯車動き出せり。食後の茶啜りつ、「我もやふ呑んだれど、連中も相当呑んだ故、皆二日酔ひやも知れぬなぁ」と言ふたれば、妻笑ひて「一番呑んだのは貴方でしょ。今夜は休肝日」と返されて我も苦笑ひ。結局、銭湯より戻りても麦酒口にせずスポーツドリンクにて渇き癒やし、夕餉も酒無き侭にて済ませり。今日は早寝為し、体調整へて明日は湯上がりの麦酒とするか。師走入り近ければ風邪背負ひ込まぬやふ万全期さねばなるまひぞ。

                    ☆       ☆

 二十七日。補助金不正受給疑惑浮上より彼此二週間。「申し訳無し」と早々に辞職するなればまだしも、開き直りて「告訴する」なんぞと息巻きおる内に「学園経費三億二千万円の私的流用」等々の疑惑露呈して、今や身動きならぬ泥沼の中。斯く成りたも身から出た錆、其れだけの人物だっただけの事にてあれば、「理事長ともあらふ者が、愚かよなふ」と慨嘆する事も無し。親が始めし専門学校をば短大・大学擁する学校法人グループへ大きくしたは良けれど、伴ひて己を大人物に育てられなんだが故の帰結なり。

 疑惑解明に向け設置されし調査委員会初会合本日開かれ、年内に報告纏める方針確認されたる旨、報じられたり。補助金につきては、返還為し「此れにて一件落着」で幕引き出来ぬ情勢なれば、主導せし者・遂行せし者特定して責任の所在明らかにせねばなるまひ。学園経費私的流用につきては、裏金の存否も含め徹底精査為し、流用額確定して返還請求せねばならず、刑事告訴も視野に調査を進めねばなるまひ。如何な報告と成るか見守りたし。其れにしても、理事長退陣要求へ向けた学生諸君の動き微塵も聞こへ来ぬはだふした事か?

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 二十六日、鳥栖スタジアム。コンサドーレ対サガン鳥栖戦は、2−0でコンサ六試合ぶりの勝利。通算成績16勝15敗12分け。勝ち点3増やし60、順位六位は変わらず。一試合を残し今季六位以上確定。
 次節十二月三日今季最終戦、対ザスパ草津戦(札幌ドーム)。

 此処に来て無失点勝利、時既に……ながら六試合ぶりの白星喜びたし。アウエー最終戦勝ちたる上は、次節ホーム最終戦も勝利して今季締め括り呉れるを願ふ。ドームに大挙参集する我等コンサ・サポーターに、来季への夢繋ぐ試合見せ呉れよ! 燃え滾る不滅のコンサ魂見せ呉れろ!

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 二十三日、札幌ドーム。コンサドーレ対川崎ヴァンフォーレ甲府戦は、2−4でコンサ逆転負け。通算成績15勝15敗12分け。勝ち点57は変わらず、順位六位に下げる。
 次節二十六日、対サガン鳥栖戦(鳥栖スタジアム)。

 皮肉込めて申さば、J1昇格消滅・J2残留確定試合に相応しき戦ぶりでありき。コンサ選手諸君には学習能力と云ふもの無きや在りや。四十一試合戦ひ来て何を学びしか。遣ってはならぬ事を性懲りも無く繰り返しおりては、柳下監督も指導の仕様が在るまひ。以下、J2残留祝してのコンサ戦士への我が注文――プロの世界で生きるなれば四六時中サッカーの事考へて思考停止すな。注意・指導は真摯に聴きて、改めるは改め、習得せねばならぬ技術は寸暇惜しみて体得に努めよ。サッカーには緻密なる思考力欠くべからざるものなれば、沈思黙考不得手なる者は早々にプロの道諦めるべし――。



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平成十七年十一月二十日(日曜)曇

 此の一週間気温上がらず最高気温も5度前後に推移して、早朝目覚むれど寒ふて起き難く、暫し寝床にて待機しおる状況なり。時節なれば寒ふ成るは当然なれど、未だまだ体慣れおらず難儀なは確か。況してや脂気抜けおりし老ひの身なれば、朝晩の寒気身に沁みる来るは並みならず、此の先の冷へ込み考ふれば気重し。――と云ふてしょぼたれおりては益々爺むさげに見ゆるだけなれば、矍鑠たるを目指し日々我が身を……

 歳暮手配の為、妻予定通り昼前に街へ出掛く。三日前歳暮の話出て「少々早過ぎぬか」と言ひたれば、「今時は込み合はず楽に買ひ物ができ、配達は日時指定できる故、心配御無用」と今日の外出決めしなり。盆暮れの贈答事は全て妻の裁量に任せおる事なれば、礼を失するやふな事だけは呉々も無きやふ申すのみにて、何時贈らふと我に異存無く、唯街迄出掛け行くを労ひ遣るばかりなり。

 正午過ぎて「蕎麦屋へでも」と思ひたれど外へ出るは億劫、腹も然程空きおらねばと戸棚よりカップ麺探し出し、食す。然る後、読み止しの雑誌等眺めて妻の戻るを待たんと、猫共丸く成り居る傍らに腹這ひて読み出せば直に大欠伸。肘枕にて暫し微睡み、腕肘痺れきて我に返れば既に活字追ふ気力失せ、なれば久方にテレビでも見んとスイッチ入る。リモコン持ちて選局せば、映りたは女子マラソン。高橋尚子の顔見へり。何マラソンなるかと新聞テレビ欄眺むれば、東京国際女子。なんと、因縁の大会に出場せるかと、ゴール迄付き合ひたり。

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 東京国際女子マラソン、高橋尚子2時間24分39秒にて優勝す。右足に故障在るを発表してのレースなれば往年の走り無理と思ひたに、二年ぶりのマラソン完璧に走り抜きて勝ちたは流石。アテネ五輪代表選考レースの二〇〇三年本大会、アレム(エチオピア)に敗れ五輪連覇への夢断たれし後、小出監督の下離れ指導者持たぬ侭、独力で今大会にて勝利したは特筆さるべき偉業と言ふべきなり。嘗て指導せし小出監督「未だ2時間17、18分で走る力は在る」と言ひしと。愉しみ尽きぬは嬉し。

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 十九日。昨夜来の雨、未明に雪となりしか終日霙と雪交互に降り続く。朝起きれば妻早速に「雪ですよ」と一声、「掻き遣る程の雪でもあるまひ」と外眺むれば……不覚なり。未だ除雪用具物置より出しおらぬに気付きて、「ありゃー」と我も一声。雪の気配微塵も無く雪の予報もとんと聞かぬ故、雪掻き道具の事など考へもせなんだは迂闊。庭木の冬囲ひ為して、冬備へは万全と勝手に思ひ込みしか。雪如きに後れ取りしは残念至極なり。

 積もる程の降りでも無き故、急ぎ道具引き出す必要も無く、妻も「止んでからでも」と言ふたれど、我が気分とせば面白ふ無かりせば、「忘れぬ内に出し置かん」と殆ど雨に近き霙の中にて作業せり。終はりてジャンパー脱げば、撥水効果既に失せしか裏地に迄浸透しおりたり。以後、五時の銭湯の時間迄一歩も外へ出ず、六時半帰宅以後も勿論外出せず。籠りて何為す当ても無けれど、天気悪しき日は籠り居るが安全、安心なり。

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 十八日。耐震補修工事の誤魔化し露見して驚き呆れおりたれば、今度はマンション、ホテル等の高層建築物躯体其の物の耐震強度偽装判明せりとの報。建築設計事務所が耐震強度を明示する「構造計算書」をば偽造? 在り得べからざる事が顕在するとせば由々しき問題。一級建築士たる者が何故に震度5にて倒壊する建物を作るのか。一級建築士たるの能力無き故の誤設計とは到底思はれず、金が絡みおる以外考へられぬ仕業なり。

 耐震強度偽装せる構造計算書でっち上げし姉歯なる一級建築士は、建築家としての矜持持ち合はせぬか。一連の建物に関りたる、耐震強度無きを知りて作らせ、知りて作り、知りて売りしに相違無き者等は人命の尊さ知りおるか。我が手に金握れるなれば他人の命如何成らふが構ひはせぬと作らせ、作り、売りし悪辣非道の輩は、断じて赦せぬ。早々に引っ捕らへ、私財没収の上、打ち首獄門に処するが相当なり。

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 十五日。駒苫、又一つ冠増やせり。神宮球場(東京)にて開かれし明治神宮野球大会高校の部決勝に於て、岡山・関西(中国地区)を5−0の完封で破り、同大会道勢初優勝の快挙成し遂げたり。夏の甲子園、秋の国体に続き同一年全国三冠達成せしは全く以って天晴れ、幾ら褒め遣りても褒め足りぬ思ひ。釈然とせぬ世相諸々眺める時、駒苫球児の清々しき笑顔思へば心救はれる心地するなり。此処迄公式戦二十九連勝、不敗伝説不動のものとすべく勝ち進め!!

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 本日、天皇家長女・紀宮清子(さやこ)様と東京都職員・黒田慶樹(よしき)氏、結婚せり。誠に目出度き事にて慶賀に堪へぬなり。皇籍離脱して民間人の元へ嫁ぐ紀宮の胸中、晴ればれとして喜びと希望に満ち溢れおるを願ふ。皇族の身分より離れたとて親兄弟との縁切れる訳でも無ければ、「里帰り」何ぞと言はず黒田氏と二人して皇居へ「遊びに行く」が良きなり。月並み乍、御二方の前途に幸多かれと祈りて止まず。

 報じられし御両人の略歴記し置く。

 紀宮さま お名前は清子(さやこ)。69年4月18日、天皇、皇后両陛下の3子として誕生。36歳。お印は未草(ひつじぐさ)。学習院初等科、女子中・高等科、学習院大文学部国文学科卒。高校時代から公務を始め、外国への公式訪問は計8回。92年から今年6月まで8年間、山階鳥類研究所に非常勤研究員などとして勤務。盲導犬の育成にも力を入れてきた。趣味は日本舞踊。

 黒田慶樹さん 65年4月17日、父・慶次郎さん(故人)、母・寿美子さんの長男として誕生。40歳。学習院初、中、高等科、学習院大法学部卒。秋篠宮さまとは初等科からの同級生。高校は写真部、大学は自然文化研究会に所属。三井銀行(当時)に入行後、97年に都庁職員に転職。今年4月からは都市整備局都市計画課の次席として、都市政策の立案を担当。趣味は車とカメラ。

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 十三日。銭湯へ赴きサウナに入れば、商店街の御隠居連玉の汗して憤懣遣る方無しの態にて談議中。「如何思ふ?」と問はれても何の話やら判らず、我「随分と賑やかですが、何の話です?」。透かさず酒屋の御隠居、顔面の汗ひと拭きして「ほれ、浅井学園の補助金不正受給の話。今朝の読売に載ったやつ」と言ふたれど、当方新聞見おらねば致し方無く「今日は未だ新聞読んで無くて……」と答へたれば、呆れられたり。

 戻りて早速に新聞眺む。一面頭に載りおるを見れば読売の特ダネか。「補助金不正受給の疑い/浅井学園、工費1億水増し/理事長宅改修、一部流用?」の見出し。記事に拠るに、校舎耐震補修工費四千万円のところ文部科学省に一億四千万円と報告為し、五千七百万円の私学補助金をば不正受給せし疑ひ在りと。又、業者に支払ひし一億三千三百万円と工事代金の差額の内、少なくとも五千万円が理事長自宅改修費に充てられしと。

 よく在る話なり。創立者のワンマン理事長が公私混同、子飼ひの事務方幹部媚び諂ひて言はれるが侭に法人会計より金出し与ふ。打ち出の小槌有る訳は無し、事務方幹部原資確保せんと窮して補助金不正受給に走る――の構図。否、寧ろワンマン理事長の命令一下、指示に沿ひて不正受給画策せしやも知れず、「役所の審査など形式のみ、所定の書類揃ひおれば補助金は下りる。貰はにゃ損、損」と責っ付かれての所業やも知れぬ。

 理事長自宅は浅井学園名義にてあれば、改修費も法人会計より出すが当然と思ひおりたか理事長殿。如何な屋敷か見た事無けれど、改修費五千万円とあらば我等には想像絶する大邸宅に相違無からふ。大邸宅なれば固定資産税含めた維持管理費も莫大、個人負担は難儀故、法人払ひにせんと名義変更したと謂ふところか。名義は変はれど我が家であるは変はり無く、勝手気侭に住ひして、金は出させても口出しはさせぬの態ならん。

 五千万円にて如何な改修工事せしものか。校舎の耐震補修工事半端に済ませ、浮かせし資金にて己の住ひの完璧な耐震補修せしとあらば、「御立派!」と苦笑するの外無ひが。大地震襲ひ来て校舎崩れなば幾人の若人犠牲になるか――其処迄想像せなんだとせば、理事長も事務方幹部も教育に関はる資格無し。理事長は「不正存在せず」と公言しおるらしも、煙立ちたる上は早々に退陣するが一番。時経てば更に大なる襤褸出来るやも。

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 十九日、札幌ドーム。コンサドーレ対京都パープルサンガ戦は、3−3でコンサ引き分け。通算成績15勝14敗12分け。勝ち点1増へて57、順位五位は変わらず。
 次節二十三日、対ヴァンフォーレ甲府戦(札幌ドーム)。

 J2優勝、J1昇格決めおる京都との対戦なれば、相手の不調抜きにしても3−3にての引き分け、大ひに褒め遣らねばなるまひ。決定力不足のコンサが八本打って3点、王者京都が十六本で3点故、我等がコンサの決定力此処に至りて向上したるか――の観。されど、されどなり。此れ迄、勝ち試合落とす時は決まりて「何でさふ成るの」と開ひた口塞がらなんだが、今節も同様事態の引き分けと相成りて「未だ未だやのふ」と思ふばかりなり。新聞「札幌皮一枚」の見出しなれど、次節敗れれば其れ迄、勝ちても仙台勝てば御仕舞ひの状況なるに、尚一縷の望み繋ぐかや。未練、未練、未練ぞ!

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 十三日、福岡・東平尾公園博多の森球技場。コンサドーレ対アビスパ福岡戦は、0−3でコンサ完敗。通算成績15勝14敗11分け。勝ち点56のまま、順位五位も変わらず。
 次節十九日、対京都パープルサンガ戦(札幌ドーム)。

 決定力不足指摘されおるチームが僅か二本のシュートのみにては勝てる筈無し。選手諸君の必死のプレー認め遣らねばならぬが、如何せん力の差歴然たるも認めざるを得ず。福岡の動きに比し我がコンサ戦士の動き緩慢に見へしが力の差。走力、ボールへの集中力、個々の技量……何れも劣りおりては戦にならぬ。新聞見出しに「札幌崖っぷち」と有りしも、前節水戸戦引き分けの時点にて「三位争奪戦より脱落」と見た我には、「未練」と映るなり。



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平成十七年十一月十二日(土曜)晴

 菜園の後始末終へし後、暫く温き日続きおりたれば庭木の冬囲ひ未だまだ早からふと手付けなんだれば、九日「札幌に初雪」の報。以来「早くせぬと庭木も風邪引きます」と妻に急かされ、「なれば」と手筈整へたに昨日は雨の為取り止めとなりぬ。今日は朝より晴れて、些か気温低くけれど作業に支障無く、今日遣らねば又延びのびになりて悪くせば雪降る中にての冬囲ひになるやも知れぬ故、身支度為して十時頃より作業開始せり。

 其れ迄は莚巻きて荒縄にて固定せしが、藁屑飛散して作業後の片付けに手間取る上、一冬越したる後の莚は再度使用できず不経済とて、ホームセンターで眼にせし防風防雪網去年より使ひ始めたれば、作業簡便にして塵も出ず、丁寧に扱へば数年は持ちさふにて中々の優れ物と思ひおるなり。唯去年は初めての事とて、莚と違ふて軽き故の扱ひ難さに梃摺り、囲ひし後の形も無様にて近所の庭に見る円錐形に程遠き釣鐘状に成りたが残念。

 他人の目に付かぬ裏庭なれど、雪積もりて土饅頭の如くに見へし昨年の轍踏まず見栄へ良くせんと支柱の竹数増やし囲ひ遣りたれば、傍見には先ずまずの円錐形。網使ふも二年目とあらば手際も幾分良く成りしか、作業捗りて昼前には終了せり。家に入りて窓辺より眺むれば形悪しく無けれど上々の出来とは謂ひ難く、去年に比して稍増しか。「素人故、こんなもんか」と妻に声掛けたれば、「綺麗に出来ましたね」と言ふて呉れたが嬉し。

            ◇……………◇          ◇……………◇          ◇……………◇

 昼餉の饂飩啜りし後、ストーブ背に横になり猫共撫でつ――彼も是も遣らねばと思ふも、如何せん腰の重きは一向に直らぬ。何事も女房殿に責っ付かれる前に遣らねば……どだい、やひのやひのと急かされて遣るは面白ふ無く我が本意に非ざれば、年々歳々同じ轍繰り返す我が「ぐうたら」改めるが先ず肝心。頑固、偏屈、ぐうたら同居せる爺は早晩匙投げられて――等と思ひおれば軈て朧、冬備へ一つ片付きての安堵が齎せしか暫し微睡みたり。

 猫共の動くを感じて眼開けみれば、二匹して背伸ばし大欠伸しおりたり。日頃「此奴等は寝てばかり居て暢気なものよ」と一瞥呉れる己が、一緒に居眠りするも様態無し――と起き上がれば既に二時近く。外見遣れば漸陽翳りたれども未だ天気良く、午前中よりは温くさふなれば、町内一回り散歩でも為さんと出でり。商店街通りて公園にでもと歩き出して数分、不意に「雪来る前に今一度、我が孤木訪ね遣らねば」の思ひ湧き来て、踵を廻らせり。

 「何処へ?」の妻の問ひに「川」と答へて自転車引き出し、漕ぎ行きたり。何時もの場所に立ちて我が友孤木眺め遣れば、切り落とされし枝端に鴉一羽止まりて「ガアー」と嗄声発せり。「不吉にして怪しき鴉め、立ち去れ!」と小石投げたれど届く筈も無く、我を馬鹿にしおるか又「ガアー」と啼きて微動だにせず。汝、我が友に相応しからず。友の枝に止まるに相応しきは大鷲・尾白鷲・縞梟の類ぞ。早々に飛び去れ!」と言ふも、聞かず。

 よもや《夜の岸辺より彷徨ひ出でし薄気味悪き老ひ耄れ鴉》でもあるまひに。鴉よ、御主も“Nevermore”と答へるか? 己が欲して漆黒の闇背負ひた訳でもあるまひに、陰気にして悍ましき冥府よりの使者と忌み嫌われるも、思へば哀れ。其の嗄声、己が身の上嘆き悲しみて啼き暮らしたが故なれば、同情もしやふ、慰めもしやふ。さあ鴉よ、其の場を離れ我が近くに飛び来たれ――と念じたれど応へず、「何を阿呆めが」と小首傾げしのみ。

 小癪不埒な鴉め《聞く耳は有るか。御主は嵐の只中へ戻り行け、夜に支配されし冥府の岸辺へ帰り行け》と叫ばんとせし其の刹那、孤木の声聞けり。「追ひ払ふべからず。共に此の地に生きるもの、一時羽休めおるを妨げてはならぬ。我に啄む実一つ無く雨風遮る枝葉無きも、時に訪ね呉るる友なれば追ひてはならず」――。嗚呼友よ、赦し給へ。「彼奴は死の影運び来る不吉鳥なれば、病みおる身には相応しからず」と思ひた我が狭量恥をず。

 友の生命力信じおるも、待ち受けるは長き冬。一抹の不安抱きて、辞去間際「理不尽に命殺がれて、廻り来る冬も早や三度。再び春の陽浴びるは遥か先。痛々しき傷癒へぬ侭、襲ひ来る風雪に耐へ得るか孤木よ」と問ふたらば、「我知らず。生命の灯消ゆる迄、唯只管に生きるのみ」と答へしなり。「ならば我も亦、死ぬる迄生き延び、共に命在らば来春相見へん。さらば友よ、其の日迄」と帰路に就けば、鴉枝端にて動かず我を凝視しおりたり。

                    ☆       ☆

 九日。札幌、初雪観測せり。平年より十三日、昨年より十四日遅きと。今月に入りても気温比較的高めなれば、下旬迄降らぬやも知れぬと思ひおりたに、さふは行かなんだ。七日は19.8度、昨日は12.1度有りたに、今日は一気に下がりて最高気温が4.9度。朝方寒さ感じて目覚める程にて、午前十一時五十六分に0.7度の最低気温記録し、今冬一番の冷へ込みと成りたり。今夜より毛布一枚増やし、寝床整へねばなるまひ。

 昨年は十月二十六日深夜より降り初めし雪、翌二十七日朝には5センチ程積もり尚ぱらつきおりたを覚へおるなり。二十三日に6強の新潟県中越地震有りて再び6弱の地震襲ひたが二十七日、香田証生君(二十四歳)がイラクにて武装組織に拉致拘束されたを報じる号外読みしが此れ又二十七日なれば、初雪の事鮮明に覚へおるなり。引き換へ今日は有り難き事に平穏なる一日にて終はりそうなれば、今日の初雪、来年思ひ出せるかだふか。

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 六日。注文しおりし『初摺 北斎漫画(全)』届きたり。予ねてより所望の書籍なれど古書市場に出る事珍しく、出ても高値にて手が出せず、原寸色刷り復刻版出ぬものかと思ひおりたる本なれば、小学館より出版されると知りし時は大ひに喜びたり。今ずしりと重き『北斎漫画』我が手にして眺めおれば、時を忘れ飽く事無し。九十歳にて生涯閉じる迄絵筆握り続けし画狂老人卍北斎、流石なり。此の本にて当分退屈せずに済みさふなは嬉し。

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 六日、札幌ドーム。コンサドーレ対水戸ホーリーホック戦は、1−1でコンサ十一個目の引き分け。通算成績15勝13敗11分け、勝ち点56。順位五位と変わらず。
 次節十三日、対アビスパ福岡戦(福岡・東平尾公園博多の森球技場)。

 昇格への望み潰ヘた訳にあらねど気萎へ行く思ひ払拭すること能はず。順位十位の水戸相手に先制点守り切れぬなれば、最早昇格口にする資格無し。此れが実力と言ふてしまへば其れ迄ながら、同じ過ち繰り返して先制点ふひにする戦ひ頻繁に見せられてはたまらぬ。恐らく監督も「同じ事を何度も言はせるな」と叱咤しおるだらふが、選手諸君は真摯に聞きおるか。各人、弱点克服せんとする強固なる意志無くば実力の涵養蓄積覚束無きを知るべし。



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