北極亭日乗


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平成十四年十月

平成十四年十月三十日(水曜)小雨

 来るべきもの遂に来る。今朝の道内、冷え込み強く、札幌、函館、網走、岩見沢などで遂に初雪を見たり。滝川9センチ、芦別5センチ、夕張4センチ、札幌・手稲区の山間部にても5センチほども雪積もりたるといふ。札幌の初雪、昨年に比して五日早し。この先、思いやらるる。初雪の前兆、昨早朝にありたり。窓硝子を打つ雨音の余りの激しさに驚きて目覚め、カーテンを引きて雪霰の音と知る。道内各地、この秋一番の冷え込みにて、標茶町で氷点4.1度を記録。帯広、釧路にても今季初の氷点下となりたる由報じられおるを聞き、雪の早きを予感しおれば、今朝の初雪となりぬ。
 雪を見て、外に放置せる散水ホースのことども思い出し、氷雨の中、止水栓を締めてホースをば仕舞う。未だ早きとは思えど、ついでに物置より除雪用具を引き出し、玄関脇に用意せり。昨冬の除雪の苦労偲ばれて、老いの身の筋肉痛を思い嘆息つきぬ。冬来たりなば春遠からじ…とは言え、考えるだに辛きことにてまたまた溜息つきぬ。
 ふた夜明くれば早十一月。この年の締めくくり如何に準備せん。日々、ただ気忙しく、為すことなく日暮るる。これも亦、老いの身に辛し。



平成十四年十月二十四日(木曜)晴

 またもやテロ事件。この世界如何になりおるや皆目見当つかず。何が欲しいのか、金か、国か、はたまた…。我が手に余る。テレビに出でる評論家諸氏の話を聞きても底は見えず、解決策も浮かばず。それぞれに思いつくままを語りおるようにて、合点せず。
 日本時間二十四日午前二時ごろ、モスクワ東南部にあるミュージカル劇場に、武装したる四十人から五十人の男女グループが押し入り、六百人以上の観客を人質に劇場を占拠したり。子供、外国人、イスラム教徒ら約百五十人を解放したるも、なお五百人以上が監禁さると言う。犯人グループはロシアからの分離独立を目指すチェチェン共和国のイスラム武装勢力とみられ、プーチン政権に与えたる打撃少なからずと報じらる。

 こちらの行方も予測し難し。帰国中の拉致被害者につき、我が政府は二十四日、「五人は北朝鮮には帰さず、このまま日本に永住させたるうえで、北朝鮮に残した家族を早急に帰国させるよう」北朝鮮に要求する方針を決定せり。

 二十五日(金)追記。拉致被害者・横田めぐみさんの娘キム・ヘギョンさんのインタビュー、テレビにて観る。毎日新聞、朝日新聞、フジテレビ三社の合同インタビューなるも、抜け駆け取材とも思わるるほどに劣悪なるものなり。如何な手立てでインタビューしえたるかは知らねど、この時機にては軽率の謗り免れず。

 二十六日(土)追記。日本時間二十六日午前、ロシア軍特殊部隊百人が突入し劇場を制圧、人質多数を解放せり。人質のうち約十人が死亡、武装集団の三十六人を射殺したる由。
 二十七日(日)追記。劇場制圧のためロシア軍特殊部隊が使用したる特殊ガスのため、人質の犠牲九十人以上と報じらる。



平成十四年十月十八日(金曜)曇後雨

 十五日より開催されおりし障害者インターナショナル世界会議札幌大会、本日、障害者権利条約の制定を求める「札幌宣言」を採択し、閉幕したり。街中に車椅子が目立ちおりしこの数日、チョボラすらできなんだ我なれど、障害者、ボランティアのことどもにつき考うるきっかけとはなりぬ。

 故郷・新潟県真野町に帰りたる拉致被害者の一人、曽我ひとみさん帰郷の挨拶。「わたしは夢を見ているようです。人々の心、山、川、谷、みんな温かく美しく見えます。空も、土地も、木も私にささやく『おかえりなさい』。町がたくさん変わってびっくりしました。だけど、町の人たちの心は二十四年前と変わっていません」。幾分たどたどしさが残る言葉遣いで語るその姿をばテレビで見、我涙を禁じ得ず。願わくは、被害者それぞれの故郷で心癒されんことを…。
 今日あるは誰の責任か、とつくづく腹立たし。不埒な北朝鮮の無法は言わずもがなの話、その無法を二十四年間看過し、国民を守ることなくきた我が政府、選良の責任こそ問うべきなり。

 バリ島爆弾テロ187人死亡(14日付朝日新聞見出し)。観光地バリ島(インドネシア)にて日本時間十三日午前零時十五分ごろ、同島南部クタ地区の外国人専用ディスコ近くで爆発が起き、ディスコは大破炎上した由。イスラム人が多い同国ゆえ、アル・カーイダ関連のテロの可能性否定できず。

 つくづく人間の愚かしさを思う。愚かな人間を救済するはずの宗教が、人を傷つけ殺す。キリスト教、イスラム教、仏教そのた諸々、いずれも人を救う力なく、争いの元凶となるのみ。何故だ、と考えみるも、我が頭脳には手に余ることとて酒呑みて早々に寝ることとす。



   

平成十四年十月九日(水曜)晴

 昨日に引き続きまたまた快挙、慶賀すべき朗報入りぬ。今度はノーベル化学賞受賞の報。しかも、四十三歳の会社員とは驚きたり。授賞理由につきてはテレビで報じられるもなかなかに理解し難し。明日の新聞の詳報を待つのほかなし。受賞者は、京都市の精密機器メーカー島津製作所ライフサイエンス研究所主任、田中耕一氏。戦後生まれの学士。

 目出度きこと続く中、理不尽なる不幸に動きあり。拉致され、生存が確認されたる五人の帰国を実現するよう北朝鮮に強く求めいたるところ、北朝鮮側が一時帰国を認める方針を伝えきたる由。十五日に空路、北京経由で帰国予定。北朝鮮在住の家族らは同行せず、滞在は一、二週間前後となるらし。生存が確認されおるは地村保志さん(47)、浜本富貴恵さん(47)、蓮池薫さん(45)、奥土祐木子さん(46)、曽我ひとみさん(43)の五人にて、一九七八年に拉致されたるにより二十四年ぶりの帰国。
 帰国は当然の事と思うは我らが方、あちらは当然と思うてはいまい。一時帰国の後は家族そろっての永住帰国というが当然の筋道なれども、相手国のこれまでを考ふるに先々の不安尽きることなし。

 徐々に秋は深まりおりぬ。稚内地方気象台は今朝午前九時過ぎ、利尻山(1721m)で初冠雪を観測せり。



   

平成十四年十月八日(火曜)雨後曇

 久々に明るきニュースを書き記すは愉快なり。今年のノーベル物理学賞に小柴昌俊・東大名誉教授(76)決まりたり。日本人の受賞は三年連続の快挙、小柴氏で十一人目。テレビ画面で見る小柴氏、好々爺の見本が如きにて、世界に名だたるカミオカンデをつくり、ニュートリノ天文学を築き来る御仁には見えず。それがまた愉快なり。

 ペイオフ解禁二年延期。小泉首相は昨日の経済財政諮問会議にて、不良債権処理の加速に伴う混乱を避けるため、竹中経済財政・金融相の提案を受け入れ、来年四月に予定せるペイオフ全面解禁を二年間延期することを正式に決めたり。これ至極当然にして、当たり前。政策転換うんぬんを言う時にてはあらず、的確、迅速な経済政策のためには豹変もまた可なり。

 10番目の惑星?巨大な小惑星
         冥王星の半分程度 米グループ発見(02.10.08 朝日新聞)
 【ワシントン=村山知博】米カリフォルニア工科大のグループは7日、太陽系で最も外側の惑星・冥王星の更に外を回る新天体を見つけたと発表した。直径1250キロで、従来知られていた約1千キロの小惑星をしのぎ、冥王星の発見(30年)以降、太陽系で見つかった最大の天体。だが、太陽系最小の惑星・冥王星の半分程度で月の半分以下なので、同グループは「10番目の惑星」ではなく「巨大な小惑星」と位置づけている。
 新天体はパロマー山天文台の望遠鏡で発見された。米先住民の神話に登場する、万物が誕生するきっかけを与えた存在の名から「クワーオワー」と名付けられた。太陽から約60億キロ離れた円軌道を、一部で冥王星軌道の内側に入りつつ、288年の周期で回っている。
 少し性能のいい天体望遠鏡ならかすかにとらえられるという。
 国立天文台の渡部潤一・広報普及室長の話「冥王星の周囲では300個ほどの小惑星が見つかっている。推定される大きさからみて、惑星レベルとは言えないだろう」



 

平成十四年十月三日(木曜)晴

 昨二日、朝起きて外の様子を見るに、雨は止み空明るみて雲の切れ間より陽の射し来るあり。今少し風残りたるも、台風21号過ぎ去りしを認む。午前九時頃には青空広がりて台風一過の晴天となりぬ。網走にては十月としては過去最高の27.2度を記録、帯広26.9度、北見26.2度など道東各地にて夏日となりたると報じらる。札幌にても24.1度を記録せり。
 今日三日、札幌も昼過ぎに25.4度の夏日となりぬ。昨日に続く好天にて、内陸部やオホーツク海側はフェーン現象により気温上昇、網走、紋別、帯広では昼前に25度を超えたると言ふ。十月に本道上陸したるは二十三年ぶりとのことなり。台風の被害種々報じらる。

 昨朝、国の特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」が湖岸に打ち上げられておるを、阿寒町教委の監視員が発見せり。阿寒湖北部のチウルイ島湾の湖岸約六百平方メートルにわたり直径1−20センチのマリモが散乱、その数は特定されておらねど30−40センチの高さに積み重なりてありしとぞ。町教委、明日にも調査の上、湖に戻す作業に着手の予定とかや。新聞報道によるに、阿寒湖にては一九九五年にも台風の影響によりて、今回の約六倍の規模でマリモの打ち上げられしことありと言ふ。

 桜の名所、静内町「二十間道路桜並木」の約五十本に倒れる、折れるの被害あり。札幌にては、知事公館東側にありし樹齢三百年のエルムの幹折れたり。市の「シンボル樹木」とも言へる街路樹なれば惜しまるる。このほか市内街路樹七十本以上が倒れ、伐採の予定と聞き及ぶ。一日夜半より二日払暁にかけての風の唸りを思えば、さもありありなんか。

 夕刊各紙、拉致調査団の面会聴取(曽我ひとみさん、横田めぐみさんの娘とされる少女キム・ヘギョンさんに対するもの)の内容を報ず。靄かかりて腑に落ちぬところ多々あるも、行間に透けて見えるもの多し。今宵もまた寝付き悪しくなるらし。



 

平成十四年十月一日(火曜)曇

 台風21号、今夜関東から東海地方を暴風域に、勢力衰えず北上を続け明朝には北海道に達するの予報。その影響にて夕方には雨となり、空の便三十五便が欠航す。雨滴、窓硝子に吹き付けおれば風も徐々に強まり来るようなり。尋常ならざる気配を察しおるのか、我が家の猫二匹、ミャオー、ミャオーと家中歩き回りて落ち着かず。被害無きを祈るのみ。

 昨夕、小泉改造内閣発足す。閣僚十一人が留任、交代は六閣僚と予想通り小幅改造なり。注目の柳沢、竹中対決は竹中経済財政相に軍配。しかも、柳沢氏の後任金融相は竹中氏が兼務することになりたり。公的資金注入に積極的な竹中氏を金融相に据えたるは金融行政の転換を示唆するものか。竹中氏につきては与党内にても「学者ごときに何が…」と、その手腕に疑問を呈する者多くあると聞き及ぶ。確かに、就任以来、好転の兆しすらない日本経済を見たらば、何を為しおるかと無策無能の謗りも免れず。経済学者が経済を駄目にしたとの声、世界中にあるを思へ。経済は生き物ぞ、机上の空論にては量りがたく御しがたきことを知るべし。我もまた竹中氏の手腕に疑義ある者の一人なり。
 狂牛病問題対応に不手際が指摘されたる武部農相、情報公開請求者リスト問題で叩かれたる中谷防衛長官の二人につきては、時機はずれの更迭が如くに思わる。後任防衛長官になりし石破茂氏は有事関連法制の整備に積極的な御仁にして、テレビなどでの発言を聞くに、思考に柔軟性を欠くところありて危うく、閣僚には不適格なり。「防衛オタク」と揶揄する向きもあるかなりのタカ派なれば、有事関連三法案の早期成立へのごり押しに注意・警戒せねばなるまい。

 北海道西友元町店の豚肉偽装に端を発した返金騒動で、昨日ついに逮捕者出でたり。販売額の五倍に上る代金を返還して二十九日に打ち切りたるも、臨時休業せる昨日なお返還を求める茶髪の若者ら数百人が押し寄せ、警備員に暴行せし少年二人逮捕さる。今時の若者が全てこうとは思はねど、情けなきことこの上なし。濡れ手で粟、汗することなしに金銭を得んとするさもしき根性、浅ましき己の姿形をば鏡に映し見よ。映りおるが餓鬼なり。