北極亭日乗


BACK NUMBER: 10121278


平成十四年十一月


平成十四年十一月三十日(土曜)晴

 久々に太陽を拝む。先週末晴れてより、曇天続きし上に激しき雨も降りて、鉛色の重苦しき空をば見上げおりしに、ようよう日差し戻りたり。気温さほど上がらずと雖も、日向にては温く心地良き一日となりぬ。この天気暫く続くを祈りたし。

 午後六時半、OB会ありて半年ぶりに薄野へ出る。土曜にても人出多く、不景気何処吹く風…と思うたが、やけくその景気付けに過ぎぬのかも、と思い直す。再開したるOBの面々益々元気にて意気軒昂、大いに楽しみ、愉快なる時を過ごしたり。午前零時前、二次会を終わりて帰路に就くも、街路に酔客溢れ喧騒未だ止むことを知らず。

 このひと月を総括したる上、就寝するつもりにておりしが、酔い回り来て心地良くなりたれば眠るを欲す。本日終了。



   

平成十四年十一月二十一日(木曜)曇時々雪

 未明より降り始めたる雪、朝には十センチほど積もり、風も強まりたり。気温下がりて、小降りながら雪断続的に終日降る。北部郊外にては夕方より地吹雪に見舞われ、霧のかかりたる様にて視界悪しく、所々交通渋滞す。
 積雪僅かなれど、湿り雪のためか雪掻きのシャベル重し。玄関脇に寄せ集めたるのみにてやめる。それにても小山一つ出来たり。このまま根雪になるとは思わねど、本格的な冬の到来を実感す。後々の除雪の難儀を思うと憂鬱なり。

 一九八四年一月に行方不明となり、その後遺骨が見つかりし城丸君事件で、札幌地裁は二十一日までに、殺人罪に問われて二審で無罪が確定した女性(47歳)に刑事補償九百二十八万円と弁護士費用約二百五十万円の支払いを認める決定をなせり。女性は九八年十一月に逮捕され、昨年五月に一審・無罪判決を受けて釈放されておる故、補償は一日当たり一万円の勘定なり。
 「疑わしきは罰せず」で無罪となりたるも、私には限りなく黒に近い白と思われてならず。されど物的証拠無く、状況証拠も曖昧模糊として無きに等しく、自供も得られずとあらば「無罪」は当然のことならんや。城丸君のご両親にせば断腸の思いと察せらるるも、法の下、冷厳に対処せる結果なればやむなしと言わざるを得ず。
 補償額。もし完全なる白なれば、身の自由を束縛され、人権を蹂躙されたる日々が一日一万円では安過ぎはしまいか。また、もし警察、検察の取り調べの不備を見抜いて黙秘し、罪状を認めなんだとすれば、盗人に追い銭ぞ。パート勤務で食いつなぎ清貧に甘んじる善良な庶民から見れば、随分と高額、盗人猛々しいとも映ろうぞ。この事件全てに合点がゆかず、胃痛す。
 



   

平成十四年十一月十四日(木曜)雪

 前代未聞の警察官不祥事となりたる道警生活安全特別捜査隊の元警部、稲葉圭昭被告(49)の初公判が十四日、札幌地裁(小池勝雅裁判長)で開かる。稲葉被告は罪状認否で起訴事実を全面的に認めた由。関係者二人が自殺するなどして謎に包まれ、公判の行方が懸念されおりしも、己が罪状を認めたとあらば、この先何とかなりそうにも思ふ。検察側は新たに、稲葉被告が暴カ団関係者に拳銃約十丁を密売したることを明らかにせり。
 忘備のため、以下に読売の記事をば記しおく。(02.11.14 夕刊)

         稲葉圭昭被告を巡る事件の経過
7月5日 稲葉被告の捜査協カ者だった会社役員の男が覚せい剤を持って札幌北署 に出
     頭、逮捕される
  10日 男の供述から、稲葉被告の覚せい剤使用疑惑が浮上、尿検査で使用が確認さ
     れ、道警が稲葉被告を逮捕
  31日 稲葉被告が担当したロシア人船員による拳銃所持事件での捜査について道警
     の事情聴取を受けていた元上司の警視が札幌市内の公園で自殺
      札幌地検が稲葉被告を覚せい剤取締法違反(使用)の罪で起訴。道警が銃刀
     法違反(拳銃所持)と覚せい剤取締法違反(所持)の容疑で再逮捕
8月17日 稲葉被告と親しく、道警の事情聴取を受けていた銃器対策課の畑中絹代巡査
     部長が、稲葉被告の長男と共に元暴力団組員が運転する車に同乗、札幌市内
     でタクシーと交通事故。事故前に3人で飲酒していたことから道警が捜査に
     乗り出す
  21日 道警が覚せい剤取締法違反(営利目的所持)容疑で、稲葉被告を3度目の逮捕
  29日 稲葉被告の逮捕の端緒となった供述をした会杜役員の男が札幌拘置支所で自殺
9月5日 8月17日の交通事故で、道警は畑中巡査部長を犯人隠避、稲葉被告の長男を
     犯人隠避ほう助、元暴カ団組員を業務上過失傷害と道交法違反(ひき逃げ)
     で書類送検。また、畑中巡査部長が、稲葉被告宅で覚せい剤吸引用パイプを
     発見しながら自宅へ持ち帰り、道警への報告を怠っていたことなどから懲戒
     免職に
  11日 札幌地検は稲葉被告を覚せい剤取締法違反(営利目的所持など)と銃刀法違反
     (拳銃所持)の罪で追起訴
  24日 定例道議会で、上原美都男・道警本部長が稲葉被告を巡る一達の事件につい
     て陳謝
10月17日 1997年に起きたロシア人船員による拳銃所持事件に絡み、公判でおとり捜査
     だったことを否定する偽証をしたなどとして、道警は稲葉被告ら捜査幹部と
     捜査員4人を偽証、虚偽有印公文書作成などの容疑で書類送検
11月14日 稲葉被告の初公判

  検察側冒頭陳述要旨
 第一 被告人の身上、経歴等略
 第二 犯行に至る経緯及び犯行状況等
 1 覚せい剤事件について
 (1)被告人は、道警本部刑事部機動捜査隊に配属され、捜査に従事するうち事件捜査においては捜査協力者からの情報を得ることが重要である旨知り、暴カ団員らと頻繁に接触して、次第に自己の捜査協力者を増やしていった。被告人は、こうした捜査協力者を利用して情報を収集するに当たり、より有力な捜査情報を得るため、普段から捜査協力者の飲食代金を負担したり、金銭に窮した捜査協カ者には小遣い銭を与えるなどして歓心を買っていたが、これらの費用は自腹を切って用立てるしかなく、その資金捻出に苦慮していた。
 (2)被告人は、1999年冬ころ、かねて接触していた捜査協カ者である暴カ団組員から、東京から千歳空港に覚せい剤を運搬してきたので捜査用車両で札幌市内まで乗せて行ってほしいと依頼され、これを引き受けて同組員を送り屈けたが、その際、同組員から、警察官である被告人が覚せい剤の保管等に協力すれば摘発される心配もなく心強い旨言われ覚せい剤密売に助力することにより利益の分配を受ける方途があることを知った。
 そこで、被告人は、情報収集を通じて知り合った覚せい剤密売人にこの話を持ちかけて誘い、それ以後、手持ちの資金を出して密売人に覚せい剤を買い付けさせたうえ、その覚せい剤を被告人の自宅マンション等において保管し、小分けした覚せい剤を同密売人に密売させるなどして、覚せい剤の密売に関与するようになった。
 被告人は、この方法で覚せい剤を密売して利益の分配を受けることにつき、密売人である捜査協カ者にも利益を得させて、秘密を共有する間柄となり、これにより自己に対する信頼感を得ることもできるので、捜査情報の入手に役立つというメリットもあると考えて罪悪感を解消していた。
 被告人は、2000年ころには、覚せい剤密売をしていた他の捜査協力者2名にも同様の話を持ちかけ、それ以後、捜査協力者計3名と共に覚せい剤密売をするようになった。
 そして、被告人は、覚せい剤を保管するため、知人名義でマンションを借りるなどして頻繁に転居し、転居先では、他人が容易に入れないように、その玄関ドアの鍵を新たなものに交換するなどして、覚せい剤を保管していることが露見しないよう万全を期していた。
 (3)被告人は、この捜査協力者複数名と共に少なくとも1か月または2、3か月に1回、覚せい剤数百グラムないし1キロ・グラムを仕入れて自宅居室等に保管し、1キロ・グラム当たり約百五十万円の利益分配を得ていた。被告人が得ていた利益の合計は2000年4月以降分だけでも4千数百万円に及んだ。
 被告人は、この利益により、自己の生活費一切を賄うとともに、腕時計等の装飾品やバイク等を購入し、ローン購入したマンションの分割代金を支払い、愛人に対し事業資金を援助するなどし、警察官としての給与はすべて妻に渡していた。
 (4)被告人は、2001年暮れころ、覚せい剤の在庫が切れて密売できなくなったことがあり、それ以後、密売人に渡す覚せい剤が途切れないようにするため、予備の覚せい剤を確保しておくようになった。
 被告人は、予備の覚せい剤2袋合計92.92グラムをマンションに隠匿保管していたところ、今年7月23日、同室の捜索を受け、同覚せい剤を発見・押収された。
 (5)被告人は、1999年ころ以降、覚せい剤の密売に関与するだけでなく、自らも覚せい剤を注射または気化吸引の方法で使用していた。被告人は、今年7月2日ころ、覚せい剤を自己使用し、その使い残りの覚せい剤約0.447グラムをマンションに隠匿保管していたところ、同月18日、同室の捜索を受け、同覚せい剤を発見・押収された。
 2 拳銃所持事件について
 (1)被告人は、道警本部防犯部保安課銃器対策室に配属されたことを契機として、拳銃に興昧を抱くようになり、多種多様な拳銃を身近に保管してゆっくり鑑賞したいと思うようになった。
 (2)被告人は、98年ころ、捜査協カ者を通じてロシア人船員が拳銃の売却を希望している旨の情報を得た際、その拳銃を入手して保有したいとの思いを抑えきれなくなり、これをひそかに購入して、しばし保有して鑑賞したうえ、捜査協カ者を通じて売却し、数十万円の利益を得た。被告人は、それ以降今年初めころまでの間に、鑑賞と小遺い稼ぎの目的から拳銃約10丁をロシア人船員から入手し、これを暴力団関係者に密売して100万円弱の利益を得ていた。
 (3)被告人は、今年初めころ、捜査協力者を通じてロシア人船員から、本件自動装てん式拳銃1丁を代金20万円で入手した。被告人は、同拳銃が国内に出回っていない珍しい拳銃であったことから気に入り、手放さず所持しておこうと、マンション内において隠匿所持していたところ、同年7月18日の捜索により発見・押収された。



 

平成十四年十一月八日(金曜)晴

 当方、預金もさほど無く、まして株などは持たぬ身なれども、近頃の銀行株の値下がり気にかけおりしところ、北海道銀行は今日、来年三月期決算で三百六十七億円の赤字と発表。政府所有の優先株も含め無配とすることを決定せり。不良債権処理及び保有株式含み損圧縮のための減損処理による赤字転落なれば、心配することも無し。とは言え、経営陣は更なる企業努力を惜しむことなかれ。藤田恒郎頭取、責任を取りて来年六月に退任を表明したり。

 日本時間六日夜までに開票がほぼ終了したる米中間選挙にて共和党、上下両院で過半数を制す。ブッシュ路線信任により、イラクに対しこれまで以上の強硬なる政策を打ち出す可能性大なり。イラク攻撃準備に拍車がかかることを懸念す。戦は根本的解決をもたらさず、過去の戦の上塗りを繰り返しおるに過ぎぬ。正義の名の下に人を殺傷するは正義にあらず、許されざる行為なり。戦をもってしか解決の道なしとせば、人知無しに等し。人知無かりせばこの星にすむ棲むこと能わず。

 四日、公職選挙法違反(公務員の地位利用、事前運動)容疑にて、綿貫・釧路市長ついに逮捕さる。市町村合併に絡みて他町の町長選に介入したるは、釧路市の驕りなり。釧路地域六市町村の広域合併をば協議中なれど、綿貫市長の狙いは「釧釧合併」優先に在りしか。市内中心街の空洞化に反して、釧路町への大規模商業施設の進出目覚しく、編入・合併を画策したくなるも無理からぬところか。

 先月十五日に発生したる新十津川殺人事件で、逮捕、送検されおりた被害者の近所に住む主婦が六日、処分保留のまま釈放さる。札幌地検・中村明次席検事は「起訴するだけの証拠を集められなかった。さらに捜査を継続して事件の解決を図りたい」との談話を発す。
 主婦は道警の調べに対し容疑を認めるも、裁判官の勾留質問では否認し、地検の調べでは黙秘したる由。弁護人は主婦のアリバイを主張、自白強要による冤罪なりと捜査当局を批判し来る。犯人と断定するに足る物証なくば立件は不可能。これまでの冤罪事件は全て自白偏重の捜査方法が招きたるものなれば、物証主義重視の今回決定は正し。

 「そんな、馬鹿な… 鹿と間違え?馬3頭を撃つ」
                 (02.11.7 朝日新聞)
 日高支庁三石町の牧場で6日、放牧中のサうブレッド3頭が、シカ猟のハンターにイフル銃で撃たれ、2頭が死んだ。残る1頭も歩行できない状態で、安楽死処分となったという。静内署はハンターが鳥獣保護法や銃刀法に違反した可能性もあるとみて、事情を聴いている。
 サラブレッドが撃たれたのは同町歌苗、「中村畜産」(中村和夫さん経営)の久遠分場。署員が巡回中の同日午前11時ごろ、牧場関係者とハンター3人が話し合っていたという。ハンターは茨城県内の3人で、狩猟免許も持っているが、「シカと間違えた」と話しているという。同署はだれが撃ったのかなどを調べている。
 中村畜産によると、撃たれたのは、いずれもメスの1歳馬。死んだ2頭は昨年、3150万円と1700万円で購入した受胎中の母馬から生まれ、別の1頭は同杜が種付けして生産した。競走馬としてセリにかける予定だったという。
 



 

 

平成十四年十一月三日(日曜)曇

 三十日に初雪を見てよりこの数日、気忙しく過ぎ去りたり。先延ばしにしてきたる寿命の来た暖房機交換の件、寒さ増して猶予ならざる仕儀に立ち至る。家計に余裕なき時なれば、新聞折り込みのチラシなど見て安売りの機種を探す。煙筒取り付けに少々難ありと思いたるも、お手ごろ値段に負けて購入せり。案の定、煙筒取り付けに四苦八苦、札幌にても今冬初の積雪ありし昨日、三日がかりにてようよう完了す。従前使用し来る「たいせつ」ペチカ用石油ストーブは最早入手困難の状況なれば、今回の新機種取り付けは大いに勉強になりたり。今後は如何様なる暖房機も即座に取り付けてみせる、と女房に大言壮語す。されどストーブ一台にて斯様に疲労したるは初めての事なり。やれやれ…の思い。

 今日、綿貫健輔・釧路市長ついに辞職願提出。己は関与せざるも市政混乱の責任を痛感しての辞任と言うも、親分示唆せずしては子分動かず。早晩、司直の事情聴取、悪くせば逮捕も免れ得ず。いい大人が、何故に愚行に走るか。権力を手中にして驕るは小人なり。見渡せば、この国の政治屋連、皆小人ばかりに見えきたる。…考えるだに…。思考停止す。

 プロ野球日本シリーズ。三十日、原巨人4連勝にて西武を一蹴、優勝す。今少し両者の戦いを見たしと思うは我儘か。翌日からの優勝協賛セール、どの店も人出多しと報じらる。

 一日、秋の褒章で浅丘ルリ子(本名・浅井信子)紫綬褒章受章す。石坂との別れの後も切磋琢磨、苦悩に耐えて精進したるは見事。一ファンとして慶賀惜しまず。「淡々と、まじめにこの仕事をしてきたのが認められたのかな」との談話、清々し。然れども、もし日活アイドルスターのまま家庭に入らば平凡なれど幸せだったであろうことを思う。彼女を変えた一作はどの作品だったのか…。

 二十九日に再開されたる日朝国交正常化交渉。北朝鮮側「拉致、解決済み」の姿勢崩さず、家族帰国の当方要求を拒否す。更に、日本側が開発計画の即時撤廃を求めた核開発につきても、米国との間で話し合うとて、日本を相手にせなんだ。「たかが日本、相手不足」と言うことか。馬鹿ばかし。志村けん氏には失礼ながら、北朝のお偉方のどの顔を見ても、白塗りの馬鹿殿以下。彼らの言動は、思い上がりの虚勢としか見えぬ。斯様な輩が国を動かしおるは笑止千万、飢餓に苦しむと伝えられる無辜の民の苦衷を思う。