北極亭日乗


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平成十四年十二月

平成十四年大晦日(火曜)晴

 今年もまた最後の一日とは相成りぬ。老いを重ぬるにつれ時の流れ速し。ぐうたらに過ごし来たれば我が身に回顧すべき事どもなく、平々凡々平穏無事の一年なりしと申すべきか。何事もなかりしが一番のこととて、良き年の終わりを迎えたるを喜びたし。月日は百代の過客にして…を思えば、生々流転、人の生き死にに心悩ますも煩わしければ、知らぬ間に朽ち果てるが最上。新しき年もまた平々凡々、流るる時に身を任せ、あるがままに生きるほかなし。

 朝より昨日来の大掃除の残りをば片付くるも、我が机の上一向に片付かず。旧年の名残留め置くも一興と、大乱雑のまま捨て置きたり。
 お供え飾り終え、早々に銭湯へ向かふ。午後一時の一番風呂なれば、常連一人と見知らぬ客数人のほか姿見えず、のんびり湯に浸かりサウナにて汗を流す。恒例になりし年末世事談議も、いつもの面々顔見せずして聞けずじまいに終わりたり。二時半過ぎ、番台の若奥さんに「良いお年を…」の挨拶済ませ、帰宅せり。

 日乗を認めたる後、五時頃より家族一同にて年取りの膳を囲む予定なり。昨日今日と穏やかなる日和にてあれば、三が日も良き天気に恵まるることを祈りたし。

 我が身には平穏無事の一年なりしも、世情は騒然としたる年。以下に今年の主なるニュースをば掲げおく。

     ◆2002年北海道二十大ニュース◆
   1 鈴木宗男衆院議員を逮捕
   2 サッカーW杯・札幌ドームで
   3 エア.ドゥ破たん
   4 太平洋炭礦が閉山
   5 日本ハムの札幌移転決定
   6 道内の完全失業率、史上最悪に
   7 釧路市長逮捕
   8 コンサドーレ、J1残留ならず
   9 輸入肉偽装騒動
   10 冬季五輪、道産子活躍
   11 雪印食品、解散を決議
   12 警部が覚せい剤使用
   13 国内4頭目のBSE感染牛見つかる
   14 サロマ湖で釣り船転覆
   15 稚内の繁華街で大火
   16 DPI世界会議札幌大会
   17 城丸君事件控訴審で被告に無罪
   18 桂信雄・札幌市長が引退表明
   19 サッポロビール、札幌から工場撤退
   20 バス事故相次ぐ
                (読売道支社募集集計結果から)
     ◆2002年日本十大ニュース◆
   1 ノーベル物理学賞に小柴昌俊さん、化学賞には田中耕一さん
   2 史上初の日朝首脳会談、金総書記「拉致」認め、被告者5人帰国
   3 サッカ−W杯、初の日韓共催で日本ベスト16
   4 巨人が日本一、松井秀喜選手大リーグヘ
   5 鈴木宗男衆院議員を斡旋収賄容疑で逮捕
   6 牛肉「偽装」事件相次ぐ
   7 高円宮さま、ご逝去
   8 秘書給与流用疑惑で辻元清美、田中真紀子両衆院議員が辞職
   9 日本総領事館内で中国武装警察が亡命者連行
   10 小泉首相が田中真紀子外相を更迭
               (読売東京本社募集集計結果から)



平成十四年十二月二十六日(木曜)晴

 今朝、旭川市江丹別にて氷点下30.5度、幌加内にて同28.9度を記録せり。札幌も寒さ厳しく外へ出たくはなけれど、昨夜来の雪かなり積もりたれば、厚着して除雪す。このところ気忙しきばかりにて物事手につかず、賀状書きも遅々としてはかどらず。為さねばならぬ事山積しおるも、解決の手立てなし。慌てず焦らず一つずつ処理するほかなしと思えど、なかなかに心定まらず、難儀な年の瀬よと呻吟するばかりなり。

 昨二十五日、カブトデコムへの巨額融資をめぐり、整理回収機構が山内宏元頭取ら元役員八人に対し総額五十億円の損害賠償を求めたる訴訟で、札幌地裁は元役員八人に原告の請求通り五十億円の支払いを命ずる判決を言い渡したり。誰が見ても当然の判決と思わるるも、元役員の面々なぜか合点がいかぬとて控訴するらし。その融資の仕方には一片の合理性も見出しえず、注意義務違反は歴然なり。道経済を支え来る銀行を潰し、社会不安を引き起こしたる罪軽からず、その償いを求めるは至極当然。元役員はおのれら経営陣の責任を認め、潔く罪を償うべし。



   

平成十四年十二月十三日(金曜)晴

 未明から本格的に降り始めたる雪、午前九時現在で十一センチほど積もりて、ビル街や大通も真っ白に覆われたり。我が家の玄関前も積もりたるにより除雪す。思いのほか量多く二時間弱を要したり。足腰きしみて痛し。今冬も後幾日除雪せねばならぬかを思えば気重し。

 札幌市の冬の風物詩「ササラ電車」が今早朝、この冬初めて出動したり。例年十一月中旬に初出動するも、今年は降雪少なく、過去十五年間で最も出動が遅かりしとぞ。

 九八年夏に和歌山市で起きたるカレー毒物混入事件の林真須美被告に対し昨十二日、和歌山地裁は死刑の判決を下せり。殺意・混入は認定するも動機解明は為されずに終わりたり。
 完全黙秘の林被告に対し、検察側は千六百六十九点の状況証拠を提出、裁判官は提出されたる状況証拠を高く評価し千百五十四点を採用。事実認定の高いハードルを維持したると言ふ。先の城丸君事件にも見られる如く、黙秘・否認事件の増加傾向の中で、多くの状況証拠を十二分に吟味検討したる結果の判決には重きものあり。罪を犯しても否認・黙秘を続ければ無罪を勝ち取れる、の風潮は断固否定されねばならぬ。



 

平成十四年十二月七日(土曜)晴

 今日七日、「北の国から」への出演がきっかけで結ばれたる俳優・吉岡秀隆(32)と内田有紀(27)の両人が、ドラマの舞台・富良野市内のホテルで挙式せり。披露宴には脚本執筆の倉本聰や共演者の田中邦衛、竹下景子、いしだあゆみら約五十人が出席、両人を祝福した旨報じらる。

 東京から富良野に移り住んだる倉本が地元を舞台に書いたドラマとて、大いなる期待を抱きフジテレビ系UHBの「北の国から」第一回を観たるは一九八一年十月九日のことなり。さすが倉本と感服したるを覚えおる。翌日、誰かれなく感想を訊くも観たる者少なく、面白しと言う者なし。解せなきことと思いつつ二、三週経つうちに、「ありゃーいけるねぇー」の声。それから後はかくの如く、二十二年間に「スペシャル」前後編合わせ十一本の大作とはなれり。今年九月六、七日の「2002遺言」で完結せるは惜しきことなり。
 「遺言」につきては、内容的に良しとせざるも、長丁場での大団円なればやむなきことか。生存せる登場人物それぞれの生き様に決着をつけねばならぬ最終回、ここまでまとめたる力量は並にはあらず。さすが倉本と、拍手を送る。
 五郎、純、蛍、草太、中畑夫婦……その他大勢の登場人物を、この先も忘れはしまい。

 挙式は富良野プリンスホテルにて催されたが、ホテルの冬季オーブンは今月二十日なるも、二人のために特別に開館した由。ここにも「北の国から」への地元の思い入れの深さが伝わり来る。
 挙式前の記者会見。吉岡は「有紀さんを幸せにすることが、番組を愛してくれた人への恩返しだと思う」と語り、内田は「番組を通じて彼と知り合うことができた」と語る。純よ、結よ、黒板五郎は遺言に「なにも遺すものはない」と書き始めたが、かくも偉大なるもの「愛」を遺したのだ。常しえに幸せなるを祈る。



 

平成十四年十二月五日(木曜)曇

 呑み歩いて終わりし十一月。今年も月極まりて、残り少なし。一年の帳尻合わせ如何にせんと慌てふためけど、既に為す術なしか。何を思い煩うや、行雲流水人もまた同じ。ケセラセラで過ごすのほかなし。されど家人、周囲からの「投げ遣り」の謗り免れず、グウタラ男の烙印捺さるるも覚悟せねばならず。ほんに、師走とは厄介な月なり。

 旭川市長選を巡る選挙違反事件で、水道事業管理者の逮捕に続き、中村忠雄助役にも逮捕状出る。公務員たるもの身の処し方には重々心すべきを怠りたるは情けなし。宮仕えの身なれば上役に頼まれれば断り難く、頼む上役に大いなる罪を認めたし。かつて道庁マシンとて組織ぐるみの選挙運動を為せしに罰せられなんだ故の悪しき慣行が、未だに残りおる証か。嘆かわし。
 同例、綿貫健輔・釧路前市長と元助役起訴さる。
  七日追記 六日夜、中村助役公選法違反容疑(公務員の地位利用、事前運動)に       て逮捕さる。

 国の特別天然記念物タンチョウの生息状況一斉調査が五日午前、道内約三百か所で行わる。調査は、生息数を把握して保護管理の資料にするため、一九五二年より環境庁(現・環境省)の委託を受けた道が、釧路、根室、十勝、網走、日高、胆振の六地方で実施している由。生息地に近い小、中学校の児童、生徒を含む約千人のボランティアが協力、午前九時に調査対象地で一斉に数えたと言ふ。昨年十二月の調査では、六百四十八羽が確認されおる。年々増加の傾向にあると聞くが、今年は何羽にあいなるか。

 ネパール東部に位置せるヒマラヤの未踏峰テンギ・ラギ・タウ(6943メートル)に挑みおりた北海道山岳運盟登山隊(江崎幸一隊長ら四人)の江崎隊長(50)=江別市=と高橋留智亜副隊長(37)=札幌市=が、四日午前十一時半(日本時聞同日午後二時四十五分)、無酸素での登頂に成功した旨、小樽市の同連盟本部に連絡が入りたりとぞ。同連盟によれば、同隊は十月二十日日本を出発、十一月四日標高4800メートル地点にべースキヤンプ設置、三回目の挑戦で成功したると言ふ。猿も木から落つるの譬えあれば、心して下山されたし。全隊員の無事帰還を願ふ。