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縊鬼の囀感想

これの前に読んだのが蜃だから若干甘めかもしれないけど、やっとミステリーとしてそれなりに面白く、登場人物のイメージも大きく乖離してない作品に巡り会えた。
ただ、若干総一郎さんへの思い入れが強すぎかな(笑)。
総一郎さんがやり手に実業家なのは間違いないから切れ者なんだろうけど、原作での榎さん口ぶりからすると、もう少し鷹揚なところもある感じがするんだけど。
あと、若干表現が軽すぎるところがある。
「引く」というのを今のようにドン引きという使われ方するような意味に使うのはわりと最近だと思うんだよね。もちろん元々その意味として使ってないというわけでもないんだろうけど、私の学生時代は仲間内で使ってた覚えがない。
「~かも」で終わる文とか、「○○呼び」という言い方、相手の言ったことを訂正するときの「○○な」という言い方。全部現代的で昭和10年代、20年代の匂いがしないんだよね。
でもその程度で、榎さんに何が見えているかという理解や、見たいときに都合よく見たい記憶が見えるわけじゃないという設定もきちんと踏まえられていて良かったと思う。
 あと、関くんたちがいた旧制高校、一高ということになってるけど、そうとは限らないんだよね。もしそうなら3人の中で帝大に行ってるのが榎さんだけらしいのが不自然なんだ。もちろん関くんは病気のために勉強がままならず、中禅寺は別の勉強のためにあえて帝大に行かずということもなくはないけど。でもそれだったら中禅寺は最初から一高に行かなくても良かったと思うのだけど。まあこの辺は原作の記述も曖昧なところがあってよく分からない。
 細かいところであれこれあるけれど、すでに残りの一冊も読んでしまっているので、薔薇十字叢書の中でこれが一番違和感は少なかったし、ミステリーとして読めた。

蜃の楼感想

褒めるとこが一個もないので、好きな人は不愉快になるだけだから読まないでくださいね。

これは今まで読んだ中で最低。
最初はどういうレトリックなんだろうと思ってわくわくしながら読んでいたのに、霧が出てきた辺りから、これはそういうものじゃなくて本当に不思議の世界なんだということになって一気に冷めた。
そうなると、作者が単に東京23区発展史に関する自分の知識を披瀝したいだけに感じられてきて読むのが苦痛になり、1日数ページにペースダウン。
追いかけていた謎の男が自分だったって、ゲド戦記の「影との戦い」かよって突っ込んでみたけど、それは違った。
違ったけどさらに悪い展開。他人と自分の記憶がごっちゃになる話はもううんざりだ。
その上結局関口くんの妄想って! 
だったらこんなに長々と作品のほとんどを費やして書く必要ある?!
夢オチと一緒なんですけど!
第一関口くんがこんな妄想するかね? 千歩譲って高層ビル群はいいとしても、何年にどういう法律ができるとか、そういうこと考えるタイプの人じゃないでしょうに。
まあそりゃイメージの相違と言われればそれまでだけど。
だとしてももうちょっと面白くしてほしい。単に現実の歴史を並べてるだけじゃないか。妄想というなら、変にあちこち時代を飛んだりしないで、年代順に追っていけば良かったんだ。そして途中から私たちが知っている現実の歴史とずれてきて、なんだこれは? と思わせてほしかった。
『図書館戦争』で昭和から平成にならず、元号が正化になって、そこから別の歴史が流れ出しているように。あるいは現実と似ているけれど少しずつ違う収まりの悪さをずっと感じさせ続けるとか。ちゃんと「創作」をしてほしい。それがないからただの知識の披瀝に感じてしまう。
そんで桜木が妄想と認めたから落ちたってなんだそりゃ。
その前に桜木は自分を関口と思い込んでいた状態から覚醒してるし。妄想じゃなくて別のものと思い込んで執着してたならともかく、そういう記述も特にないし。多少あったのかもしれないけど延々キャノン機関の話してたんじゃなかったか?
で、あげくに、巨大な蛤があったって、その締めはなんじゃそりゃ。
それもう百鬼夜行シリーズの世界観じゃないじゃん。
と、申し訳ないながら不満しか残らない一品でした。

古書肆京極堂内聞感想

読んだのは少し前なのだけど。
特にどうという印象もなく。いかにも同人誌的という感じ。
あえて石榴の目を通したという形にするならもうちょっと何か、いかにも猫っぽい人間とは違う視点とか思考回路があったほうが面白い気はするけど、じゃあどこがどうと言われたら分からないので同人誌と思えば可もなく不可もなく。
意外とこれに出てきた榎さんが一番榎さんっぽいかも、とは思った。

放置した結果

前の日記の内容をこっちに移して一本化しようとしたら、逆にこっちは2013年以降でないと日付設定ができないのか。
というわけで、結局Diaryを残したままにします。

風蜘蛛の棘感想

最初のほうで共時性なんて出てきたので、げ、またかと思って思わずこのシリーズにおける作者の過去作品を確認してしまった。
桟敷わらしの人だったのね(^^;)
浮浪児を引き取って薬飲ませて、というのは前作と同じだけど、こちらのほうが話のまとまりはいいような感じがした。
タイトルはもちろん、車いすやラストシーンなども絡新婦のモチーフなんだけど、二重人格だ何だという辺りや、東京ローズがジョンにすがって「助けてください」と言う辺りは姑獲鳥オマージュなのかな。
構造が同じ二つの屋敷は狂骨を思いおこさせる。細かいとこ見ればもっとたくさんあるのかも。
木星号のくだりはちょっと無理やりだったかな。読み終わって結局どういうつながりだったんだっけ?ってなってるのでもう一度読み直してみないと。
八原院郁の、相手を操る話し方についてはもうちょっと詳述してほしかったかな。ページ数の関係もあったのかもしれないけど。
この長さにしては誰視点かが定まらなさすぎという感じもあったけど、今まで読んだ中では登場人物に対する違和感がほぼなく読めました。

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