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ジュリエット・ゲェム感想

これは神社姫と打って変わってストレスフリーというか、その分軽いのだけれど。
タイトルに妖怪や化け物(この辺の使い方については京極先生の『妖怪の理妖怪の檻』の中で考察されているような厳密なものではありません)を付けてないのがいいですね。
敦ちゃんの少女時代にどろどろした事件を持ち込まなかったのは正解かと。
かといって『百鬼夜行』隠と陽みたいなのも難しいだろうし。
いわば普通の少女小説なので物足りないと感じる向きもあるかもしれないけど、私は神社姫を読んだ後だったから、口の中でほの甘くさらさらとほどける可愛らしい和三盆の干菓子みたいでほっとしました。
こっくりさんの件はもうちょっと深掘りしてほしかったような気もするけど。

登場人物のすべてがあの戦争を生き抜いたとするのはご都合主義かもしれないけど、せめて万里さんはあれだけ大騒ぎさせたのだから、若い頃の一時の熱にしないで、戦後その彼と結ばれてほしい。
ひさ実はなかなかいいキャラなので、雑誌記者になった敦ちゃんに情報提供して助けるポジションで、大人になったこの少女たちの話を読んでみたいな。

榎さんの登場はわずかながら違和感もなく、むしろその役割をしっかり果たしていたと思う。

神社姫の森感想

えー、かな~り辛口になるのでこの作者さんのファンの方は読まないでください。
ファンじゃないけどこの作品を読んで面白いと思った方、個人の感想ですので、こいつはセンスも読解力もないなあと思ってスルーしてください。

ゴジラ云々の辺りはすごく面白く読んでました。
戦後も少し進んだ時代背景と、借り物ではなく作者本人の妖怪論みたいなのも見えて、すごいなと。
この時点ではそこまでに読んだ薔薇十字叢書シリーズ中一番ハイレベルで面白いと思ってました。
が、後は目眩坂を転がり落ちるが如くです。

まず榎さんの口調と、そのしゃべる内容に違和感が募るばかり。
榎さんはべつに何でもかんでもいつでも四六時中「!」が文尾に付くしゃべり方をしてるわけじゃないですよ。
読んでるだけでうるさくなってくる。
それに、自分が見えているものを、京極堂がそう言うのだから「記憶なのだろう?」とか言っちゃうのがまるで別人。
あいつはいくら言っても理解しないんだと本編で京極堂は言ってたし、その体質を自覚的にいわば武器として探偵作法に用いているという様子もないのに。

それから共時性云々のくだり。
くだりというか、なんかもう半分以上そんなこと言ってた印象。
同じ語彙と内容の繰り返しが延々続いてたように感じられた。
言霊とか呪という言葉の使い方も何か違わない? 少なくとも京極先生とは違ってないかな?
どちらもただの言葉遊びにしか感じられなかったんだけど。
こじつけにしか思えないというか。

そのうち読むのが苦痛になってきました。
特に憑物落とし? の場面では、これ単に作者が自分の知識を全部披瀝したいだけじゃないの? と感じてしまって。
京極先生の本編のうんちくだって、本当にどこまで必要なのかどうか分からないし内容を全部理解できるかと言ったらできてないんだけど、それでも初めて姑獲鳥を読んだときからそうなんだけど、なぜか飽きずに読んじゃうんだよね。
その辺はもう力量の違いが歴然。
ただの知識の羅列に見えてしまったのよね。
共時性だのなんだのって、漫画の『鬼灯の冷徹』23巻「ぐるっと回ってホルスの目」で言ってることと同じな気がするんだけど。神様のニアミスってやつね。

榎さんに関してもう1点。これだけは受け入れられない。
あのね、榎さんに視えるのは視覚的記憶だけ。脳内妄想は見えない。
それを、妄想も実際に見た記憶かのように記憶してしまう「久保」の特殊能力なんて反則。
なぜ榎さんにそれが視えるのかという京極堂の説明には一応筋は通っているけど、こっちは説得力と根拠がない。
そんなルール違反の後出しジャンケン駄目。

とにかく詰め込みすぎ。
姑獲鳥から邪魅まで全部の要素を詰め込みたかったんだろうけど、無理だと思うの。
最後のほう、若干『書楼弔堂』風味も入ってたしね。
せめて実在の人物を登場させるのは谷崎か大水木かどちらかで良かった。

ところで今泉くんて誰がモデルなんだろ。戦国武将の女体化って、私その手の話は好きじゃないから分からないわ。
そこだけちょっと気にはなるかな。

ヴァルプルギスの火祭感想

実は一度書いてけしてしまってちょっとへこんでる。
大した文章でもなかったけどもさ。

今のところこれが一番面白かったかな。
直接彼らを描くのではなく孫世代の話にしたのが良かったと思う。違和感少なくて。

10年ほど前に出た『妖怪変化 京極堂トリビュート』という本もシェアワールドの短編集だったんだけど、これも失礼ながら違和感ありまくりの作品ばかりで、その中で唯一、これはいいなと思ったのは、堂島と出会ってしまった祖父が残した手紙を読む孫という設定の話だった。作者は西尾維新さん。

ヴァルプルギスはちょっと金田一少年っぽくもあったけど、閉鎖的な場所で育った人間の認識の錯誤というのが、単に登場人物の名前として出すだけではなく、正しく陰摩羅鬼へのオマージュになっていると思いました。
これならこれ自体シリーズになっても読むかな、と思えました。

ただ一つ、晩年榎さんは財閥の総帥になってるはずなので、そこがちょっと引っかかったかな。
まあ、探偵も続けてたかもしれないし、かなり前の設定だから京極先生の中で設定変わってるかもしれないけど。
(参照『小説こちら葛飾区亀有公園前派出所』内「ぬらりひょんの褌」-京極夏彦)

桟敷童の誕

最初わりと面白そうと思ったんだけど
なんか謎解きがイマイチ薄いというか、すでに記憶が曖昧。
榎さんが何度もあちこち映画館を歩いて回ってた辺りの描写がちょっと中だるみだなと思ったのと、木場修が榎さんを「礼二郎」と呼ばないところに微妙に違和感があった。

でもあの母息子のキャラクターはなかなかいいね。
本編に出てきてもおかしくない気がする。

薔薇十字叢書を読み始めたので

長らく放置してたんですが、ペースは遅いながらも京極先生の作品を読むたび、簡単な感想をこちらにでも残しておこうかと思いつつ、ずっとそのままになってました。
感想を書いてたDiaryのほうが、しばらくぶりに使おうと思ったら2012年までしか日付の設定ができなかったのでこちらにお引っ越し。

感想と言っても本当に一言ずつ。
ずっと前に読んだのは特に。

今回は薔薇十字叢書から。
最初に読んだのは「天邪鬼の輩」。

うん、ライトノベル!

ちょっと同人誌っぽいね。
でも現在のところ、かえってこれくらい軽いほうが傷が浅い(超失礼)かなと思いましたね。
若い頃の話というのもあって、違和感少ないほうかも。