ロング・ラブレター〜漂流教室〜

◇1月9日(水)よりスタート フジテレビ 21:00〜21:54 毎週水曜日
データ S T A F C A S T H   P - -
あらすじ  1話   2話  3話  4話 5話 6話  7話  8話  9話  10話  11話
想い出の名シーン  1話  2話  3話  4話  5話  6話  7話  8話  9話  10話  11話
その他  1話
 
 《TVオンエア−チェック》
 想い出の名シーン 第9話
セリフチェック:アリス
(NUAN&yuma) 
学校の周辺を調査するために出かけていた浅海達が帰路についていた。
砂漠
 
大友    浅海。浅海ってさ。
浅海    ん?
大友    ちゃんと三崎さんとつきあってんの?

浅海    何だよ、こんな時に。ま、別につきあってないけど好きだよ。
       でもやっぱ今って、それどころじゃないじゃん。
       毎日一緒にいるし。いいよそれで。

大友    ふ〜ん、それだけでいいんだ。
浅海    それ以上俺に何しろっていうんだよ。
       何、お前ら俺をけしかけてるわけ。

大友    かもね。じゃなかったら 俺けしかけてもらってもいいんだけど。
高松    俺、後悔したけどな〜。
       彼女とさ、いろいろしたい事とかあったんだけど。まあいつでも出来るから
       いいやとか思って。な〜んもしなかったからさ。

高松    俺、年上全然だめなんだよ。
大友    俺 上でも下でも全然余裕だよ。
       でもさ、あの人ちょっと強すぎない?
高松    確かに。
      
浅海ナレーション  俺達がここに来て、14日が経つ。
            〜1月7日・結花や生徒達が校門をくぐる回想シーン〜
             14日前の、2002年1月7日。


             浅海結花: あの!(2人同時に校門の所で振りかえったシーン)

             3学期始業式の前日、午前11時15分に

             結花: あの日の夜 かけたの携帯。


浅海ナレーション  突然、地面が大きく揺れた。
             そして、学校の周りの何もかもが消えて無くなり、
             学校は、俺達は、砂漠の真ん中にほっぽり出された。



教室


柳瀬     「核が落ちたんだよ。原爆や水爆が落ちて、みんな一瞬で。」


浅海ナレーション  いや、そうではない。多分、消えたのは俺達のほうなんだ。
             俺達は2002年の横浜から消えて無くなり、人類が滅亡する
             寸前の未来にやって来た。
             そうして、それぞれが何の準備も、別れの言葉ひとつも持たないまま、 
             今までいた時間から無残に引き裂かれ・・・



          (公園で結花を待つ回想シーンなどが流れる)
          藤沢:待ってるよ。今日昼の一時ころ。俺、昼のまかないの時間ぬけれっから。


          (漂流してしまったばかりのあの日、約束の時間に行けなくなり砂漠をさまよっ
          ていた結花の回想シーン)
          結花:どこにいるのよーーー!


浅海ナレーション  もう二度と大事な人に 会う事も、言葉を送る事も出来ないのかもしれない。


          (漂流した生徒達が、自分の仕事を一人一人頑張っているシーンが流れる)


             でも俺達は、彼らや、日本や、そして地球が、今でもきっと平和に続いて
             いるんだと信じている。そして、どうにか戻る方法があるはずだと。

渡り廊下・菜園の前


   帰ってきた浅海に声をかける結花。


結花     どうだった?
浅海     横須賀くらいまで歩いてみたんだけど、やっぱ海は
        見つかんなかった。

大友     なんかね、船っぽいものが乗り上げてたよ。
結花     そうか〜。
浅海     この砂漠、世界的に広がってる可能性もあるよ。
結花     そうだね。
大友     (フッと笑う)
結花     何?
高松     (浅海を軽くたたく)
大友     (口笛を吹く)
結花     何?
浅海     何だよ。こいつおかしいよ。
結花     え? 何? おかしいよね。


ホテル・ナビオス横浜

ホテル内。取材している中沢と、重雄(結花の父)。

中沢     ここですか?
重雄     ここです。 
        なんか壁がちょっとへこんじゃってますもんね。
重雄     そうですかね。
        完璧だと思ったのに。
        (壁の写真を撮る中沢に向かって)止めろ!
        止めてください。ホテルにばれるとまずい。
中沢     (カメラをバックにしまいながら)はあ・・。
        どうして、こんな所に埋めようなんて思ったんですか?
重雄     ここから声が聞こえたからです。
中沢     じゃあ、この中にお嬢さんがいるって事ですか?
重雄     いや、いないでしょう。でも、取りにきたんじゃないかと思うんです。
中沢     いつですか。
重雄     未来です。
中沢     じゃあ、その栓抜きは もうこの中に無いって事ですか?
重雄     いや、あるでしょう。だからばれるとまずい。
        取りに来るのは未来なんです。だからそれまで絶対ここはこのままに
        しておきたいんです。私たちは取りに来るのを見ることは出来ないし、
        結花に会う事も出来ないけど、でもずっと先の未来で、結花は受け取るんだと
        思うんです。
中沢     そうですか。その声は今は聞こえないんですか?
重雄     聞こえません。だから、今は元気なんじゃないのかと・・・。


(重雄が栓抜きを埋めるシーンと 若原に襲われた結花が 壁から栓抜きを取り出して
振り下ろすシーンが流れる)


教室


  浅海と結花、生徒達が ”漂流”の現象について、推測している。


浅海     時空を超えるっていうと大げさに聞こえるけど、これ自体は
        普通のことなんだよ。

結花     普通?
浅海     ん。たとえば、何かを伝える時、まあ直接会ったり、電話一本かけて
        話したりする言葉は時空を超えてないけど、ポストに投函した手紙
        だったりさ、クリスマスに渡そうと思ってたプレゼント、ロッカーに入れて、
        それを、その後誰かが受け取ったとしたら そのプレゼントもそん時の
        彼女も気持ちも、時空を超えたことになるじゃん。

結花     なんか、ロマンチックだね。
浅海     (頷く)
結花     100%届くかどうかわかんないけど、その時間と空間の隔たりの分、
        届いた時は、気持ちがたくさん伝わる気がする。

浅海     俺達だってこの未来に一瞬で来ちゃった・・・時空を超えて。
大友     だから言ったろ。
        俺らは今、静岡で あいつらはまだ新横浜。
高松     あ〜、あいつら、まだ新横浜かよ。おせ〜よ。
柳瀬     追いつくことはないんだよ。時間は並行移動だから。
結花     あの頃から今までの間に 何が起こったんだろ。
        なんかすごく大変な事が起こって、そのせいでここがこんなふうになったんでしょ?

高松     戦争とか。
大友     火山の爆発とか。
柳瀬     自然破壊による異常気象とか。
        恐竜の時と同じように、人類が滅びたとか?
浅海     まあ何にせよ、資源も使い果たされて、ここは人間が生きて行く世界じゃ
        なくなったんだな。

高松     じゃ、残った人たちって、やっぱ苦しんで死んで行ったのかな?
        みんな、飢えたり、病気になったり、食いもん奪い合ったり、
        殺しあったりして。
大友     まあ、俺らも変わんないけどね。
        ただ、人数が少ない分、シンプルなんだけど。
高松     でも早く戻んねえと。
        早く戻ってさ、みんなにこのまま生きてたら危険だって事さ
        何とかして伝えないと。
        なあ浅海。もいっかい(もう1回)時空超えらんねえの。どうにか出来ねえかよ。


図書館


   調べモノをしている浅海と結花。


浅海     逆はありえない。過去から未来へ時は流れるでしょう。
        この時間の方向って、過去・現在・未来って一方通行だからさ 
        俺達はどうあがいても過去に戻る事はできないんだよね。
        ・・・でも考えてみるよ。俺に出来ることそれくらいしかないし・・・。
        実は 大学でその手の勉強してたのね。
        で〜研究続けたかったんだけど、まあ金もなかったし、そこまで
        優秀でもなかったし。

結花     それで先生になったんだ。
浅海     そっ。でもたいして教師らしい事出来ねえままだったな。
        なんか俺、なんもかんも中途半端なのかも。

結花     中途半端でもいいじゃん。
        私は、完璧な科学者じゃなくて、完璧な教師でもなくて、浅海君が
        ここにいてくれてよかった。
        みんなもそう思ってると思う。
        ごめん、10分だけ寝させて、すこし疲れた。

浅海     でも俺・・・生徒守りきる自信ない。
        池垣も助けらんなかった。
        俺、教師とか言って、あいつらとたいして何も変わんねえよ。
        ・・・あいつらのそばにいてやる事しか出来ない。
        三崎さんみたいに 強くない。

結花     私は強くなんかない。
        ・・・今日の夜デートしようか?見せたいものあるんだ。


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〜西門〜
高木美雪の髪をカットしtている結花。
大友が 美雪の落としたものを拾う。
それは 川和ハツ子の割れた付け爪だった。
大友が結花に、自分の髪もカットしてくれとせがむが複雑な髪型だからダメと断られる。


大友   痛!(高松を殴った時に出来た手の甲の傷を痛がる)
結花   どうした?
大友   人殴るのって 結構痛いよね。 
結花   知ってる。私も経験あるし。
      すごく痛かった。
      手も・・・(胸の辺りを押さえて)この辺も・・・。

大友   それにけんかって、かっこよくもないしね。血とか出るし。
      どっちっつったら かっこ悪いよね。

屋上


(高松とのけんかした時の事を思い出している大友)
回想シーン
  大友    俺はどんな手を使ってでも生き延びてやるからな!
  高松    人殺して生きたって 仕様がねえだろがよ!
         みんなでいっしょに元の世界に帰んだよ!
  大友    無理なんだよ!(そう言って高松を殴る)


大友ナレーション   人を殴ったことなんかなかった。


(本倉高校の2年C組や体育館、町並み、唯(大友)の家のシーンが流れながら)


大友ナレーション   俺は普通の特になんにもない、そのまま生きていれば そのまま
              流れていく日常を・・・。 俺達は 平和な時代に生まれたんだ。
              安全だった・・・安全で退屈。
              すでに何もかも出来上がった後に 変動のない時代。
              生きる実感なんか無くたって生きていける。
              だから意識した事もなかった。
              生きている事に 何かに守られている事に  俺は・・・。


(いつの間にか眠ってしまっていた大友を びっくりして起こす高松)


高松     唯、おい 唯 おい、どうした唯!唯!
大友     なんだよ〜。(眠そうに)
高松     お〜お〜おまえ・・・びっくりさせんなよ〜。おまえ〜。
        あれっ?前髪切ったな?
大友     自分で切った。ちょっとだけど・・・。
        ちっちゃい頃ってさ、よく親に髪切ってもらってなかった?
高松     お前もそう、俺も。
        俺さ〜、一回耳切られてさ、すっげえ〜痛かったよ。
大友     マジで?超痛そう。
(岡津と生徒達がやってくる)
岡津     なにやってんの、二人で。
大友     なんか マジ美恵子に会いてえ〜。
高松     美恵子?
畑(?)    おい、美恵子って 誰だよ。
大友     母ちゃん。
高松     あ〜、俺も幸子に会いてえ〜。
大友     (屋上から砂漠に向かって)美恵子〜。お〜い 美恵子〜。
(さちこ〜、なおこ〜、ひろみ〜ひさえ〜と口々に砂漠に呼びかける高松達)


教室


(結花に 家に帰りたいと弱音を吐く女子生徒達。)

寒川     ちゃんと勉強してた。
        部活も頑張った。
        いじめもしてない。
        ちゃんとしてたのに もうなにもかもなくなっちゃった。
(寒川のやけどの傷が自然治癒したことを引き合いに出して、生徒達を励ます結花)


砂漠


伊勢原の食料を奪い、その食料を取り戻されないようにと砂漠をさ迷い歩く二宮と辰巳。
が、もはや力尽きて倒れる辰巳の食料さえも奪う二宮・・・。そして辰巳の食料も奪い逃げさる。
忍び寄る未知の生物のかげ・・・。


夜の図書室


(学校のアルバムに見入る浅海)

結花     浅海君・・・(浅海、アルバムを閉じる)
        何?もしかして見てた? 私の若かりし頃の写真。
浅海     見たよ。普通に可愛かった。
結花     普通・・・。それ、ほめ言葉?
浅海     いや その栓抜きの生徒いるかなあと思ったんだけど。
結花     卒業してないからいません。
浅海     だよね。さっき気がついた。
結花     (アルバムを見ながら)でも懐かしいなあ。 
        あっ!やっぱいた藤沢。


(写真には 結花と生徒達、そして一人離れて藤沢が写っている)

浅海     これ?
結花     2年の時だったかな。
浅海     ふ〜ん。普通にかっこいいじゃん。
結花     そう。
浅海     もし、今元の世界に帰れたら、こいつに会いに行きたいんでしょ。
        いっしょにかんぴょう巻き食いに。

結花     (頷く)
浅海     ほんとはそれちょっと傷ついたんだよね。 
結花     何で?
浅海     俺は?
結花     は?
浅海     俺ってそん時、用済み?
結花     何言ってるの? 
浅海     うそ、うそ、わかってる。
        三崎さん、ここ来てからず〜っとこいつの事、考えてた。
        いつまでたってもこいつの存在が消えないな。
結花     何それ? 私は守れなかった約束があるから・・・。
浅海     守れなかった約束のせいで、三崎さんが一生こいつの事
        忘れらんないんだったら俺はいっそ、その約束になりてえよ。
結花     ・・・意味わかんない。
浅海     意味わかんない。こいつがうらやましい。
        変だよね。今いっしょにいるのは俺の方なのに。
結花     あのね浅海君。私、藤沢とはそういう風に考えられないの。
浅海     考えてなかっただけじゃん。
        もし、あん時あなたが校門を出て、待ち合わせの場所に行ってたら、
        約束守れてたら、そっから何かが始まったかも知んない。
        恋愛だって、それ以上だって、どうなってたかわかんないよ。
        いや、ありえたよ。全然ありえた。 俺がじゃましたの。
結花     向こうは子供だよ?
浅海     俺とこいつはあんま年変わんねえんすけど。
        子供で悪かったな。
結花     大人で悪かったわね。
浅海     こいつだって、三崎さんに伝えたい言葉があるはずでしょ。
        三崎さんとおんなじ、いやそれ以上にもっと三崎さんのこと、思ってるよ。
        デートの前に一周見回りしてくる。(懐中電灯を持って出て行く)

浅海    
 (暗い廊下を歩きながら) 何言ってるの、俺は。


  アルバムの写真を撮った時の回想シーンが流れる。
  カメラに向かってポーズを取る生徒達から、一人離れている藤沢。
  結花が声をかけるが、藤沢は生徒達に入ろうとしない。
  静かにアルバムを閉じる結花。


すし屋


藤沢    (注文を受けたビールをお客さんに出して)
       すみません、お待たせしました。
客       ありがとう。
       大変だろ、兄さん。ここの親父さん、厳しいから。
客2     そう、もう何人も辞めてったもんな。
客1    (藤沢の手を取って)ああ、若いのに、こんなに手が荒れちゃって。
        どうしてこんなこと続けてんの?辛いでしょう。
客2       もっと楽な仕事だって、あるよ。
藤沢     見ててもらいたい人がいるんです。
客1.2     は?
藤沢     俺が、ちゃんとひとつのことをやり遂げて、
        立派に寿司を握れるようになって、
        そういうとこ見ててもらいたい人がいるんです。
客1      ほう、そうなの。
客2      女か?
客1      惚れてんのか?
客1.2    (茶化したように、二人大声で笑う)ハハハハハ。
藤沢    (真剣な表情を客に向けて)はい。惚れてます。
       (更に自分に言い聞かせるように)
       ・・・惚れてます。大事な人です。
       (右手のぎゅっと固く握る。その拳には、
        渡り廊下の壁を殴って穴を開けた時の傷がいまだに残っている。 )
        一番伝えたかった言葉、まだ伝えてないんです。



教室


裸電球に照らされた教室で、男子生徒たちが就寝する体勢で雑談をしている。

畑     浅海と我猛ちゃん、帰る方法見つけてくれるかな。
大久保  早くこんなことから抜け出したいっすよ。
畑     俺も。上手いもん食いたい。な?
荏田    (頷いて、畑に同調する。)
田代    (その輪からははずれて座り、会話を背中越しに聞いていて)
       そうか?
高松はその反論を聞いて伏せていた顔を上げる。


一方、女子生徒らが寝る教室で、川田と安堂が隣り合って寝ながら。
川田    そう言えば、田代ってさ。
安堂    ん?
川田    ここ来るまで、同じクラスなのにほとんどしゃべったことなかった んだよね。
安堂    うん、誰ともしゃべってなくない?
       存在感なしだったっていうか。


〜以前の教室の風景〜
  みんなが楽しそうに雑談やらふざけあってる中、田代は一人、自分の席に座り、
  パーカーの帽子を被り、下を向いている。


田代ナレーション   僕は今まで生きてきて、特に、特別には世界に必要のな い人
               間だと思ってた。でも、ここだとちゃんと僕がやるべき仕事がある。
              僕の...僕の居場所がある。
              本当にここは嫌な世界なのかな。


〜ここに来てからの田代の姿〜
  図書館で熱心に調べ物をする田代。
  バンダナを口に巻いておどける田代。
  雨が降ってきてはしゃぐ田代。
  自分の居場所を見つけて、どれも生き生きしている田代の姿。


  男子生徒らの教室は裸電球が消される。
  もうすでにみんな横になっているが、田代だけは座っている。


田代    (先程の反論の続きで)
       僕は帰りたくないのかもしれない。
       (その言葉を聞いて高松はつぶっていた目を開けて、田代を見つめる。)


D組の教室


  二宮と辰巳に裏切られ、さんざん殴られたあげく食料の全てを奪われた伊勢原。
  月明かりに照らされ、傷ついた伊勢原が横たわっていた。
  そこへ舞岡がはいってきた。
  舞岡は伊勢原の横に座り、血がついている伊勢原の口元を自分のハンカチでぬぐった。


舞岡    生きててよかった。
       死んだら、私も気分悪いし。

舞岡    あっちの教室、戻ろう。


  貴重な水の入ったコップを渡す。


伊勢原   (そのコップを受け取り、一口飲み)
        舞岡、これ...
   

  そう言って伊勢原は、握っていた片方の手のひらを開く。
  そこには、ずっと握り締めていた一粒のキャンディーが・・・。
        

伊勢原   (涙声で)俺、全部、二宮に取られちゃったから。
        食いもんとか全部。でも、これだけは、お前にあげようと思って 、
        ずっと握ってたから、もう溶けちゃったかも。


  舞岡は、そのキャンディーを伊勢原の手からとり、包みを開け口に入れる。
  せきを切って舞岡の大きな瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。


舞岡     おいしい。・・・おいしいよ。


伊勢原の目にも涙がにじんだ。そしてにこりと微笑んだ。


 
裏庭


  用務員の岡津が、月を眺めていた。そこへ浅海がやってくる。


浅海     なんか、ちょっと冷えて来ましたね。
        寒波が来てるのかもしれないすよ。

岡津     そうだな。きれいだな〜。
        なんだか皮肉なくらいきれいだ。




教室


(結花、大友、西が話しているところへ 浅海が戻ってくる)

西      彼らと言葉は通じなかったけど、何となく何を考えているかは
        わかったの。・・・彼らは絶滅寸前だった。
        女の人が、いなかったからよ。
結花    女の人が?
西       そう、あの集落には10人以上人がいたけど、みんな男で 
        だから子供もいなかった。
浅海    異常気象や環境汚染、それから戦争なんかでケミカル兵器や
        バイオ兵器が使われた場合、遺伝子に傷がついて、女性が生
       まれにくくなる可能性はある。
        後は、ある種の男性ホルモンが自然界に多く存在するようになった場合、
       胎児の生殖器が男性になりやすくなる。
       つまり人類のオス化だ。

結花    (大友に) わかった?
大友    どうも(?)わかんない。
浅海    だから 今までみたいに普通に人間が生まれてこなくなったって事だよ。


  (「人間は恐ろしい生き物になってしまった。」と語る若原の回想シーン)
  (そして廃墟から西を見つけ出した時の回想シーン、回りには男達の死体)
  (西  あいつらのせいよ)


結花    あの時のあいつらって?
西      私にもわからない。でも、彼らはいつも、何かにおびえていたの。
       自分達の命を脅かす、何かに。
浅海    別の生き物・・・。
結花    どこかに、私達の知らない生き物がいる。


渡り廊下


  (座っている高松のところに 結花がやって来て、西が前にみた夢の話を聞く)

結花     ねえ、いつか聞いたさ 西さんの夢の話覚えてる?


  (西が自分がみた夢の話をしてる回想シーン)
  
  “メガネをかけたおじさんが、ユカという人を探しているの。
   そしてそのおじさんは、B組の一ノ瀬かおるさんといっしょに、
   栓抜きをホテルナビオス横浜の壁に埋めてる・・・そんな夢。”


結花     一之瀬さんて?
高松     彼女。
結花     めがねかけたおじさんって言うのは 私のお父さんの事だと思うんだ。
        私の事結花って呼ぶ人少ないし。
高松     じゃあ、お父さんの栓抜き?
結花     ううん、違う。でももしあの夢が本当だったとしたら、なんで
        お父さんはこれを持ってて、なんで高松君の彼女と一緒にいたんだろ?

高松     知らねえ、でも、何となく信じてる。
        あの夢の話、ホントかもって。
結花     私も。おかげで私達助かったし。
        なんかこれ
(栓抜き)見てるとね、渡せなかった言葉とか気持ちとか
        ずっと、信じてればいつか届くような気がして来るんだ。
        時間とか空間とか、常識とか、全部飛ばして。いつかきっと。

高松     そんな夢みてえな事あんのかよ。
結花     お休み。
高松     お休み。
        俺の年賀状 届いたかな・・・。


西門


  高木美雪と東トメ子が、漂流しなかった川和ハツ子の事を思い出している。
  ハツ子が残していったつけ爪が風に飛ばされて、トメ子がそれを拾った瞬間・・・。
 〜本倉高校の仮教室では〜
  授業中に、突然ハツ子が痛がりながら、指を引っ張られるようにして立ち上がる。
  席に座ろうとするが、もう一度同じ事が起きる。わけがわからないハツ子。


すし屋


中沢リポーターと上司が漂流した本倉高校の話をしている。
ごみ捨て場同然になっていた本倉高校跡地が、ボランティア達によって清掃されているらしい。
上司の話によると、近々漂流していなくなってしまった生徒や先生達を偲んで、記念碑が作ら
れるらしい。上司の「墓石」という言葉に驚き、思わず手を止める藤沢。


砂漠


  月明かりの中、結花が浅海をデートに誘い出して連れてきた砂漠のある場所。
  砂から顔を出した石のプレート。懐中電灯の灯りでプレートに刻まれている文字を読む浅海。
  そこには、慰霊碑と刻まれ、自分達の名が刻まれていることを知る。


結花   大友には 「みんなには内緒にして。」って言ってた。
浅海   俺達、現代ではもう死んだことになってる。
      三崎さんの名前だけないね。
結花   ん(と頷く)
      
知らせたいなあ、みんな生きてるって、伝えたい。
      2002年に生きてる人達に。

浅海   俺はずっとここでいいや。
結花   え?
浅海   俺、ここでいいよ。世界が終わったって ここでいい、三崎さんいるなら。
結花   どうしたの?何弱気になってるの?
浅海   わかんない。こんなことが言いたかったんじゃないんだけど。
      でも・・・なんか上手く言えん。
結花   なによ、何か変だよ、今日は。
浅海   俺が言いたかったのは・・・・ずっとずっと、俺といっしょにいて・・・
      いっしょに、元気な時も病気の時も・・・楽しい時も、辛い時も・・・
      いつもいつも・・・いつもいつも俺といっしょにいて下さい。
結花   (大きく頷いて)ずっといっしょにいよ。ずっとずっと、これからも・・・。
浅海   あの・・・・・すいませんあの抱きしめていいですか。
結花   (立ち上がって、少し照れて) どうぞ。
浅海   ハイ
 (と言って結花を抱き寄せる)
      (互いの体に手を回し、強く抱きしめ合う二人)
      なんか・・・なんか、今・・・すっげえしあわせ。
結花   私も・・・・しあわせ。

結花ナレ−ション   怖くて淋しくて ただ一生懸命に生きてるだけじゃなにか足りなくて、
               でも それは 私達がここにいるせいじゃない。
                なにもかもあるあの頃だって、やっぱり私達は強くなかった。
                何がしあわせなのかわからずに ずっと悩みながら生きてきた。
               そして その何かを私は見つけたんだ・・・・。

          


  朝焼けの光の中で、唇を交わす2人・・・。





結花ナレーション   物語の終わる寸前に。


  明るくなってゆく砂漠を、結花と浅海は手をつなぎ、学校へと歩いていった。



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