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東野圭吾のおすすめ本




■読者をくぎづけにする最初のしかけ
作品に感情移入するまで何分掛かりますか?

前のページで書いたように『容疑者Xの献身』を読んでからいろんなことを考えました。 そのいろんなことを書いてく考察。第1回は『読者をくぎづけにする最初のしかけ』です。

まず。この作品を読む前に予備知識として持ってたのは次の3つ程度でした。
・数学者が一人の女性を愛し、
・殺人事件のトリックを仕組む。
・ガリレオシリーズの物理学者と刑事が出てくる

作品の冒頭、期待どおり?に数学者が登場するのですが、 ほんのチョィと出たあとは、はなしのメインが“数学者の愛した女性”に変わります。

そして淡々とその女性の周辺を説明したのちに…殺人事件勃発です。

私はてっきり“X”が最初の殺人を犯すのだと思ってましたが… 彼の役割はあくまで“彼女を守ること”だったようです。それから彼の論理的思考能力がフル回転で動き出します。


『数学者がどのようなトリックを仕掛けてるのか?』


このような興味を抱いた時点で“感情移入完了”です。 確か…20分くらいでどっぷり浸かれたと思います。


この作品では冒頭特に派手な“つかみ”はありません。 読者が飽きる前に殺人を起こし、そのあとはトリック、天才同士の読み合いへと興味を誘導してくれます。

これは当然といえば当然の運びですが、なかなか難しいことのようで。 他の東野作品では“冒頭間延び作品”もいくつかありました。代表として浮かぶのは“宿命”です。

あの作品は事件が起きるまでホント長かった。。。 あれでは読者が飽きてしまうか、状況把握に疲れてしまいます。

逆に導入が素晴らしかったのは“トキオ”。 あれはホント…最初の20ページで東野ワールドに惹きこまれていきます。

あと最近話題の“白夜行”にも触れておくと。

あの作品の原作はなんといぅか…“うやむや”な感じで始まります。 そしてそのうやむや感が“ゾォ〜”って感じに変わっていき…それが白夜行の世界観となっています。

しかしドラマでは見事センセーショナルな場面を第1話に持ってきてました。 あの1話の出来は“つかみ”として十分視聴者の心を掴んだでしょう。


というような感じで。つかみについて思いつくまま書いてきましたが。 つかみのことを考えると、いつも“自分のプレゼンスキル”について考えさせられてしまいます。

サウンドバイト、8秒の効果、ネットの世界の3秒ルール… どの世界でもやっぱ“つかみ”は大事のようですね。。。

ちなみに。映画のつかみで『これはすげぇ〜』と思ったのが007のワールドイズノットイナフ。 他の内容は覚えていませんが、最初のシーンは鮮烈でした。まだ見てない人は1度見てみましょう。 ( 容疑者Xの献身(2005年)





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東野圭吾のおすすめ本容疑者Xの献身 感想容疑者Xの献身 考察1考察2:被害者を悪者にする手法考察3:人が秘密を隠すコツ考察4:思考の抜け道への誘導考察5:数学的概念とのシンクロ考察6:フーダニットよりハウダニット考察7:結末を予想する面白さ考察8:魅力的な登場人物考察9:東野圭吾の本のタイトル考察10:他の東野作品との関係考察11:数学の美しさと学ぶ意味納得いかなかった箇所は?