作品に感情移入するまで何分掛かりますか?
前のページで書いたように『容疑者Xの献身』を読んでからいろんなことを考えました。
そのいろんなことを書いてく考察。第1回は『読者をくぎづけにする最初のしかけ』です。
まず。この作品を読む前に予備知識として持ってたのは次の3つ程度でした。
・数学者が一人の女性を愛し、
・殺人事件のトリックを仕組む。
・ガリレオシリーズの物理学者と刑事が出てくる
作品の冒頭、期待どおり?に数学者が登場するのですが、
ほんのチョィと出たあとは、はなしのメインが“数学者の愛した女性”に変わります。
そして淡々とその女性の周辺を説明したのちに…殺人事件勃発です。
私はてっきり“X”が最初の殺人を犯すのだと思ってましたが…
彼の役割はあくまで“彼女を守ること”だったようです。それから彼の論理的思考能力がフル回転で動き出します。
『数学者がどのようなトリックを仕掛けてるのか?』
このような興味を抱いた時点で“感情移入完了”です。
確か…20分くらいでどっぷり浸かれたと思います。
この作品では冒頭特に派手な“つかみ”はありません。
読者が飽きる前に殺人を起こし、そのあとはトリック、天才同士の読み合いへと興味を誘導してくれます。
これは当然といえば当然の運びですが、なかなか難しいことのようで。
他の東野作品では“冒頭間延び作品”もいくつかありました。代表として浮かぶのは“宿命”です。
あの作品は事件が起きるまでホント長かった。。。
あれでは読者が飽きてしまうか、状況把握に疲れてしまいます。
逆に導入が素晴らしかったのは“トキオ”。
あれはホント…最初の20ページで東野ワールドに惹きこまれていきます。
あと最近話題の“白夜行”にも触れておくと。
あの作品の原作はなんといぅか…“うやむや”な感じで始まります。
そしてそのうやむや感が“ゾォ〜”って感じに変わっていき…それが白夜行の世界観となっています。
しかしドラマでは見事センセーショナルな場面を第1話に持ってきてました。
あの1話の出来は“つかみ”として十分視聴者の心を掴んだでしょう。
というような感じで。つかみについて思いつくまま書いてきましたが。
つかみのことを考えると、いつも“自分のプレゼンスキル”について考えさせられてしまいます。
サウンドバイト、8秒の効果、ネットの世界の3秒ルール…
どの世界でもやっぱ“つかみ”は大事のようですね。。。
ちなみに。映画のつかみで『これはすげぇ〜』と思ったのが007のワールドイズノットイナフ。
他の内容は覚えていませんが、最初のシーンは鮮烈でした。まだ見てない人は1度見てみましょう。
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容疑者Xの献身(2005年)
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