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東野圭吾のおすすめ本




■被害者を悪者にする手法
いつのまにか容疑者の味方をしてしまう仕掛けとは?

さて容疑者Xの考察第2回は『被害者を悪者にする手法』です。

この作品では最初しょうもないヤツが出てきます。 しつこく女性につきまとい、金をせびる悪い奴です。

そしてこのしょうもないヤツが被害者となって事件はスタートしますが、 読んでる人はこのあとの展開をこう望んだはずです。


『なんとかこの人、罪から逃れられないかな…』


被害者を悪者にした結果、なぜか読者には“容疑者の味方をする心理”が働きます。 読めばわかると思いますが、『うわ〜、殺しちゃったよ、早く警察行け!!』とはさすがになりません。

そしてその結果、“3人”を応援しながら読み進み、 『なんとか良きハカライにならないか?』と期待したのはオレだけでしょうか?


ちなみに。ここで逆のケースの場合、どういう心理が働くか考えてみてください。 被害者が良い人で、加害者がズル賢いケースです。

恐らく『ズル賢い奴の悪行をさばけ!』 となりますよね? その結果、読者が応援するのは…古畑任三郎のような刑事です(笑) 古畑がひとつずつおかしな点を指摘していく姿はとても小気味良いですよね。


話を戻しますと。容疑者X以外でも『被害者を悪者にする手法』は使われています。 その中でも極めて巧みな使い方をしているのが“さまよう刃”ではないでしょうか? あの作品の父親にはホント…微妙な応援心理が働きます。

悪者が殺され、良人が容疑者となってしまうやりきれないジレンマ… このジレンマがあるからこそ、読者は作品に感情移入するのかもしれませんね。 ( 容疑者Xの献身(2005年)





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東野圭吾のおすすめ本容疑者Xの献身 感想容疑者Xの献身 考察1考察2:被害者を悪者にする手法考察3:人が秘密を隠すコツ考察4:思考の抜け道への誘導考察5:数学的概念とのシンクロ考察6:フーダニットよりハウダニット考察7:結末を予想する面白さ考察8:魅力的な登場人物考察9:東野圭吾の本のタイトル考察10:他の東野作品との関係考察11:数学の美しさと学ぶ意味納得いかなかった箇所は?