以下のコンテンツは、「とらのあな」けえにひ様から提供していただいた、
"The Keeper's Companion" (Chaosium Inc. 2000) におけるデータを翻訳したものです。
ありがとうございました。


“キーパーズ・コンパニオン”からの抜粋

p71〜72
禁断の書 [Forbidden Books] :

グラーキの黙示録

「……クトゥルフの眷属さえも、あえてイゴーロナクについては語らない。いつの日かイゴーロナクが永劫の孤独より歩み出る時が来るだろう。今一度人の世を歩むために……」

――19世紀の未出版の写本である第12巻より

 この書物の標準的なものである出版された版は9巻からなるフォリオ判のもので、1865年にリヴァプールで印刷されました。噂では、11巻あるいは12巻からなる版が写本の形で密かに流布しているそうです。

 黙示録はイングランド南西部のセヴァーン川渓谷から現れた、グラーキという神性に捧げられた教団の構成員達による著作です。その著述は1842年、その当時の教団の指導者が神の崇拝の儀式を記録し始めた時に始められました。それ以後、教団の多くの高僧や中堅の構成員達がこの著作の各巻の内容を寄稿していき、それは1860年代の後半に信仰者達が一人残らず消えてしまうまで続きました。これらの各巻はグラーキの教団に授けられた預言、英智、指令について詳述されていて、特にセヴァーン川渓谷における特異な出来事については集中して記述されています。各巻はそれぞれ異なる主題及び関係する呪文を扱っています。

■第1巻:グラーキ及びかの神に関連する魔女集会について
呪文:グラーキとの接触
■第2巻:グラーキの従者及び緑の崩壊の呪いについて
呪文:緑の崩壊ナイハーゴの葬送歌
■第3巻:バイアティスの幽閉について
呪文:バイアティスとの接触
■第4巻:迷路の神アイホート及びかの神の仔について
呪文:アイホートとの接触
■第5巻:彗星あるいは小惑星の如き怪物である前兆にして誘因グロス及びネメシスの神話をもたらす霊感について
呪文:グロスとの接触
■第6巻:シュブ=ニグラス及び「ムーンレンズ」と呼ばれるものに関連するある地方の信仰について
呪文:ムーンレンズの番人の招来/退散
■第7巻:アザトースの崇拝者であるシャガイからの昆虫 [シャン] 及びかの神の力を利用する事について
呪文:アザトースの招来/退散、シャンとの接触
■第8巻:シャガイからの昆虫の従者であるザイクロトルからの怪物 [ザイクロトラン] 及びそれらの故郷の世界について
呪文:ザイクロトルからの怪物の召喚/従属
■第9巻:異次元、ヴェールをはぎ取るものダオロス、スグルーオ湾の住人について
呪文:ダオロスの招来/退散
■第10巻:「膨れ上がり触手を生やした眼球と内臓の塊」として描写されるものムナガラーについて
呪文:ムナガラーとの接触
■第11巻:ドリーム・クリスタライザー及びその適切な使用方法について

原書である写本

 手書きの原書は12冊の古風なリング式バインダーに綴じられて、崇拝者達によって守られ、秘匿されています。著者の筆跡の多くは解読が困難なため、読むためには<英語の読み書き>のロールに成功する必要があります。これらの巻のかなり正確な複写が人目を忍んで作成され、流布しているかも知れません。正気度喪失は1D8/2D8、クトゥルフ神話に+17%、研究及び内容の把握に要する平均時間は44週間/斜め読みに要する時間は88時間です。

出版された版

 より標準的ではあるもののやはり稀少なこの限定版は、崇拝者達による原書がまだ9巻までしかなかった1865年にイングランドで密かに出版されました。出版社であるシュプリームス・プレス [Supremus Press] は元となった原稿の出所を決して明かしませんでしたが、おそらく教団の構成員だった背教者が複写して盗み出したのだと推測されます。この版は「特別な」個人収集家だけに販売されるものでしたが、それにもかかわらず一部分が念入りに削除されており、また当然ですが10巻及び11巻の内容の大部分を欠いています。これらの複製版のうち、いくつかはなんとか主要な図書館に所蔵されていますが、ほとんどはまだ個人の手にあると思われます。正気度喪失は1D6/2D6、クトゥルフ神話に+15%、研究及び内容の把握に要する平均時間は32週間/斜め読みに要する時間は64時間です。

第12巻

 この写本の恐るべき第12巻は、イゴーロナクに関するほとんど知られていない原典資料のひとつです。そこに書かれた文章には秘密の呪文が織り込まれていて、この巻が読まれた場合はいつでもイゴーロナクが自動的に召喚されてしまいます。うかつな読者は不快な脅威を体験する羽目になるかも知れません。正気度喪失は1D3/1D6、クトゥルフ神話に+3%、研究及び内容の把握に要する平均時間は6週間/斜め読みに要する時間は12時間です。

その他の恩恵及び影響

 原書である11巻の版を読んだ場合、読者は<オカルト>技能の経験チェックを二つ得ます。しかし、出版された版の全9巻を全部読んだとしても、<オカルト>技能の経験チェックは一つしか得られません。黙示録を読んだ者達の何人かは、不本意ながらもこの書を書き上げてしまおうとし、彼ら自身の神話知識に基づく章をさらに追加し続ける事になります。そうやって、この書の新たなる巻が書き続けられていくのです。

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p79〜80

新しい呪文

ムーンレンズの番人の招来/退散ムーンレンズの番人に関するさらなる情報については、93ページを見てください。番人は夜にのみ招来され得ます。そして招来された番人は、満月の光かあるいはムーンレンズのような装置によって増幅された月光の中に、絶えず浸されている必要があります。

神性との接触/バイアティスこの呪文はセヴァーン川の渓谷においてのみかける事が出来ます。バイアティスは幻影の姿で現れますが、この神の催眠効果のあるまなざしを避けるために、術者は接触するごとにPOW×5のロールに成功する必要があります。

神性との接触/グロス適切な時期にグロスと接触する事が出来るよう、この呪文をかけるためには<天文学>のロールに成功する必要があります。呪文をかけると直ちに、術者の前には惑星サイズの存在の持つ異界の精神が広がる事になり、1D8/1D50の正気度ポイントを失います。グロスと接触する事には、真に恩恵と呼べるようなものは何もありません。何故なら術者があまりにもちっぽけで取るに足らない存在であるために、グロスは彼あるいは彼女を認識する事もないだろうからです。グロスに関する情報については「クリーチャー・コンパニオン」を見てください。

神性との接触/ムナガラーこの呪文は沼沢のような場所においてのみかける事が出来ます。ムナガラーが術者に対して何かを与えるような事はほとんどなく、この呪文をかけた者の身体には、当のグレート・オールド・ワン自身の触手が潜り込み始めている事でしょう。

神性との接触/ヨグ=ソトース:この呪文はいつでも、どんな場所でもかける事が出来ます。ヨグ=ソトースは啓示の形をとって接触し、術者の精神は宇宙の無限の展開可能性を一望する事になります(1D10/1D100ポイントのSANを喪失)。

知識を守るものとの接触/からの逃亡:これらの呪文のうち、最初のものは従来の「神性の生き物との接触」の呪文と非常に良く似ています。呪文を唱えた者は、次に眠りに落ちた時に夢の中で(夢幻境においてではありません)知識を守るものと遭遇します(1ポイントのPOWを消費)。守るものは術者の望むがままの知識を分け与えてくれるでしょうが、しかし術者が自分の身体へと帰還する事を許さず、夢の中に永遠に捕らえておこうとするでしょう。守るものの珍しい本性の故に、その特性値や能力についてはキーパーにまかされています。

 守るものからの逃亡の呪文は1ポイントのPOWを必要とし、得られた知識とともに自分の身体に帰還する事を術者に許します。この呪文がどこに存在するのかは知られていません(エルトダウン・シャーズに記されているものは、あまりにも断片的なので役には立ちません)。

緑の崩壊この呪文は15マジックポイント、1D10正気度ポイント及び10分間の時間を費やし、その間犠牲者が術者の視界の中にいなくてはなりません。グラーキの従者は無条件でこの呪文の影響を受けますが、その他の対象は自身のマジックポイントと術者のマジックポイントとの抵抗ロールを行います。ロールに失敗した場合、犠牲者は日光のもとにいる各ラウンドにつき1ポイントずつのCONを永久に失うようになります。CONが0になった時、犠牲者は湯気を上げる緑色の堆積物へと溶解してしまいます(この光景を見て失われる正気度ポイントは1/1D8です)。

ナイハーゴの葬送歌実体を持つアンデッド(スケルトン、ゾンビ、吸血鬼、グラーキの従者)を破壊するために使用される、「復活」の呪文の改良版です。術者は12マジックポイント及び1D6正気度ポイントを消費し、不気味で物憂げな声による詠唱を行います。アンデッドがPOW対POWの抵抗ロールに失敗した場合、それらは直ちに塵と化す事になります。

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p84〜86
謎多き古器 [Arcane Antiquities] :

ドリーム・クリスタライザー

(ラムジー・キャンベル「ヴェールをはぎ取るもの」より)

 この小さな、しかしかなりの力を秘めた工芸品がいったいいくつ存在するのかという事は、明らかではありません。ドリーム・クリスタライザーは、ネクロノミコンやグラーキの黙示録第11巻といった書物において言及されています。クリスタライザーは長径が1フィートほどの黄色がかった卵といった外見です。その表面には特に特徴となるような紋様等はなく、邪悪な品物のようにも見えません。その異界の性質を警告するものはただ、それが定期的に発している「断続的な、奇妙な口笛のような音」だけです。軽くたたくと、クリスタライザーは中空であるかのような音をたてます。そして、比較的脆そうなものに見えますが、その重さは約20ポンド [約9キログラム] ほどもあります。ドリーム・クリスタライザーは自動的に作動し、その力を活性化させるための呪文や特別な儀式は何も必要としません。

 この工芸品の能力は、眠っている人間の意識をドリームランドやその他のさらに地獄めいた次元といったはるか遠方の場所へと移送するというものです。このような夢の中の旅は、誰かがクリスタライザーから10ヤード [約9メートル] 以内の場所で眠りに入った場合に自動的に起こります。もし数人の人々がその範囲にいた場合は、クリスタライザーに最も近い一人が夢を見る事になります。クトゥルフ神話に関するような夢の旅は、その夢で見たものに従って追加の正気度を喪失します。クリスタライザーの手助けを受けて見る夢は非常にリアルなもので、夢を見ている人はそれらの他の場所を五感で体験するだけではなく、彼あるいは彼女は訪れた新たな世界と完全に相互に影響しあう事ができます。これは、クリスタライザーを使用した人間は夢の旅の間における行動の結果として負傷したり、殺されてしまったりする場合すらもあり得るという事を意味しています。最後に、おそらくはクリスタライザーの最も不可思議であろう力として、夢を見る者がその間に得た品物を覚醒の世界に持ち帰る事を可能にするというものがあります。

 この品物には、その働きに眠りの大帝である旧き神ヒプノスの力を借りているというマイナス面があります。本来彼のものであるクリスタライザーを誰かが使用した場合、彼を怒らせる事になります。個々の人間がクリスタライザーを使用する度に、その行為が眠りの大帝の注意を引く可能性が1D10%ずつ累積していきます。いったん気づかれてしまうと、ヒプノスはドリーム・クリスタライザーの守護者を送り込んできます。この奇怪な怪物は、工芸品を彼らの神の元へと持ち帰り、その所有者(達)を罰するために襲撃してくるのです。守護者による罰は長期間に及ぶ、死んだほうがましだと思わされるようなものです。

ドリーム・クリスタライザーの守護者

 この守護者はドリームランドと覚醒の世界に同時に存在しますが、その他の次元においては一般に存在していません。影のようなその姿は長い触手と猫のような黄色い眼を持った、大きな浮遊するクラゲに似ています。守護者はその長い触手を、罪を犯した当事者をからめ取って夢と現実との間にある次元へと引きずっていくために使用します。それから逃れるためには、犠牲者は彼あるいは彼女のSTRで守護者のPOWに抵抗表上で打ち勝つ必要があります。一人の人間を攻撃する事ができる守護者は一度に一体だけです。

 この怪物に連れ去られた人間は、彼あるいは彼女の深い眠りに落ちた肉体を後に残す事になります。不運な犠牲者はその魂をヒプノスの宮廷で永久に苛まされ、二度と再び目を覚ます事はありません。

ドリーム・クリスタライザーの守護者
能力値ロール平均値
STRn/an/a
CONn/an/a
SIZ3D6+313-14
INT2D6+815
POW2D6+613
DEX2D6+815
移動10 浮遊
耐久力 13
平均のダメージ・ボーナス:N/A
武器:触手による絡み付き 35%、ダメージは魂を抜き取るための物理的拘束です。
装甲:なし。ただし、この怪物にダメージを与えられるのはINTあるいはPOWに影響する事ができる武器及び魔法だけです。
技能:静かに動く 100%
呪文:D100でINT以下のロールに成功した場合、その守護者は多くの呪文を知っている事になります。この怪物には、ドリームランドの呪文を覚醒の世界で使用する事ができるという能力があります。守護者が呪文を知っているならば、それはドリームランドのものである可能性が高いでしょう。
正気度喪失:守護者を見て失う正気度ポイントは0/1D6です。
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p92〜93

ムーンレンズ

(ラムジー・キャンベル「ムーンレンズ」より)

 非常に珍しい品物です。この装置はイギリスの、怪異の噂の絶えないセヴァーン渓谷地方にある忌まわしきゴーツウッドの村において見つかります。それは直径が約20インチ [約50センチメートル] ほどの大きな凸レンズと、その周囲に配置された十三枚の形も大きさも様々な鏡から構成されています。この奇妙な仕掛けは真鍮や銅や銀でできた取り付け金具によって結合されていて、それら全てが街の中央にそびえ立つ高さ50フィート [約15メートル] の金属製の塔の上に据え付けられています。ムーンレンズからはロープと滑車とを取り合わせたものが垂らされていて、それを使用する事で地上にいる人間はレンズをほぼ全ての方向に向ける事ができます。ローマ人が、彼らの帝国がこの地を支配していた間にムーンレンズを組み上げたのですが、しかしそもそもこのレンズをいつ誰が造ったのかという事は知られていません。

 このレンズを使用するのは、全員がシュブ=ニグラスの崇拝者であるゴーツウッドの村人達です。ゴーツウッドの近郊には大きな丘があり、その内部にはムーンレンズの番人として言及される、黒き山羊の巨大で醜怪な化身が潜み棲んでいます。このおぞましき存在は満月の時にのみ姿を現す事ができ、それ故ムーンレンズが造られたのです。この装置は集められる限りの月光を集束し、レンズを通してその焦点に満月を模した大きな円光を形成します。この円光がシュブ=ニグラスの畏怖すべき化身の上に留められている限り、怪物は、月が沈んでいたり雲に隠れていたりする時を除けばいつの夜でも現れる事ができるのです。怪物はその招来を助けているこの装置によってその本来の性質をごまかされているために、非常につけ込みやすい弱点を持つ事になります。もしムーンレンズの光が怪物の身体から引き離されてしまうと、怪物はダメージを受け始め、可能な限りの素早さでその地下の隠れ家へと引き返さなくてはならなくなります。最後に、その存在を知られているムーンレンズは一つだけですが、別の崇拝者達が同様の装置を持っているという可能性は大いにあります。噂では、ムーンレンズとは異なる方法で月光無しに同様の円を作り出し、いつの夜でもその内部でシュブ=ニグラス自身や彼女の黒き仔山羊を召喚可能にするような装置が存在しているという事です。

ムーンレンズの番人

 この巨大な恐怖は、多くの関節と先端の大きな円盤状の肉趾を持つ脚に支えられている、白い肉の柱として記述されています。腕はありませんが、その代わりに三本の長い背骨状の付属肢を持ちます。頭部は密生したゼリー状のコイルから形成され、無数の眼に覆われていて、その中央には歯の生えた大きなくちばしがあります。この化身は生贄を受け取ると、それを丸ごと呑み込んで自分のゼラチン状の頭部の中に捕らえておきます。そしてこの巨人は地下の隠れ家へと引き返し、犠牲者はそこで数多くのぞっとする変異を被った後に怪物から「再誕」する事になるのです。そのようにして変形した人間は、シュブ=ニグラスに祝福されしものとして知られる存在になり、ほとんどの場合二度と外界では見られる事はありません。

ムーンレンズの番人、シュブ=ニグラスの化身
STR 55CON 135SIZ 95INT 21POW 70DEX 16
移動 12耐久力 115
平均のダメージ・ボーナス:+8D6
武器:くちばし 90%、ダメージ 1D10あるいは呑み込み
踏みつけ/押し潰し 75%、ダメージ 1D6+8D6
装甲:なし。ただし、この怪物は1ラウンドあたり1D10ポイントの耐久力を再生します。さらに、あらゆる物理的武器による攻撃からは、たとえそれが成功したとしても番人は1ポイントしかダメージを受けません――貫通しても2ポイントです。火、電気及び魔術はこの怪物に通常のダメージを与えます。
呪文:外なる神を扱うあらゆる呪文や、同様に自然や諸元素の力と結びつくあらゆる呪文を知っています。
正気度喪失:ムーンレンズの番人を見て失う正気度ポイントは、1D10/1D100です。
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