ウィーン少年合唱団プログラムB “ウィーン少年合唱団と巡る四季”
           令和6(2024)年6月1日(土)  ザ・シンフォニーホール

   プログラムAとBを統合して観なければ

 “ウィーン少年合唱団と巡る四季”というテーマを見て、このテーマは、8年前にオリヴァー・シュテッヒ先生率いるシューベルトコアのテーマと同じではないかと思いました。しかし、四季の歌にも多様なものがあり、曲は一部を除いてほとんど違う曲で構成されていました。しかし、プログラムを見ると、知っている曲は4割ぐらいで、初めて聴く曲の比率が高いことに気付きました。それはそれで新たな発見があってよいのですが、この日の団員は、珍しく楽譜を持って登場。約半分ぐらいの曲は、楽譜を見ながら歌っていました。さすがに、楽譜に目を落として歌うため表情が暗いということはなく、確認程度に楽譜を見ていたのですが、翌日のAプロは全曲楽譜なしで歌っていたので、きっとまだ練習途上の曲があるのだろうな(一部の団員だけが楽譜を見ているよりも、全員揃えている方がよいかな。)と感じました。

   季節の移り変わりを中心に鑑賞

 秋の曲は、イェイロの「秋」から始まり、ステージ全体に広がって歌うところから、定位置に並ぶと、ソプラノ(第1ソプラノ・第2ソプラノ)11人、アルト(メゾソプラノ・アルト)14人とアルトパートの充実が今チームの特色かなと思いながら観ていました。(アルトのパートの中には、変声前と変声中・後が混じっているとは思いながらも。)秋の中では、メンデルスゾーンの「秋の歌」のリヒャルト君とベンセ君のデュエットが情感豊かに歌われており、今回のメンバーでは、ソプラノはリヒャルト君に率いられているようにさえ感じました。リコ君のソロによる「エレンの歌2番」は、大人の女声を感じさせるような歌に仕上がっていました。フォーレの「レクイエム」より《アニュス・デイ》がどうして秋の曲なのかと思いながら聴いていましたが、ウィーン少年合唱団がフォーレの「レクイエム」を歌うことは珍しく、転調によって曲想が変化するところが、季節の移り変わりなのかと思いながら聴いていました。冬はクリスマスにまつわる曲を中心としながらも、日本の少年合唱団のクリスマスコンサートでは聴くことのできない曲もあり、クリスマスソングの奥行きの深さを感じました。アルネセンの「ゆりかごの賛歌」は、初めて聴く曲ですが、愛らしい佳曲です。

   日本の歌をどうアレンジするか

 ペルゴレージの「スターバト・マーテル」の第1曲がどうして春の初めなのかは不明ですが、アルトをソプラノが追いかけていく曲想の美しさは、これが春の訪れなのかと感じたりしました。「ふるさと」は、日本ではむしろ春から始まる「四季の歌」の最初か最後に歌われることが多い歌ですが、ウィーン少年合唱団の日本公演では、必ず歌われる歌です。しかも、昭和の中頃と比べて日本語が自然に感じるようになっています。それは、日本人の団員が必ず来日メンバーにいるほどになってきて、日本語に限らず団員間で母国語の発音を教え合うようになってきたことも大きいのではないでしょうか。ホルストの「2つの東洋の絵画」より「春」と「夏」が選ばれたことは、それが春から夏への移り変わりという意味の選曲だったでしょうが、どとらも初めて聴く曲のため、深く感じることはできませんでした。日本民謡を小倉朗が編曲した「ほたるこい」は、いかにも合唱のための編曲ですが、曲の意味よりも、合唱曲としての面白さを歌っているのではないかと団員も観客も感じたのではないでしょうか。「パプリカ」は本来、4年間の公演のレパートリーだったものが、1周遅れで実現したと言えましょう。この歌は、中が空洞の直方体のカホンという楽器のリズムに合わせて歌われましたが、Foorinが歌い踊った弾けるような原曲とは違った調和的なものを感じました。それでいいのです。ものまねではないのですから。

 最後は、夏休みをイメージしてか、ヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・シュネル「休暇旅行で」、最後のシュトラウスIIのワルツ「美しく青きドナウ」へと続いて、ウィーンに戻ってきた感じがしました。アンコールは、ジョルジ・ベンの「マシュ・ケ・ナダ」と、おなじみのアフリカ民謡「ショショローザ」というリズム重視の曲が配置され、多様性のある歌に挑んでいることを感じると同時に、「ショショローザ」は、シュテッヒ先生がアフリカの太鼓シャンベを叩き、横一列に並んだ団員たちが踊りながら歌い賑やかに締めくくりました。この歌は、8年前も歌ったなと思い出しました。退場してから、上手から3人が手を振りながら再登場するおちゃめな姿に心が和みました。

 ウィーン少年合唱団プログラムA “夢みる夜と魔法の世界”
           令和6(2024)年6月2日(日) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

   テーマにあった曲を集めて

 今回のテーマは、“夢みる夜と魔法の世界”というファンタジックなもので、オリヴァー・シュテッヒ先生も、「おとぎ話と夜の世界」と紹介しましたから、選曲とその配列と同時に、ピアノ伴奏だけでない器楽とのアレンジが観どころ・聴きどころになってきます。また、プログラムを見ても、宗教曲は少なく、劇やミュージカルあるいは、スタジオ・ジブリ作品の曲が多いこともあって、この日の団員は、楽譜を持たずに全曲が演奏されました。

   「千夜一夜物語」で始まるおとぎ話の世界   

 第1部は、ヨハン・シュトラウスIIのワルツ「千夜一夜物語」で始まりましたが、この曲は「アラビアンナイト」から取材したものですから、魔法のじゅうたんは出てこなくても、東洋的かどうかはともかく、西洋的ではない旋律を楽しむことができました。メンデルスゾーンのオペラ「真夏の夜の夢」より「妖精の歌」は、ウィーン少年合唱団の伝統的な持ち歌で、リヒャルト君とベンセ君のデュエットが楽しめました。ブルックナーの「真夜中に」は、先日聖フロリアン少年合唱団のCDで予習していたところなので、混声合唱と少年合唱の違いはありますが、アルトの二人の声が美しく、聴きどころを押さえて聴くことができました。
 本日のソロ曲は、Aプログラムだけですが、シューマンの「月夜」をリヒャルト君が歌いあげましたが、今、リヒャルト君は、ボーイ・ソプラノの頂点にあると感じさせる豊麗さと繊細さが同居する味わい深い曲に仕上げていました。なお、今年のメンバーで、ソプラノのソロ・ソリは、ほとんどリヒャルト君がしているという印象が強いです。映画「サウンド・オブ・ミュージック」は、日本の少年(児童)合唱団でも採り上げることがありますが、今年のウィーン少年合唱団は、ギターの伴奏で各パートから7人がそれを囲むようにして「エーデルワイス」を歌ったり、「ひとりぼっちの羊飼い」では、3人が交替でソロヨーデルを歌いました。第1部の最後の「ジェリコの戦い」は、子どもの頃、デューク・エイセスの歌を「軍歌らしくない歌だなあ。」と感じながら聴いたことを思い出しました。これは、黒人霊歌なのですね。

   映画音楽で広がる魔法の世界

 第2部は、聴き慣れないブルガリアとオーストリアの民謡で始まりましたが、この中にそれぞれの国の歌曲のもとになる要素があると感じながら聴いていました。「ふるさと」は、昨日に続き歌われましたが、この日は舞台全体に広がって歌ったので、昨日とは違った響きを感じました。個人的には、こちらの方が好きです。ここからが本日のメインで、映画『天空の城ラピュタ』より「君をのせて」では、日本語が自然に聴こえ、映画「ピノキオ」より「星に願いを」では、高音の美しさを味わい、ミュージカル『ウィキッド』より「エメラルドシティ」では、魅惑の世界へと誘い、映画『ハウルの動く城』より「人生のメリーゴーランド」では、空を旅するような時が過ぎ、再びウィーンに戻ってきました。
 ヨハン・シュトラウスIIの「アンネン・ポルカ」は、ゆったりしたポルカで、プログラム最後のワルツ「美しく青きドナウ」の間に、ロベルト・シュトルツのワルツ「プラターに再び花は咲き」を選ぶなど、シュテッヒ先生は、ウィーン情緒の伝統を身に着けた指導者という感じがしました。この日も、アンコールは昨日と同じ2曲でしたが、2回聴くと聴きどころがつかめるという感じがしました。

 京都市少年合唱団第130回定期演奏会
           令和6(2024)年8月18日(日) 京都市コンサートホール大ホール

   会場に到着すると

 ウェルカムコンサートに遅れないようにと思って午後1時ごろ会場に着きましたが、並んでいる観客は多いと感じました。(団員が200人いれば、その家族・親類だけでも1000人は超えるでしょう。ロビーコンサートは、新入団員による「市歌」で始まりましたが、今年は小4~中1で62人と人数が多く、約5か月ほどの練習にもかかわらずきれいな響きをしていました。ところが、男子部「輝(ひかり)」は、ステージでウェルカムコンサートをするということで、急いで会場に入りました。今回の席は、初めて最前列ということで、歌っている団員の表情や、指揮者の息遣いなど、これまであまりよく見えなかったことが見えてきます。

 「学園天国」は、コロナ前の5年前の第70回定期演奏会で、大谷先生の指揮の下、みやこ光(当時の男子部名)が、やや恥ずかしげに歌っていたのですが、この日は、100均ショップのパーティ用品コーナーから買ってきたかつら、サングラス、レイ、たすき等を身につけた団員たちが小林先生の指揮で、あまり恥ずかしさを感じさせず、楽しそうに演じているではありませんか。第70回定期演奏会に出演した団員は、もう、卒団してこのステージにほとんどいないでしょうが、エンタメの要素をしっかり身に着けて演奏しているなと嬉しくなってきました。しかし、残念ながら「輝」の出演はそこまででした。
   
   全員合唱は、歌に集中できる曲を

 今回のオープニングの全員合唱は、ジョン・ラターの合唱曲で、新入団員も入って間もない中で英語の合唱に取り組むという企画でしたが、“For the beauty of the earth”“A flower remembered”“O be joyful in the Lord”の3曲とも澄んだ音色の演奏で、心洗われました。
   最後には、信長貴富の混声合唱とピアノのための「新しい歌」で、プログラムに挟まれたチラシには、団員会会長の名で、この曲に取り組む想いや、解釈のようなものが書かれていました。それは、取り組みに対する真摯な姿勢であり、曲想の違う5曲にどう向き合っていくかという意気込みが感じられ、このステージの最後を飾るにふさわしい出来栄えだったと思います。もともと、この5曲は、和洋の5人の訳詞を含む詩に作曲したものですが、5曲の曲想の違いも含め、合唱組曲としてのつながりを感じました。そのような意味で、どちらも、合唱曲らしい混声合唱を聴かせる全員合唱でした。

   新入団員62人をどう育てるか

 今年度は、新入団員62人(そのうち男子たぶん18人 約3割)は、大変な成果で、コロナ禍の間は、このままでは京都市少年合唱団は、150人ぐらいになるのではないかと心配していましたが、200人を超えて盛り返してきました。
 この新入団員をいかに育てるかは、今後の団にとっての重要な課題と考えてか、大谷先生の指揮で、「未知という名の船に乗り」「いぬのおまわりさん」「くまさん」「おとなマーチ」「君をのせて」と童謡や、児童合唱の定番曲を振付入りで演奏しました。約5か月間でよくトレーニングされて声質が揃ってきていることが伝わってくると同時に、最近、高木喜久恵先生という振付専門の先生を指導陣に加え、不自然な動きもなく、舞台が動的であるだけでなく立体化してきたように感じます。

   「雅(みやび)」と「和(なごみ)」の違い

 「雅(みやび)」と「和(なごみ)」の違いは、混声か、同声かということかと思ったら、雅は、「この世界のぜんぶ」「こころたび」「くちびるに歌を」とやや青年向きの歌が選ばれ、「和」は、「四国ばやし」「江戸の子守歌」「おてもやん」「八木節」「会津磐梯山」と、日本各地の民謡を合唱化した曲のメドレーでしたが、曲想の違いが面白く、合唱曲らしいアレンジと、手踊りだけでなく扇を使った和風の振り付けを楽しむことができました。

   成果と課題

 そのような意味で、今回の定期演奏会は、いわゆる「合唱ファン」は楽しめたと思いますが、「少年合唱」を聴きに来た観客はもの足りなさを感じたのではないでしょうか。コロナ禍の期間は、練習会場と安全確保のため、チームの組み替えをしたのは仕方がありませんが、せっかく前回の定期演奏会で男子部「輝(ひかり)」を復活させ、前回のプログラムの巻頭言では、稲田教育長名で「男子部「輝(ひかり)」復活を喜ばしく、ご期待ください。」と書きながら、今回、前座に1曲歌っただけというのは、いかがなものでしょうか。現在、近畿地方の児童合唱団で「少年合唱」を聴くことのできる団体は、京都市少年合唱団だけであることに誇りと自覚を持っていただきたいと思います。
 
  また、卒団(修了)時期が約半年早くなったので、中学3年生は、この日が修了演奏にもなりますが、かつては、メインエベントとして白い上着の制服を着て、華やかな舞台が提供されたのに、この日は、ざわざわしたホワイエでのロビーコンサートでした。別に、きちんとした卒団式はあると思いますが、これでよいのかなと思ったりしました。

 フレーベル少年合唱団第62回定期演奏会
          令和6(2024)年8月22日(木)文京シビックホール 大ホール

    二つの特集の間に各組の演奏が

 第62回定期演奏会は、ちらしにもプログラムの表紙にも、「1 大中恩生誕100年に寄せて」「2 覚和歌子さんの詩による合唱作品集」と描かれ、二人の写真が大写しされていましたが、最近定番化されてきた歌劇『魔笛』の3童子の旋律による観客への鑑賞のお願い(今回は6人の歌唱)と団歌というオープニングを除けば、二つの特集の間にフレーベル少年合唱団の組(学年)による歌声の成長という隠れたテーマがあったのではないでしょうか。
 フレーベル少年合唱団の特色は、幅広い年齢(学年)層の団員及びOBから構成されていることであり、それぞれの組の歌が少年たちの成長を体現しています。実は、その特色が一番はっきりと感じられたのは、15分の休憩をはさんで行われた各組の演奏であり、フレーベル少年合唱団の音楽的な質的向上を感じるステージでした。

    大中恵の作品の奥行

 ある作曲家の作品を特集したコンサートではよくあることです。今年は、全国各地で大中恩生誕100年の記念演奏会が行われていることでしょう。今回採り上げられた大中恵先生の作品でよく知られているものは、童謡・歌曲・合唱曲と言ったジャンルになるでしょうが、そのいくつかは、フレーベル少年合唱団によって歌い継がれてきました。これまで、その曲がいつ頃作曲された曲かということを考えたことはなかったのですが、この日歌われた「ドロップスのうた」「おなかのへるうた」「いぬのおまわりさん」「サッちゃん」は、記憶をたどって逆算してみると、大中先生が30代ぐらいのときに作曲された曲ではないでしょうか。来年は、ちょうど昭和100年です。子どもの頃は、ただ聞いたり歌ったり、「サッちゃん」のところ別の友達の名前に変えたコミックソングにして面白半分に歌ったりしていましたが、よく聴くと、どの歌も、日本語の美しさを生かしたメロディとリズム、詩に基づくイメージに即した和声を用いた作品だと感じるようになりました。
 今回は、幼稚園児のB組は、人数が3人少ないこともあって、単独のステージはなく小学1・2年生のA組との合同演奏でしたが、「おなかのへるうた」と「いぬのおまわりさん」は、B組・A組、「ドロップスのうた」は、A組・S組(小学3・4年生)、「サッちゃん」はS組、「きみ、歌えよ」は、A・S・SS組(小学5年生~中学2年生)という学年の違いは興味深かったです。やや異質な「ひげをはやしたい」は、A・S組とOBという異色の組み合わせで、ステージ上にひげを生やしたOBはいなかったものの、「おとなマーチ」にも通じる曲で、歌った後に団員がOBと握手する演出も含め、男の子が抱く「大人の男観」をよく表していました。
 「旅に出よう」は、初めて聴く曲ですが、昭和51年度NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部の課題曲になった合唱曲です。この旅は、「旅行」というよりもいわゆる「心の旅」ではないでしょうか。人生の中で出くわすいろんな場所を避けずに希望を持って旅に出ようと歌われているように感じ、曲中で何度か曲想が変化するところが面白いと感じました。このステージでは、曲ごとに歌う組が変わりましたが、それは、それぞれの歌は、どれぐらいの年齢や学年で歌えば、一番その曲の情感を出せるかを考えて組まれたのではないでしょうか。「きみ歌えよ」は、4日前に京都市少年合唱団が同じ詩に信長貴富が作曲した作品を聴いた直後だったので、同じ歌詞なのに、その世界観の違いが鮮明でした。また、曲の題名を紹介するのではなく、団員が会話をする中で次の曲につながっていくというステージの構成の仕方は、なかなか面白いと感じました。
 ふと、同じ会場の文京シビックホールで行われたフレーベル少年合唱団の定期演奏会に晩年の大中先生が来られていたことを思い出しました。

    3組から4組にした効果

 野本立人先生が、音楽監督としてフレーベル少年合唱団の学年による組分けを3組から4組にされたのは、第60回定期演奏会(その練習)からですが、この日は、組ごとの演奏があり、A組は「ドレミの歌」、S組は、バッハ=グノーの「アヴェ・マリア」と「リメンバー・ミー」、SS組は、ブリテンの「キャロルの祭典」より 1.入祭唱 2.ようこそ、天の王よ 10.神に感謝と3曲抜粋、休憩をはさんで、SS組は、「流浪の民」「正解」と少年の歌声の成長の図鑑のような構成のステージが繰り広げられました。
 明るくて元気のよい「ドレミの歌」から、清澄な「アヴェ・マリア」へ移るとき、明らかに歌声の成長を感じることができました。同時に、この夏にテレビでも放映された映画『リメンバー・ミー』の主題歌「リメンバー・ミー」は、部分ソロを交えた合唱で、いわゆるクラシックの曲でなくても少年が歌ってこそ、その歌の魅力が輝きを見せる曲を選曲した点で、S組が毎年のようにレベルアップしていると感じました。SS組は、ついにブリテンの「キャロルの祭典」に挑むようになったのかというのが、嬉しい喜びでした。これまで、暁星小学校聖歌隊、TOKYO FM少年合唱団、京都市少年合唱団による「キャロルの祭典」(抜粋を含む)を聴いてきましたが、この日の演奏は、長ズボンの制服の団員人数から類推して、従来は3人ぐらいしかいなかった中学生も10人近くおり、清澄さと共に芯のある歌声を聴かせてくれました。
 休憩後のユースクラスの紹介で嬉しかったことは、今年は大学1年生のメンバーもいるということで、高校卒業がユースクラスの修了でないことがわかったことです。変声期で一時的にせよ歌に興味を失ったり、進学で忙しかったり、他のことに興味が移っていったりすることは、きっとあるでしょうが、この日、約20人のユースクラスがステージに上がったことは喜ばしいことです。「流浪の民」は、出だしの辺りは少し心配しましたが、次第に調子を上げていきました。将来、SS組との合同演奏で、ソプラノ~バスの4人の独唱が入った演奏になることも期待できそうです。「正解」は、最近、中学校や高等学校の卒業式でも歌われることのある歌だそうですが、最後の「よーい、はじめ」という一節は、これから始まる新生活への希望が感じられて好感を持ちました。それなら、ここで、もう2曲ほどOB会の曲、あるいはユースクラスとOB会との合同演奏もあってもよかったのではないでしょうか。また、それでこそ、歌声の縦のつながりが広がると思います。

    この曲も覚和歌子の作品だったのか

 「覚和歌子」という名前を意識するようになったのは、いつからでしょう。いろんな流行歌手と呼ばれる人の作詞をしていることは知っていましたが、映画『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつも何度でも」の作詞でレコード大賞金賞をとったことや、NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞をしたことも知っていました。最近では、映画『カラオケ行こ!』の中で、中学校合唱部が歌う混声合唱とピアノのための『たましいのスケジュール』より「影絵」や混声合唱とピアノのための『その木々は緑』より「その木々は緑」も・・・しかし、たとえ歌は知っていても、その作詞者は知らないということが多いものです。この日は、ご本人が舞台上で野本立人先生と対話する中で、「いつも何度でも」の誕生秘話など、いくつかのエピソードを聴くことができました。
 この日は、当然のことながら、2年前の第60回定期演奏会で初演された同声合唱とピアノのための組曲『ドラゴンソング』より「だがらからだなのだ」「これは棒っきれじゃなくて」が再演されました。この合唱組曲、すでにいくつかの児童合唱団や女声合唱団で歌われているようですが、数少なくなった他の日本の少年合唱団でも、変声前のグループで歌い広がってほしいと思っています。「いつも何度でも」は、いくつかの児童合唱団によって歌われたのを聴いたことがありますが、誕生にまつわるエピソードを聞いてから聴くとまた違った味わいがあります。「ほしぞらとてのひらと」は、東日本大震災の被災地域の上に満天の星が広がっており、それを見上げた人々の想いを歌った歌で、知らないよい曲がまだまだあることを当日来場されていた作曲者の丸尾めぐみの名と共に心に刻みました。「リフレイン」は、もう、10年以上前に初めて聴いた曲ですが、最初は題名の奇異さや「くりかえし」という言葉ばかりが繰り返されることもあいまって、あまり好きになれなかった曲です。ところが、何度か聴くうちに、次第に生命の尊さや今を生きる大切さを描いたメッセージが声の重なりを通して聴こえるようになってきたことから、そのよさがわかりかけてきました。この日の演奏は、むしろ、この曲のよさをどう伝えようかというステージ上の人の想いが、伝わってくる演奏でした。
 アンコールは、覚和歌子作詞、当日来場されていた田中達也作曲の「夕焼けパレード」という夕焼けの幻想的な美しさが次第に伝わってくる曲が演奏され、最後は、おなじみ「アンパンマンの歌」で締めくくり、いろいろな意味で、フレーベル少年合唱団の前進を感じる定期演奏会となりました。

 京都市少年合唱団OB会合唱団 創立20周年 第10回記念演奏会
          令和6(2024)年9月16日(月・祝) 京都コンサートホール

      ああいう歌で満足しているとは思えなかった

 これまで、25年前に行われた第50回記念定期演奏会以来、約4半世紀にわたって断続的にではありますが、京都市少年合唱団のコンサートに通ってきました。それは、京都市少年合唱団の「少年」は、教育や文化の分野における定義では、義務教育を受けている児童・生徒を指し、その実際は少年少女合唱団でも、男子部を独立させていたからでもあります。

 そのOBは、おそらく長い歴史の中では、2000人ぐらいいるのではないかと思いますが、その歌声の断片は、京都市少年合唱団のコンサートが行われる京都コンサートホールのホワイエの階段を使ったウェルカムコンサートという、前座のざわざわした空間での3分程度のポピュラーな曲が2~3曲でした。今でも心に残っているのは、和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」。和田アキ子が歌った原曲が合唱曲にアレンジされて、想像以上の美しい仕上がりでした。しかし、少年少女時代にレベルの高い合唱曲を歌ってきたOBたちが、こんな昭和歌謡やポップス系の曲を美しく歌うだけで満足しているとはとても考えられませんでした。

 今では、日本のいくつかの少年合唱団にOB会のステージが設けられています。また、私は、市民合唱祭のようなコンサートではなく、単独の大人の合唱団の演奏をコンサート会場に聴きに行ったことは、六本木男声合唱団倶楽部のカンタータ「天涯。」(2013)だけですが、これは、独唱がボーイ・ソプラノの栗原一朗だったからです。少年少女時代にその魅力に取り憑かれた人たちの生涯学習の場としてOB合唱団を創ったという観点から、その歌声を聴いてみようという想いと、ネットで見たそのプログラムの充実ぶりから、コンサート会場に出かけました。

   次第に本格的な合唱に

 この会場には、段の何か所かに椅子が置かれており、もしかして、高齢の団員の方が座って歌われるのかと思っていましたが、そのようなことはなく、おそらく10代から70代までおられる団員の段を上る足取りはしっかりしていました。また、男女比は3:7ぐらいで、現役の京都市少年合唱団と比べると(現役の場合、男子は変声前と変声後に分かれますので)男子率がやや高い感じがしました。その中で、ソプラノパートに男性がいるので、カウンターテナーか、メールソプラノで歌い続けていることに、一種の感動を覚えました。

 第1部は、「あの鐘を鳴らすのはあなた」「あなたに逢えてよかった」「涙そうそう」という比較的ポピュラーな曲でありながら、団員たちの想いが詰まった曲で始まりました。編曲によって美しい合唱曲に変えられた曲は、静寂な空間ではより美しくというより、心温まる響きで会場に来ていた人たちには伝わってきたことでしょう。
 第1部のメインは、混声合唱のための組曲「蔵王」でした。蔵王連峰における四季の移り変わりを、特に冬を中心に描いているこの曲は、約60年前に創られて以来、混声合唱はもとより、男声合唱を含む多くの合唱団によって愛唱されてきました。私は、1曲1曲と同時に、曲の全体的なつながりを中心に聴いていましたが、最初に「蔵王連峰」のすばらしさを高らかに歌ったあと、季節の移り変わりが曲に反映していて、第5楽章「おはなし」では、バスのソロと合唱によるおじいさんと孫たちの対話といった興味深い曲もありました。このおじいさんは、何歳ぐらいを想定しているのだろうかと思いましたが、60歳ぐらいではなかろうか思いました。そういうことを意識して歌っていることが伝わってきました。全体として調和の取れた演奏で、いろんなパートに光が当たるだけでなく、穏やかさと激しさが交互に現れたりして、自然は生きていることを感じさせる仕上がりでした。

 ここで、指揮者の村上英明先生より挨拶がありました。これまでも端正な指揮をされる姿と軽妙洒脱なトークに接してきていたのですが、少年合唱団の練習会場にもなっている京都市立京都堀川音楽高等学校の校長はじめ市内3校の校長を歴任された京都市教育界の重鎮であることがわかって、かえって驚きました。普段の定期演奏会は、300人ぐらいの会場でやっているのに、この日は京都コンサートホールに1500人を集めて行われたことに、驚きにも似た感謝の気持ちを述べられました。その後、プログラムにない「瑠璃色の地球」が歌われ、調和のとれたその歌声は、松田聖子の原曲を超えるのではないかと思いました。

   第2部の3曲は、みんな違う歌声

 この日は、記念演奏会ということで、指揮者に京都市少年合唱団のOBで現音楽監督でもある加藤完二先生の客演指揮、バリトン大谷圭介 ソプラノ津幡泰子という指導者の先生方がソリストを務めて、フォーレの「レクイエム」がオーケストラ創立20周年祝祭管弦楽団の伴奏で、村上先生も合唱団員の一員として加わって演奏されました。実は、この曲は、加藤先生が京都市少年合唱団の音楽監督に就任された平成22(2010)年の第61回定期演奏会にも演奏され、さらに、コロナ直前の令和2(2020)年の終了演奏会でも抜粋が演奏され、人数的には同程度約1割の男声でも力強い歌声に変容したことに気付きました。同時に、女声も平成26(2014)年の定期演奏会における「永久ニ」以来力強い歌声になってきています。独唱者も後者と同じであるため、小中学生の歌声と大人の歌声の違い比較もできると思いながら、聴いていました。一言で言うと、男女とも、特に男声は、柔らかさと温かみが感じられる天国的な歌声が均一な音色で響いてきて、年齢・声の成熟・曲の解釈力・感情豊かな表現によって人はこのような合唱の歌声が出るようになるのかというのは、ある意味驚きでもありました。

 鳴りやまぬ拍手の中、アンコール曲としてヨハン・シュトラウスⅡの「美しく青きドナウ」が、堀内敬三の名訳で歌われました。最近は、文語体を嫌がってか?新しい訳詞も出ていますが、何を歌っているのか歌詞が観客に伝わらず、やはりこの訳詞がこの曲がもっている種々相を一番的確に描いていると思います。この歌は男声と女声の交わり合いが美しく、男声は木管楽器を思わせる音色が出ていました。この曲の演奏終了後、マイクを持った加藤先生は、
「この会場に、素晴らしい方がおいでになっています。」
という声に観客が振り向く中、OBで音楽界における出世頭と言ってもよい佐渡裕氏が会場の席から登壇し、加藤先生と対話。夜のコンサートと思って、ゴルフコンペに行っていたら、昼とわかって、途中で切り上げて会場に駆け付けられたとか。
「京都市少年合唱団で小学5年生から中学3年生まで過ごした5年間に自分の指揮者としての音楽生活の原点があり、自分は第2ソプラノという主旋律が与えられないパートであっても、「美しく青きドナウ」は、そのときに覚えた日本語の歌詞で指揮しています。」
など、合唱団への熱い想いを語った後、加藤先生の勧めで(あるいは予定どおりであってもリハーサルはなし)、ヘンデルの「ハレルヤコーラス」の指揮をしました。(加藤先生はバイオリン演奏)この合唱は、豊麗で輝かしい歌声で、第2部で歌われた3曲は、同じ合唱団でありながら、全く違う歌声で演奏されたように思います。

 北九州少年合唱隊第35回定期演奏会
          令和6(2024)年10月13日(日) 北九州芸術劇場 中劇場

   少年合唱・男声合唱・混声合唱

 会場に入って着席すると、早速プログラムを開いてみました。やはり何よりも気になるのは隊員の人数です。本来は、高校2年生で卒隊なのでしょうが、高校3年生の写真入りのメンバーが載っていいて、今年度は新入隊員も2人入って、12人で演奏することがわかりました。合唱だけなら、1人欠席があっても成立するでしょうが、北九州少年合唱隊のミュージカルの場合は、代役がいないため、隊員の健康管理には家庭の協力も含め細心の注意が求められます。なお、途中で主役級が役割交代するダブルキャストの劇は、観客の立場からすると、そこに教育的配慮は感じても「劇」としては違和感を覚えることもあります。

 今回の第1部は、全員合唱ではなく、1曲ごとに演奏者が舞台上に現れるというこれまでに見かけなかったステージ構成でした。「山のスケッチ」(少年合唱)「僕のこと」(男声合唱)「With You Smile」「宇宙戦艦ヤマト」(混声合唱)という4曲でしたが、最初の2曲は、ほぼ期待値どおりの演奏でしたが、特に混声合唱では、小学1年生から高校3年生までからなる隊員の10年以上の年齢差がどうなるだろうという期待と不安が混じった気持ちで聴いていました。特に「With You Smile」では、小学生隊員が必死で声を前に出そうとするのを高校生隊員が受け止めながらドラマのある一つの曲としてまとめていくという姿が見られ、不思議な感動を受けました。「宇宙戦艦ヤマト」は、隊の持ち歌のようになっていることもあって、動きも伴いながらも安心して鑑賞することができました。

   この日のために集まったOBも

 第2部の「OBのステージ」は、去年に続いて「少年時代」と「愛は勝つ」の2曲。この日のために遠方より集まってきたOBもいるでしょうが、年齢的には、10代・20代だと思われます。最近、現役人数の厳しさに危機感を感じた全国の少年合唱団(隊)のOBたちがOB会として1ステージ持つことが増えてきましたが、全員集まって練習する時間が限られるため、楽譜を持って歌うことが普通ですし、それはむしろ当然かと思います。人の心を動かすものは、演奏する音楽の質と同時にそのような姿勢だと思います。

 第3部は、北九州小倉少年少女合唱隊の友情出演でした。曲は、KJCポピュラーより「いのちの歌」「風になりたい」「Sing(シング)」「オブ.ラ.ディ、オブ、ラ.ダ」の4曲が演奏されましたが、今回も選曲が比較的耳になじんだ曲であるだけでなく、曲ごとにかなり緩急の差のある選曲で、振り付けがそれぞれの曲の曲想を活かした自然さを感じるもので、歌と動きが相乗効果をもたらすようなものになっていました。

   すべては、お釈迦様の手のひらの上で行われたこと

 第4部のミュージカル『西遊記』は、6年前に北九州少年合唱隊によって上演されています。私は、『西遊記』をテーマにしたミュージカルがあることさえ知りませんでしたが・・・。しかし、高校生の隊員にとっては、小学生の時に違う役で演じたことがあるという点でとりわけ興味深いミュージカルであったのではないでしょうか。『西遊記』は、唐の時代に中国からインドへ渡って仏教の経典を持ち帰った玄奘三蔵の長年の旅を記したフィクションですが、17年にも及ぶ旅のすべてを劇化することは難しいことから、45分ぐらいのダイジェスト的なものにし、さらに、原作にあるのかどうかは不明ですが、北九州少年合唱隊の伝統文化にもなっている「女装男子」も登場する作品に味付けされています。

 舞台のスクリーンに大きく映し出されたお釈迦様のシルエットを背景に新本君のおごそかな声が響いてきますが、これは、最後になって、この劇の全体像を象徴していることがわかってきます。三蔵法師役の下津君は、舞台上で歩きながら歌っていても、その動きにこそこそしたところがなく自然で品位のある存在感を示していました。また、このミュージカルでは、「善の中にある悪」や「悪の中にある善」といった複雑な人間模様は描かれていませんが、小さい子どもの観客にも善悪の区別がよくわかるような人物の描かれ方がされていました。

 善の側を演じる三蔵法師をはじめとする孫悟空(白井君)、猪八戒(吉田君)、沙悟浄(阿部君)は、映画やドラマではアクロバット的な立ち回りの動きをすることもあり、それが見どころでもあります。しかし、このミュージカルでは、そのような派手な動きをすることはできません。むしろ、歌と猿・豚・河童という生き物らしさや戦いの動きを表現することが中心になっていました。また、孫悟空の分身(手島君・城南君)をつくることで、孫悟空の妖術を表現しようとしていましたが、これも演出上の工夫といえましょう。

 むしろ、このミュージカルでは、悪の側を演じる金角(門谷君)銀角(上杉君)、牛魔王(白井君)羅刹女(河野君)のような悪役こそが、創意工夫によって悪を視覚化できるという演じ甲斐を感じていたのではないでしょうか。小さい子どもは、よくしつけられているほど悪役を演じることを嫌うかもしれませんが、成長するにつれて、人間を知り、悪役を演じる創意工夫を楽しめるようになるのではないかと思います。そのような意味で、お釈迦様や三蔵法師もいるので、全員が悪役を演じたわけではありませんが、同じミュージカルの中で、6年前の小学生の時と違う役を演じることには価値があったのではないでしょうか。さらに、水の天女役を演じた早矢仕君のセーラー服の制服を着ていたときには、あんなきれいな子いたかなと思わせるこの時期だからこそ演じられる美(これこそ北九州少年合唱隊の伝統文化)も、忘れることができません。

 最後にお釈迦様は声だけでなく姿も現しますが、この劇のすべては、お釈迦様の手のひらの上で行われたことだったのではないでしょうか。

 広島少年合唱隊第65回定期演奏会
令和6(2024)年11月3日(日) 広島県民文化センター

   団員の学年構成を見て

  ウィーン少年合唱団の来日がきっかけで全国的に少年合唱に対する人気が高まっていた昭和35(1960)年に創立された広島少年合唱隊は、同年に第1回定期演奏会を開催しましたが、そのときの隊員は、小学4~6年生91名で同(童)声合唱団でしたが、最近では幼稚園から高校3年生までの約40名の混声合唱団になっています。そのような隊員の年齢構成の変化は、選曲にも大きな影響を与えています。今回も、着席するとプログラムの隊員紹介のページを開けると、本科(小学4~6年)8名、予科(小学3年生以下)14名、研究科(中学生・高校生)18名という構成でした。少年合唱としての中核をなす本科の比率が低いと、選曲はかなり難しくなる一方、今年度は小学3年生が7人とかなり多いことから、2年後が期待できそうという印象を持ちました。

   Stage.1 平和を祈って

 今回の平和の歌は、弓削田健介作詞・作曲の「平和の曲」で統一されました。指揮は平田玉代先生で、全員での合唱です。弓削田健介の「平和の曲」は、心温まるメロディと力強い歌詞が特徴と言えます。「へいわのたね」は、子どもたちにとって歌いやすいメロディと、明るく前向きな歌詞が特徴です。「Beautiful Peace」は、調和と理解を促すメッセージが込められています。「Orizuru」は、折り鶴がもっている意味を音楽で表現し、その繊細さと力強さが感じられる曲です。これらの曲は、シンプルなメロディで覚えやすく、隊員にとっては割合歌いやすい曲ではなかったでしょうか。「おりづる」をテーマにした曲には、梅原司平作詞・作曲のものや、小森香子作詞・浜名政昭作曲の「折鶴のとぶ日」がありますが、「おりづる」は、学級やいろいろな児童合唱団で歌われることで知られており、「折鶴のとぶ日」は、曲を聴いての感動という点では抜きんでており、佐々木禎子さんの折った鶴の数は、最近では1000を超えるという研究も出ていますが、この曲の価値を下げるものではありません。いつの日か「おりづる」をテーマにしたステージがあってもよいのではないかと思いました。

   Stage.2 ぼくたちのレパートリー

 このステージは、指揮が隊長の三木貴徳先生に代わり、曲によって隊員の入れ替わりがありました。「歌よありがとう」では、予科が参加して歌われましたが、3年生が予想以上にしっかりした歌を歌い、この歌の持っている歌への感謝の気持ちが次第に伝わってきました。ボーイ・ソプラノは3年生の2学期から向上するということを書いた本を読んだことがありますが、それを実証するような仕上がりでした。「マイバラード」は、中学生のために作られた曲ですが、本科生と研究科生に2人3年生の予科生も加わって歌われました。みんなで心を合わせて歌うことで互いがわかりあえたなら素敵な仲間づくりができるというメッセージソングですが、山場への持って行き方が自然でよかったと思います。「ヒカリ」は、今年で3年連続定期演奏会で歌われているので、今年は歌詞を中心に聴いていましたが、これまで最初の暗い曲想から原爆のヒカリを描いているのかと思っていたのですが、そうではなく、人はいつも苦しい時にヒカリ(希望)を求めて生きるということを歌った歌であることがわかってきました。あとの2曲はまさに混声合唱だからこそ表現できる曲です。

   Stage.3 予科ステージ

 予科ステージは、例年ならば6人ぐらいの隊員の中には、初舞台の隊員もいるため、舞台上の自分の立ち位置がどこかわかりにくいこともあって、出雲先生による指導が入る年もあるのですが、今年は14名の予科生がさっと一列に並ぶと、それだけで今年は期待できそうだという気持ちになります。この日歌われた歌は、「ありがとうの花」と「世界を旅する音楽室」の2曲でした。「ありがとうの花」は、幼稚園・保育所で手話入りで歌われることが多い歌ですが、何よりも歌としてしっかり聞かせてくれました。「世界を旅する音楽室」は、小学校4年生の音楽の教科書に掲載されている曲ですが、音楽室が楽しい場所であるというわくわく感が伝わってくる演奏になっていました。

   Stage,4 世界を旅するステージ

 このステージもまた「ぼくたちのレパートリー」の外国曲版という感じのステージでしたが、「SIYAHAMBA」は、何度か聴いているのですが、今年の演奏はとりわけ宗教曲の雰囲気を感じました。「Cantar!」もすっかり広島少年合唱隊の定番曲になってきました。パートごとの歌に伴った動きが面白いのですが、初演のアステールプラザホールと比べて、間口の短いこの会場では、思い切って手を伸ばせないのではないかと感じました。「世界がひとつになるまで」は、創唱したYa-Ya-yahが「を」を「うおっ」と発声するようなややアクの強い粘り気のある歌唱であったのですが、広島少年合唱隊の演奏は、もっと清純な歌声で合唱曲としてのまとまりのよさを感じました。

   Stage.5 研究科・OBステージ

 この日は、男声合唱組曲「心の決めたところへ」より「むずかしいけど」と「九ちゃんが歌ったうた」より「心の瞳」が歌われました。「むずかしいけど」は、本格的な男声合唱曲が歌いたいという意欲を感じる歌でしたが、この合唱組曲の全体の中でどのような位置づけの歌だろうと思いながら聴いていました。「確かに真実に触れたと思うことがあった」という言葉が心に残る曲でした。「九ちゃんが歌ったうた」という合唱曲集があるのですね。そういえば、昭和50年前後(1974~1978)にビクター少年合唱隊が歌った「天使のハーモニーシリーズ」にも、九ちゃんが歌ったうた「涙君さようなら」「ともだち」「上を向いて歩こう」の3曲入っていました。しかし、この「九ちゃんが歌ったうた」は、「上を向いて歩こう」「明日があるさ」「ともだち」「見上げてごらん夜の星を」「心の瞳」の5曲で、横山潤子編曲というところが特筆できます。この日歌われた「心の瞳」は、九ちゃんが観客の前で歌うことなく日航機事故に巻き込まれて旅立った遺作として知られていますが、この日の演奏は、大切な人を思う気持ちや情愛が伝わるような情感豊かな演奏でした。

   Stage.6 創作ミュージカル『獅子の笛」

 創作ミュージカル『獅子の笛』が上演されるのはこれで5回目。第46回定期演奏会の初演の時は平田昌久先生が雄獅子、毘野先生が雌獅子という指導者が主役で、きつねたちの動物を隊員が演じていましたが、7年後のステージでは今田先生が雄獅子役、保本祐希君が雌獅子役となり、演奏するたびに、次々と隊員に主役級の役を譲っていくという大きな方向性が見えてきました。そして、神様の声以外はできるだけ隊員でという方向性で、雌獅子役や3匹のキツネ役はダブルキャストで行われるようになってきました。さて、ダブルキャストで行う時、入れ替わるときに観客に違和感を感じさせないことが大切ですが、雌獅子は、舞台上と観客席(外国)で分け、キツネは同じ場では活躍しないようにすることと、また、衣装や化粧を揃えることで、うまくつないでいました。もちろん、歌声は、それぞれの役に求められるもの(雄獅子は雄渾さと共に内省的な歌唱、雌獅子はそこはかとない色気、キツネは清純さや活力)を満たしていました。
 このミュージカルが始まる前に、幼稚園と小学1年生の隊員へのインタビューがあり、このミュージカルの好きな場面を問う場面で、フィナーレの祭りの場面と、雄獅子と雌獅子の歌を挙げていましたが、これは、このミュージカルの見どころをつかんだ回答でした。それよりも、今回は、簡素な舞台で、稲穂を置く神器以外の大道具はなく、4か所から発する強烈な光と鳥居をシルエットで見せるなどの演出効果も特筆できます。



その他のコンサート

オペラ(歌劇)『魔笛』『トゥーランドット』『ミランガ』『アマールと夜の訪問者』

ミュージカル(『葉っぱのフレディ』『ビリー・エリオット』『オリヴァー・ツイスト』『オリバー!』)

バーンスタイン ミサ

全国少年合唱祭(大会)(「日本の少年合唱の灯を守れ!」という人々の熱い想いで約10年間行われた全国少年合唱祭(大会)の記録)

少年少女合唱団(横須賀少年少女合唱団・守口市少年少女合唱団・大垣少年少女合唱団・全日本少年少女合唱連盟○○大会

市場誠一ピアノコンサート

秋山直輝ソロコンサート

貞松響ソロコンサート


栗原一朗ソロコンサート

小川歩夢ソロコンサート

未来和樹ライブコンサート

久保陽貴ライブコンサート

童謡コンサート
(まえだえいこと子供たちが歌う童謡の世界・平賀晴・平賀照 フリバLIVEコンサート)

ウィーン少年合唱団

パリ木の十字架少年合唱団

チェコ少年合唱団 ポニ・プエリ


マイキー・ロビンソン ソロコンサート

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