ウィーン少年合唱団プログラムB “ウィーン少年合唱団と巡る四季”
           令和6(2024)年6月1日(土)  ザ・シンフォニーホール

   プログラムAとBを統合して観なければ

 “ウィーン少年合唱団と巡る四季”というテーマを見て、このテーマは、8年前にオリヴァー・シュテッヒ先生率いるシューベルトコアのテーマと同じではないかと思いました。しかし、四季の歌にも多様なものがあり、曲は一部を除いてほとんど違う曲で構成されていました。しかし、プログラムを見ると、知っている曲は4割ぐらいで、初めて聴く曲の比率が高いことに気付きました。それはそれで新たな発見があってよいのですが、この日の団員は、珍しく楽譜を持って登場。約半分ぐらいの曲は、楽譜を見ながら歌っていました。さすがに、楽譜に目を落として歌うため表情が暗いということはなく、確認程度に楽譜を見ていたのですが、翌日のAプロは全曲楽譜なしで歌っていたので、きっとまだ練習途上の曲があるのだろうな(一部の団員だけが楽譜を見ているよりも、全員揃えている方がよいかな。)と感じました。

   季節の移り変わりを中心に鑑賞

 秋の曲は、イェイロの「秋」から始まり、ステージ全体に広がって歌うところから、定位置に並ぶと、ソプラノ(第1ソプラノ・第2ソプラノ)11人、アルト(メゾソプラノ・アルト)14人とアルトパートの充実が今チームの特色かなと思いながら観ていました。(アルトのパートの中には、変声前と変声中・後が混じっているとは思いながらも。)秋の中では、メンデルスゾーンの「秋の歌」のリヒャルト君とベンセ君のデュエットが情感豊かに歌われており、今回のメンバーでは、ソプラノはリヒャルト君に率いられているようにさえ感じました。リコ君のソロによる「エレンの歌2番」は、大人の女声を感じさせるような歌に仕上がっていました。フォーレの「レクイエム」より《アニュス・デイ》がどうして秋の曲なのかと思いながら聴いていましたが、ウィーン少年合唱団がフォーレの「レクイエム」を歌うことは珍しく、転調によって曲想が変化するところが、季節の移り変わりなのかと思いながら聴いていました。冬はクリスマスにまつわる曲を中心としながらも、日本の少年合唱団のクリスマスコンサートでは聴くことのできない曲もあり、クリスマスソングの奥行きの深さを感じました。アルネセンの「ゆりかごの賛歌」は、初めて聴く曲ですが、愛らしい佳曲です。

   日本の歌をどうアレンジするか

 ペルゴレージの「スターバト・マーテル」の第1曲がどうして春の初めなのかは不明ですが、アルトをソプラノが追いかけていく曲想の美しさは、これが春の訪れなのかと感じたりしました。「ふるさと」は、日本ではむしろ春から始まる「四季の歌」の最初か最後に歌われることが多い歌ですが、ウィーン少年合唱団の日本公演では、必ず歌われる歌です。しかも、昭和の中頃と比べて日本語が自然に感じるようになっています。それは、日本人の団員が必ず来日メンバーにいるほどになってきて、日本語に限らず団員間で母国語の発音を教え合うようになってきたことも大きいのではないでしょうか。ホルストの「2つの東洋の絵画」より「春」と「夏」が選ばれたことは、それが春から夏への移り変わりという意味の選曲だったでしょうが、どとらも初めて聴く曲のため、深く感じることはできませんでした。日本民謡を小倉朗が編曲した「ほたるこい」は、いかにも合唱のための編曲ですが、曲の意味よりも、合唱曲としての面白さを歌っているのではないかと団員も観客も感じたのではないでしょうか。「パプリカ」は本来、4年間の公演のレパートリーだったものが、1周遅れで実現したと言えましょう。この歌は、中が空洞の直方体のカホンという楽器のリズムに合わせて歌われましたが、Foorinが歌い踊った弾けるような原曲とは違った調和的なものを感じました。それでいいのです。ものまねではないのですから。

 最後は、夏休みをイメージしてか、ヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・シュネル「休暇旅行で」、最後のシュトラウスIIのワルツ「美しく青きドナウ」へと続いて、ウィーンに戻ってきた感じがしました。アンコールは、ジョルジ・ベンの「マシュ・ケ・ナダ」と、おなじみのアフリカ民謡「ショショローザ」というリズム重視の曲が配置され、多様性のある歌に挑んでいることを感じると同時に、「ショショローザ」は、シュテッヒ先生がアフリカの太鼓シャンベを叩き、横一列に並んだ団員たちが踊りながら歌い賑やかに締めくくりました。この歌は、8年前も歌ったなと思い出しました。退場してから、上手から3人が手を振りながら再登場するおちゃめな姿に心が和みました。

 ウィーン少年合唱団プログラムA “夢みる夜と魔法の世界”
           令和6(2024)年6月2日(日) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

   テーマにあった曲を集めて

 今回のテーマは、“夢みる夜と魔法の世界”というファンタジックなもので、オリヴァー・シュテッヒ先生も、「おとぎ話と夜の世界」と紹介しましたから、選曲とその配列と同時に、ピアノ伴奏だけでない器楽とのアレンジが観どころ・聴きどころになってきます。また、プログラムを見ても、宗教曲は少なく、劇やミュージカルあるいは、スタジオ・ジブリ作品の曲が多いこともあって、この日の団員は、楽譜を持たずに全曲が演奏されました。

   「千夜一夜物語」で始まるおとぎ話の世界   

 第1部は、ヨハン・シュトラウスIIのワルツ「千夜一夜物語」で始まりましたが、この曲は「アラビアンナイト」から取材したものですから、魔法のじゅうたんは出てこなくても、東洋的かどうかはともかく、西洋的ではない旋律を楽しむことができました。メンデルスゾーンのオペラ「真夏の夜の夢」より「妖精の歌」は、ウィーン少年合唱団の伝統的な持ち歌で、リヒャルト君とベンセ君のデュエットが楽しめました。ブルックナーの「真夜中に」は、先日聖フロリアン少年合唱団のCDで予習していたところなので、混声合唱と少年合唱の違いはありますが、アルトの二人の声が美しく、聴きどころを押さえて聴くことができました。
 本日のソロ曲は、Aプログラムだけですが、シューマンの「月夜」をリヒャルト君が歌いあげましたが、今、リヒャルト君は、ボーイ・ソプラノの頂点にあると感じさせる豊麗さと繊細さが同居する味わい深い曲に仕上げていました。なお、今年のメンバーで、ソプラノのソロ・ソリは、ほとんどリヒャルト君がしているという印象が強いです。映画「サウンド・オブ・ミュージック」は、日本の少年(児童)合唱団でも採り上げることがありますが、今年のウィーン少年合唱団は、ギターの伴奏で各パートから7人がそれを囲むようにして「エーデルワイス」を歌ったり、「ひとりぼっちの羊飼い」では、3人が交替でソロヨーデルを歌いました。第1部の最後の「ジェリコの戦い」は、子どもの頃、デューク・エイセスの歌を「軍歌らしくない歌だなあ。」と感じながら聴いたことを思い出しました。これは、黒人霊歌なのですね。

   映画音楽で広がる魔法の世界

 第2部は、聴き慣れないブルガリアとオーストリアの民謡で始まりましたが、この中にそれぞれの国の歌曲のもとになる要素があると感じながら聴いていました。「ふるさと」は、昨日に続き歌われましたが、この日は舞台全体に広がって歌ったので、昨日とは違った響きを感じました。個人的には、こちらの方が好きです。ここからが本日のメインで、映画『天空の城ラピュタ』より「君をのせて」では、日本語が自然に聴こえ、映画「ピノキオ」より「星に願いを」では、高音の美しさを味わい、ミュージカル『ウィキッド』より「エメラルドシティ」では、魅惑の世界へと誘い、映画『ハウルの動く城』より「人生のメリーゴーランド」では、空を旅するような時が過ぎ、再びウィーンに戻ってきました。
 ヨハン・シュトラウスIIの「アンネン・ポルカ」は、ゆったりしたポルカで、プログラム最後のワルツ「美しく青きドナウ」の間に、ロベルト・シュトルツのワルツ「プラターに再び花は咲き」を選ぶなど、シュテッヒ先生は、ウィーン情緒の伝統を身に着けた指導者という感じがしました。この日も、アンコールは昨日と同じ2曲でしたが、2回聴くと聴きどころがつかめるという感じがしました。



その他のコンサート

オペラ(歌劇)『魔笛』『トゥーランドット』『ミランガ』『アマールと夜の訪問者』

ミュージカル(『葉っぱのフレディ』『ビリー・エリオット』『オリヴァー・ツイスト』『オリバー!』)

バーンスタイン ミサ

全国少年合唱祭(大会)(「日本の少年合唱の灯を守れ!」という人々の熱い想いで約10年間行われた全国少年合唱祭(大会)の記録)

少年少女合唱団(横須賀少年少女合唱団・守口市少年少女合唱団・大垣少年少女合唱団・全日本少年少女合唱連盟○○大会

市場誠一ピアノコンサート

秋山直輝ソロコンサート

貞松響ソロコンサート


栗原一朗ソロコンサート

小川歩夢ソロコンサート

未来和樹ライブコンサート

久保陽貴ライブコンサート

童謡コンサート
(まえだえいこと子供たちが歌う童謡の世界・平賀晴・平賀照 フリバLIVEコンサート)

ウィーン少年合唱団

パリ木の十字架少年合唱団

チェコ少年合唱団 ポニ・プエリ


マイキー・ロビンソン ソロコンサート

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