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富田林寺内町の探訪

江戸時代の町並みが残る寺内町(じないまち)をご紹介します

大阪市内から近鉄電車で富田林駅まで30分。駅から徒歩10分。
ひっそりとした佇まいを残すお寺や町家を巡りながら、お手軽な歴史散歩に出かけてみませんか? 皆様のお越しをお待ちしています。

じないまち随想16 歴史町のまちづくりビジョン

 

日本はこれから本格的な人口減少社会を迎えて、地域社会のあり方が問われている。

大阪府下で唯一の、国の重要伝統的建造物群保存地区として、江戸時代の美しい歴史的町並みが残る富田林寺内町地区もこの例外ではない。昭和40年代前半までに伝統的な商工業が衰退して、残念ながら今では「限界集落」の様相を呈している。残された時間が限られている危機的な状況で、将来に亘ってこの貴重な歴史町を残すことができるのかどうか、地域資源を活かして地域社会全体で持続可能なまちづくりを出来るかどうかが問われている。従来の過疎地に限らず、日本の地域社会の何処も抱えている生き残りの課題である。

昭和の高度経済成長期の終わり頃、周辺地域では市街地のニュータウン建設が進んでいたが、富田林寺内町では行政と地域住民の協力の下で、多くの貴重な歴史的建造物(古民家)を町並み全体として修理・保存し、次世代に継承する取り組みが始まった。現在に至るまで、先人達の長年にわたる尽力のおかげで、最寄駅から10分も歩けば、別世界のような静かな佇まいが続く癒し空間が広がっている。以前からこの場所に暮らす人たちには、当たり前のように馴染んだ原風景である。大都会から程近いにも関わらず、幸いにも戦災や開発の波に洗われることがなかった町は、先人たちの知恵により世俗化された観光スポットとはならず、今では知る人ぞ知る「歴史と癒しの空間」となっている。PRが十分に足りていないのかどうかわからないが、地元・富田林の住民も、町の起源となったこの歴史地区の存在を知る人は多くない。

一方、歴史町の古民家(旧商家)の家主の大半は、戦前までに家業の大店を廃業し、多くは勤め人になっている。先祖から何世代にも亘り受け継いできた屋敷は、今では貴重な文化遺産となった歴史的建造物である。いずれもその外観修理や建物保存に懸命ながら、修理に必要な一部の公的助成を得られても建物維持にかかる経済的な負担は計り知れない。 

高齢化と少子化の影響でこの町の居住人口や世帯数も減少傾向にあり、残念ながら旧市街地は生活空間としての活気が感じられない現状である。しかし、ここ数年、新しい動きも出てきた。実際には口伝てで広まるのだろうか、或いは何とも言えぬ懐かしさに魅力を感じてだろうか、まだ全国区とは言えないこの歴史町の癒しの空間に遠来の訪問者は絶えない。近年、古民家の中には住まう人を失い空き家となる場合も出てきているが、幸いにも新たな借り手が見つかることが多い。古民家の内部をレストランや工房などに改築して、この町全体に新たな息吹と希望の灯りを燈してくれている。こうした新しい取り組みは、関西地区の昼間のテレビ番組で時折、紹介されることもある。

歴史町の持続可能な発展を考える時に、町並みの歴史文化遺産と共に、南河内地方の豊かな自然を活かした寺内町周辺の農産品や伝統工芸品といった地域資源の活用は欠かせない。寺内町の古民家を改装して、地元で採れた新鮮で安心な農産品を食材に活かしたイタリアン・レストランが来訪者の人気を博している。このお店は近くにある人気の陶芸工房の手作りのお皿に料理を盛っている。古民家の蔵を改装した自家焙煎の珈琲店もリピーターが多いと聞いている。自家製酵母と国産小麦に拘った手作りパン屋さんはお店を訪ねる人が絶えない。地元特産の鶏卵を原料に使用した手作りパン屋さんは昼前に用意した商品が全て売切れてしまうこともある。歴史的町並みに癒しと語らいの時間を求める来訪者に、古民家を改装した空間で、本物でこだわりの価値を提供して応えるお店が増えてきている。主役はいずれもこの歴史町の魅力にとり付かれた、元からこの町に住んでいない若い世代の人たちだ。

寺内町に惹かれる外部からの若い人材や地域資源を最大限に活用しながら、雇用機会と新住民を増やせる観光まちづくりを通じて、新たな経済的付加価値を産み出す仕組みづくりが重要である。そのための芽生えを感じてはいるが、持続可能なまちづくりに向けて地元住民を含めた寺内町に関わる関係者全体で、20年先、30年先の歴史町のあり方について、将来ビジョンの合意形成が急がれる。

富田林寺内町は戦国時代に宗教自治都市として開発された町で、周辺から多くの人々が集まって商工業で繁栄した歴史を持つ。戦国時代から450年間以上続いてきた寺内町の歴史や伝統、都心から電車で30分、最寄駅から徒歩10分の優れた立地条件、江戸時代以降の180棟に及ぶ貴重な歴史的町並み遺産、周辺の地場農産品などが地域資源の強みである。幸い地元には複数の大学もあり、若い人材との協働も可能である。この町は何よりもゆったりとした時間の流れを実感できる。世俗化した観光地でないことが最大の魅力である。

2015年春には、富田林寺内町で初めて古民家を改装したゲストハウス(女性専用)も開業予定だ。この歴史町に日本はもとより世界各地から多くの人に足を運んでもらいたい。日本の地域社会は今後、急速に衰退してゆくなかで、残された時間は限られているが、新旧の住民や商店主が将来ビジョンを共有できれば、観光まちづくりを通じて地域社会の生き残りが図れるものと確信している。(了)

2015年2月11日 管理人、じないまちボランティアガイド@横浜
 
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Information


富田林寺内町
(城之門筋)
(富田林市提供、禁無断転載)

富田林寺内町への道順
寺内町へは近鉄長野線富田林駅又は富田林西口駅下車徒歩10分です。先ずはじないまち交流館へお立ち寄りください。

散策地図がもらえます
富田林駅前の観光案内所又はじないまち交流館散策地図がもらえます。

立ち寄ってみたいお店

休憩所(トイレ)
じないまち交流館寺内町センターじないまち展望広場にあります。

車でお越しの方へ
寺内町は道幅が狭く、中には公共駐車場がありません。車でお越しの場合には、2014年2月に新しくオープンした富田林市営東駐車場(有料)をご利用ください。一般用の普通乗用車及び団体用のマイクロバス(1台分、市役所に要事前予約)を駐車できます。重要文化財・旧杉山家住宅まで徒歩5分、じないまち交流館まで徒歩15分。

尚、団体用の大型観光バスでお越しの場合は、富田林市役所にお問い合わせください。宜しくご協力をお願いします。


じないまち交流館
〒584-0033
大阪市富田林市富田林町9-29
TEL.0721-26-0110
FAX.0721-26-0110
(午前10時~午後5時、月曜休館)

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