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「旅で会った人たち」の項で紹介した内妻荘のご主人との約束?薦め?で一日だけ空き缶拾いをやることにした。空き缶を入れるビニール袋は20リットル位の大きさか。空き缶を拾うとなると視線は自然に下になる。しばらく空き缶はなかったがそのうち徐々に落ちているのを発見。しゃがんではこれを拾う。これがやってみるときつい。背中に荷物を背負い、前にズダ袋をぶら下げているから前屈みになると背中の荷物がうんと重く感ずる。おまけにずだ袋はおなかのあたりに回ってきてブランブランしているから空き缶を拾うのに邪魔になること甚だしい。不自然な体勢だから実に疲れる。しかも最初はへんろが空き缶を拾っているというのはいやみったらしくて実に照れくさい。車が通らない時を見計らって拾ったりした。空き缶は形を保ったままのものもあれば、車につぶされてぺしゃんこになっているものもある。ぺしゃんこになっているのはアスファルトに食い込んでいたりして拾いにくいのでなるべく形のいいものだけを拾うようにした。拾ってみるとこれがまた様々なことに気づかされた。全く中が空のもの、飲み残しがあるもの、たばこの吸い殻がつっこんであるもの、長く放置されていたためか土が入っているのもなど。最初は空だと思って不用意に拾い上げると中から飲み残しの液体が出てきてズボンを汚したりした。で、だんだん知恵がついてきて、拾うときには飲み口の方を下にして、体から少し離し、残っているものを出してからそれから袋に納めるようにした。たばこの吸い殻が入っているものは更に始末が悪い。飲み口を下に向けてだけでは吸い殻は出てこない。空き缶を何度か下に向かって振り下ろし中身を出す作業を行うことになる。土が入っているときも同じだ。この作業は結構手間がかかるし汚れやすい。なかなか中身が出ないときはまた道路の端に空き缶を捨てることになる。何ともやりきれない。吸い殻なんか入れて捨てるなバカと言いたくなる、全く。

途中で道路工事の人にあったら、「新聞に出ていた缶拾いをしているお遍路さんですか」と聞かれた。今日初めてやったのだから新聞に出るなんてそんな大それたことがあるわけがない。「違います、そんな人がいるんですか」と聞いたら何日か前の新聞に載っていたらしい。やっぱり奇特な方はいるのだ。
でも袋を一杯にするのにさほどの時間は要しなかった。一杯になったので内妻荘のご主人に指示された通り、ガードレールにくくりつけ、やれやれこれで一仕事終わったわいと気が楽になった。

翌日は缶拾いなどせずに普通に歩いた。ところがである、有るは有るは空き缶がとぎれなく落ちている道路って有るんです。こういうのを見せつけられると拾ってやらないといけないかななどと、妙な気持ちになってくる。それでもその日は袋もないし拾わずにやり過ごした。その翌日宿で不要なレジ袋を数枚もらい結局空き缶拾いを再会してしまった。これがまた四国の道をきれいにしているなんていう気になって妙に満足感をくすぐる。でやみつき状態に次第にはまっていきました。
こうなったら歩く距離と同じ数の缶拾いをしてやろうじゃないかなどとあほな目標まで立てたりして。1400km歩くんなら1400個の空き缶を拾ってやるか。

拾った空き缶は、自動販売機の回収用容器に入れて始末した。所がうまい具合に回収容器が備えて有ればいいのだが、自動販売機はあっても容器は置いていないというところがかなり多い。某メーカは回収容器が極めて少ないことが分かった。それからはそのメーカーの飲み物は買わないことにした。不買によるささやかな抵抗です。

ある時レジ袋がなくて歩いていたとき、たいして風も吹いていないのに足下にころころと空き缶が転がってきたことがあった。いかにも拾ってくれといわんばかりの風情であった。あのときは実に切ないに気持ちにさせられた。たまたまその時は旅館に荷物を置いてお寺に行く途中だったので、お寺で空き袋をもらって帰り道に空き缶拾いをしたけれど。

意気込みは良かったけれどやっぱりへんろと空き缶拾いを両立させるのはかなりしんどい話しでした。歩く距離は伸ばしたいが、空き缶を拾っているとどうしてもその足を引っ張ることになる。さらに歩いていても空き缶を探すことの方に神経が行ってしまい歩くことに集中しなくなる。本来歩きながらいろんなことを考える或いは何も考えずによく言えば無の境地で歩くというのが歩きへんろの有るべき姿ではなのだという考えからすると、これでは歩きへんろとしては邪道なことのようにも思えてくる。そして次第次第に空き缶を拾わなくなった。でもへんろをする事が目的ということで考えればこれで良かったと思っている。後悔はしていない。

この間拾った空き缶はざっと500個でした。これでも多少は四国の道をきれいにすることに役に立ったでしょう。
でも、投げ捨ては本当に止めてほしいというのが拾ってみての実感でした。

中途半端で内妻荘のご主人さん ごめん。

(追記)
ゴミが多く落ちているところというのは、汚いところだった。汚いから安心して捨てるみたいです。これは悪循環そのもの。
少し前にTVでいかに落書きをなくすかというのを放映していた。それを見ていると、落書きがされているところには更に落書きが増えるそうです。だから落書きされたら負けずにそれをきれいに落とすのが一番の対策なんだと言っていた。事実それで落書きがなくなったそうです。空き缶の投げ捨ても同じ心理によるものであることがじっと眺めていてよく分かった。


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