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  歩き遍路の基本情報

行程や費用など歩き遍路をする場合の基本的なことについて自分の場合をモデルに説明してみよう。

コースと歩く距離
私の場合は全行程を順打ちで通した。44番(大宝寺),45番(岩屋寺)や60番(横峰寺)は逆打ちする人もいる。ここはコースをどうするか迷ったが結局順打ちで通した。1日の歩行距離が35kmまで大丈夫なら順打ちで十分通せると実感した。
へんろみち保存協会の地図を参考に自分で累積計算した全歩行距離は丁度1200km。これには88番から1番までのお礼参りの距離も含まれている。概して遍路道の方が一般道より距離は短い。遍路道でなく距離の不確かな一般道もかなり歩いたので実際にはもう少し行っているかも知れない。それでも番外札所とかに寄らなければ大体こんなものだろう。
一日の歩行距離はアクシデントがなければ後になる程確実にのびる。体がだんだん歩くことに慣れて行くのが実感できる。ただ、足は痛いしマメはあちこちに出来る。それでも次第に歩けるようになるところが遍路の不思議でもある。これは信じてもらって良い。
初日は15km程しか歩いていないのにふうふうだった。それが次第に20kmが楽になり25kmもさほど苦ではなくなる。コース半ばを過ぎる頃になると一日35km位までは歩けるようになった。
日によっては25km程度しか歩かない時もあるがそんなときは、今日は歩いていないなんて欲求不満な心境になったものだ。

所要日数
所要日数は49日だった。平均すると日に25km程度。宿に泊まって「今日で何日ですか」と聞かれ日数をいうと、「ゆっくりですね」と言われた。ゆっくりと言われるといささかむかっとしたが、早けりゃいいってもんじゃないどろう内心では思っていたけれど。確かに早い人だと30日くらいで廻る人がいるらしい。しかし、早さを競って遍路をしているわけではない。30日くらいで廻る人はお寺に行ってまともに納経しているのだろうかと思ってしまう。
30km近く歩ければ40日前後で回れる計算になる。しかし、宿が適当な場所にないときもあるのでなかなか計算通りにはいかない。
最大40km歩ける体力があれば、日程の組み方はかなり楽になることは確か。

費用
どういう宿に泊まるかで費用は違ってくる。民宿だと一泊二食付きで6000円から6500円が相場。旅館はそれより500〜1000円高い。民宿の素泊まりなら4000円くらい。宿の食事は融通が利く。夕食のみとか朝食のみとかでもかまわない所が多いようだ。ただし、事前にそれは言っておかないと宿に迷惑をかけることになるので気をつけたい。費用は宿泊費がメイン。後は昼食代と飲み物。それにお寺の納経費用。納経帳の記帳代は300円。白衣への朱印は200円。掛け軸は確か500円。賽銭はその人の考え方次第でやればいい。
だから、特別な出費がなければ一日1万円で少しお釣りが来る。
40日で回れれば40万程度の費用だ。バスで廻っても88ヶ寺全部廻れば30万円はかかるから、それに比べて歩きがそれ程高いとはいえない。くちはばったい言い方だが、歩きとバスを比べた場合結果として得られるものが格段に違う気がする。
費用には、四国までの足代と遍路用品代は含んでいない。

宿泊
四国に行くまでは宿がとれるかどうか心配した。何日前に予約を入れればいいかなんて考えた。
結果としてはほとんど宿の心配はしなくて良かった。それは行った時期がシーズンを外れていたせいだ。予約は当日の朝か昼で大体済ませた。ただ、出来ることなら朝には予約を入れておくのが宿に対する礼儀だと思う。遅くなるほど泊める側に迷惑をかけることになる。
シーズン中は相当込みあうし、歩き遍路は予定が当てにならないことが多いと言うことで、敬遠されるらしい。従って数日前には予約を入れないといけないのかも知れないがそこの所はよく分からない。
キャンセルする場合は必ず連絡すること。これは絶対の礼儀だ。旅の途中でも予約を入れてあるのに客が来ないとぼやいていた宿のご主人がいた。無断ドタキャンは女の人に多いとか。宿の前まで来てみすぼらしいので止めるケースが結構あるらしい。私も一度だけ宿の前まで行ってここにだけは泊まりたくないという経験をした。それでも予約を入れてあったので我慢してそこに泊まった。外観同様部屋の中も凄いところだったが、布団にもぐって目を閉じてしまえばどこも一緒と腹をくくった。
宿には5時前後には着くようにした方がいい。大体食事が6時か6時半。その前に風呂に入ってくださいと言われるのでその時間も加味するとそんな時間になる。
ホームページに宿の善し悪しが載っているものがある。確かにいい宿もあれば悪い宿もある。しかし、立場を変えて泊める側から見ると、客にもやっぱりいい客悪い客がいるのだ。こんな客には泊まってほしくなかったと思われないようにしたいと思いつつ泊めていただいたがどうだったろうか。

歩く道
多くの歩き遍路はへんろみち保存協会の地図を見ながら歩いている。したがって遍路道を歩くケースが多い。遍路道といっても山道や野道ばかりではない。国道もあれば一般道もある。いわゆる遍路道と平行して一般道があるのでどこを歩くかの選択肢は幾つかある場合が多い。どの道を選択するかは歩く人の考え方次第。遍路道といっても歩いていてちっとも楽しくない所もあるしこんな所が何で遍路道なのかと思うような所もある。
地図上では国道沿いを歩くようになっていても、平行して旧道がある所もある。遍路道の指示通りに歩いていたら小さな街の公園を突っ切るだけという場合もあったりした。遍路道から少しそれて脇道を歩いたら見事な水車のシリーズものに出くわしたこともあった。
基本的に遍路道は遍路しか歩かないような所が多い。1〜2時間誰にも会わないということもある。男でも安全上不安な気分になることがある。女性の一人旅は避けた方がいい。とはいうものの女性の一人旅は結構目に付いた。遍路道は歩かないことにしていると言う女性もなかにはいたけれど。

地図
前述のへんろみち保存協会の地図が基本になる。これでかなりのルートは分かる。ただこの地図には問題が幾つかある。
・最近改訂されていない。最新版でも1997年。道路は1年で結構変わるので新しい道が出来ていて迷うことこもたびたびある。
・この地図に載っている目印になる建物はガソリンスタンドとか食堂、旅館が多い。いまでは無くなっている建物も多くうっかりすると曲がり角を見落ちしたりする。その町のメインになる公共施設などが必ずしも記載されていなくて、一旦迷ってしまうと今どこにいるのかすら分からなくなることがある。歩行ラリーに使うような地図だという印象を持った。ある時迷ってしまい土地の人地図を見せて道を聞いても土地の人もどうなっているのかと首を傾げていたこともあったほどだ。
・幹線道路が極めてわかりにくい。普通の道路地図とは違って遍路道中心に書いてあるので幹線道路がどこか見分けがつきにくい。普通の道路地図と併用して位置関係を頭の中に入れておくべきだ。

案内板
全体にはへんろみち保存協会の努力でかなり良く整備されていると思う。遍路マークと地図をにらめっこして歩けばそれ程迷うことはない。山道は大体は一本道であるし遍路マークがこまめに取り付けられているのでそれに従えばまず大丈夫。以外と駄目なのが街中。こちらの方は道が錯綜している割には案内板や遍路マークが少ない。道に迷うのは町中が多かった。迷ったと分かってから道を尋ねることが多かったが、歩いている道に不安があったら早めに人に聞くのが勝ち。
歩いているときにその道は違うとわざわざ言ってくれる人も結構いる。四国の人は歩き遍路にはずいぶん親切だと感謝した。

寺の参拝
普通で20分ほどを要す。
輪袈裟をつけ身なりを整え、山門で一礼して入る。荷物と金剛杖をベンチなどに置く。
納経は本堂と大師堂の二カ所では必ず行う。普通の手順はまず灯明と線香をあげる。ついで納め札を箱に入れてお賽銭を入れる。そしてお経をあげる。あげるお経は人それぞれ。般若心経と高祖宝号は最低条件。普通は開経げ、般若心経、ご本尊真言、御真言、高祖宝号、回向文を行うとガイドブックに書いてあったので私はこれに従った。団体も基本的にはこのスタイルだがこれ以外に三摩耶戒真言などを唱えているグループもあった。
その後納経所で記帳してもらう。納経所で手間取らなければこれで大体20分。
予定通りに行かないケースを挙げる。
まず灯明。風が吹いていたり雨だったりすると以外と手間取る。雨の時はマッチが湿気ってつかないことがあるので予備は用意した方がいい。
納め札に自分の名前など書いていなかったりすると慌ててその場で書くことになる。納め札はお寺だけではなく接待を受けたときに返礼として渡すことになるから、予め必要事項を記入して準備をしておくこと。
納経の時に団体が先にやっていると終わるまで待っていないといけない。納経は団体の横でやっても構わないのだろうが団体が大きな声でお経を唱えていると、とてもそんな気分にはならない。待つしかない。
納経所も同じこと、団体が先にいると待たされる。一つならまだいいが二つ以上の団体が先行していたら結構待つことになる。これで所要時間が違ってくる。
お寺で少しゆっくりしたいと思うと30分や40分はすぐに経ってしまう。一日に5寺や6寺も廻るときはお寺での時間を計算に入れておくことが肝要。
歩き遍路の場合はお寺はトイレタイムでもある。トイレは生理的に必要なときに必ず有るわけではないのでともかくお寺ではトイレに行ったほうがいい。
帰りにはまた山門で一礼するのが礼儀。
蛇足だが、金剛杖を杖立に置いて忘れそうになったことが何度かあった。各寺には忘れたと思われる杖が数本から多いところでは数十本置いてあった。お杖は弘法大師の分身なので忘れたら大変。最後までお杖を忘れないで持ち帰れたのでほっとした。

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