明けて、12月31日。益田で泊まったグリーンホテルモーリスは駅前で温泉大浴場も付いており、おかげでぐっすりと眠れて朝になるのもあっという間だった。益田発5:58の列車に乗るので起床も早かったのだが。いつものことながら、旅では早起きが可能だ。

出発の鈍行は2両編成。昨日の日本半周旅乞食らしき人影が隣の車両に乗っているようだったので、遠慮して(?)2両編成の後部車両に座った。最初の目的地は人丸という駅で、そこから少しバスに乗り、降りた先から川尻岬を目指すのが本日の主目的。本年の岬納め≠ナある。
放浪旅
VOL.1
サロベツ原野
VOL.2
室戸岬登山
VOL.3
日本海ヲ北上ス
(第1編)
(第2編)
(第3編)
VOL.4
津軽海峡
梅雨景色
VOL.5
まわり道
最果て行
(第1編)
(第2編)
(第3編)
VOL.6
厳冬の
道東一周
(第1編)
(第2編)
VOL.7
S字曲線で
離島の岬へ
(第1編)
岬もいろいろあり、観光客が大挙して訪れるような大衆向けの岬がある一方で、交通手段は何もなく、来れるものなら来て見ろ!くらいの、挑戦的な岬もある。

そういう意味では、筆者にとって岬探訪は登山家の山登りと同じ位置づけである。そして今回の川尻岬は後者に近い、未知なる魅惑の(?)岬である。

左の画像のような案内板があっても、今年の元旦の尻羽岬のように(放浪旅Vol6・第2編参照)、行く手が深い雪に閉ざされているような例もあるのだ。
1キロほど歩き始めると、山道になった。途中に、上のような看板標識が現れたが、いくら「中国地方」だからといって、絶世の美女といわれる楊貴妃がこんな片田舎に葬られているものだろうか(地元の方には失礼だが)。それとも親戚でもいるのだろうか?

途中、登ったり下ったりでアップダウンはあったが、所々に民家もあったりしたため悪路ではなく、それほど地の果てのような印象はなかった。案の定、民家の飼い犬にギャンギャン吠えられはしたが、想像外だったのは寒さくらいであった。
海に近くなれば当然、海からの強風で寒いのだが、想像していた以上に冷たい風であった。時折晴れ間も覗くが陽が差す時間は短く、およそ1時間余りの徒歩でたどり着いた岬では、真っ直ぐ立っていられないほどの暴風。波も高くて荒く、これぞ岬!と言わせる風景であった。
過去に50以上の岬を訪ねた中で、強風で泣きそうになった(?)のは宗谷岬・襟裳(えりも)岬・竜飛崎であるが、間違いなく今回の川尻岬もそれに入る。心の奥底に、悪天とはいっても西日本だから・・・というスキがあった。

海面に近づくと、波しぶきが風に乗って空に舞い上がっている。言ってみれば波が降っている¥態である。灯台から望めるのは果てしない日本海、絶え間なく押し寄せる荒波。ありふれた光景のようで、しかし他の岬では見たことのない風景が眼前に広がり、しばらくは寒さと時間を忘れた。
↑確かに最西端ではないが、西北端というのは・・・
 そう見えなくもないが。
石段をかなり登った先に灯台がある。
灯台の全容は後日、「cape」コーナーにて。
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かなり身体が冷えた。岬からの帰路で歩きながら少しは温まってきたが、バス停に戻り時刻を見ると2時間近くの待ち時間がある(それも前のバスが行ってから10分近くしか経っていなかった)。仕方なく、近くのゆうちょ銀行のATMコーナーに篭城=B暖房は効いていないが、外よりはマシだ。
余談だが、1時間以上居た間、一人もATMの利用者は現れなかった。

篭城中に、この後の旅程を考えていた。時間があれば、本州最西端を探訪してみようと思っていたが、天候が決して良くないので日暮れも早いと思われ、中途半端な時間帯ではあった。しかし運が良ければ綺麗ではなくでも落日が見られるはずで、川尻岬への道のり以上に未知で距離も長いが、行ってみることにした。
人丸駅に戻り、再び山陰線に乗車。相変わらず寒々とした車窓は変わらず、本州最西端「毘沙ノ鼻」に最も近い梅ヶ峠(うめがとう)駅を目指す。山陰線の益田〜下関間は特急・急行のないローカル区間であるが、車内は意外に混みあっていた。15:20頃に梅ヶ峠に到着。
結論から言うと、本州最西端にはたどり着けず再訪することとした。入り口を間違えたようで、途中で道がなくなり退却した。山を越えないルートだと時間がかかり、日没後になる。

気を取り直して、海沿いの駅に降りて落日に期待することにした。梅ヶ峠から10分、下関に程近い福江駅で降りると、目の前が海。17時少し前で、まだ明るかった。

再び暴風に見舞われた。海に沿う国道は歩く人もなく、車も猛スピードで行き交っていた。もう少しで、道路も波を被りそうな勢いの中、日暮れ風景を撮った。
下関では、駅前の下関ステーションホテルのサウナで休息。凍えた身体に風呂は最高だった。
外は雪が舞い始めていた。ちょうど1年前は北海道を旅していて伊達紋別近くの銭湯に入ったが、寒さはあの時と変わらない気がした。関門海峡をくぐり抜け、九州に入っても寒さは変わらず、門司や小倉のファストフード店で時間を潰しながら、今年の年越し列車、「ドリームにちりん」を待った。
〜 第1編終わり・第2編に続く 〜
(第2編)
VOL.8
目指せ!
本州最西端
VOL.9
日本半周
一筆書きの旅
(第1編)
(第2編)
(第3編)
VOL.10
続・日本半周
一筆書きの旅
(第1編)
(第2編)
(第3編)
VOL.11
リベンジ!
尻羽岬
VOL.12
前人未踏?!
本州一周の旅
(第1編)
(第2編)
(第3編)
VOL.13
東京発、
最西端経由
最東端行き
(第1編)
(第2編)
(第3編)