放浪旅
(第3編)
〜 第3編 目指せ東京・太平洋岸をひたすら南下 〜
途中全く目が覚めた記憶がなく、2009年は青森到着の数十分前に幕が開けた。外は真っ暗で天気が良いのか悪いのか分からない。定刻に青森に到着すると、乗り継ぐ特急「つがる」の発車までの時間にホームの立ち食いソバを食べた。冷たい空気に晒される中での、ソバの熱さとのギャップがたまらない。立ち食いソバは日常的でも、駅のホームで食すのはかなり久々。余程美味そうに食っていたのか、たちまちスタンド周辺には客が群がった。
いよいよ今日から2日間かけて東京へ帰るわけだが、まずは元旦ということで初日の出を見なければならない。昨年は宮崎県の日向灘で、一昨年は北海道の釧路で、それぞれ美しい日の出を見られた。今年はどうだろうか。
今年は、下調べもせずに時間的にピッタリだということで、小川原湖を選んだ。地図を見る限り、日の出の角度(?)は良さそうだ。しかも外は明るくなってきて期待は高まる。野辺地で乗り換えた普通列車を上北町で下車し、東へ歩くこと約10分。
ひっそりとした寂しい湖畔に、赤い光が差し込み始めた。雲の間、林の向こうからではあるが、姿を見せた太陽は眩しすぎた。
画像のとおり雲は多いが、それでも陽は差しており穏やかな元旦であった。湖畔は、たまに地元民が犬の散歩か何かで通りがかる程度で、静かさそのもの。
1時間程度佇んだあと、駅へ引き返した。穏やかとはいえ、東北の冬はさすがに寒い。ついつい、おしるこ缶を買って飲んだ。
八戸まで出てからは八戸線に乗り換え。ここから太平洋沿いにひたすら南下を続ける長い旅が始まる。
元旦に限り新幹線をはじめとする列車が全て乗り放題のフリー切符があるのは知っていたが(JR東日本)、そのせいか八戸駅は非常に混んでいた。
八戸からは八戸線「うみねこ」号に乗ったが立ち客も出る大盛況。どうやら新幹線から乗り換えてきたと思われる客もいて、元旦早々旅を楽しむ人は多いようだ。
確かに外は晴天で、しばらくすると車窓に広がる太平洋が真っ青で美しいとあれば旅にも出たくなるというものだ。
今日はどこで途中下車するか決めていなかったのだが、冬ならではの澱みのない美しい海を見たくなった。
鮫駅を過ぎるとますます海は間近に。列車の本数は極端に少なくなるが、大久喜駅で途中下車し、約2時間のインターバルを使って、種差海岸へ向かった。
思えば八戸線に乗ったのはまだ2度目で、しかも1度目は夜で車窓が暗かったので、これほど海に近いことに気付かなかった。徒歩数分で太平洋の大海原にたどり着く。夏なら海水浴客が多いのだろうが、真冬は静かな海である。砂浜も足跡一つない。前の日の朝は網走付近の荒れたオホーツク海を見ていたから、そのギャップになおさら驚く。これぞ、見飽きることのない海。時間もゆっくりと流れている気がした。
青森県では日本海岸の五能線が海沿いを走る路線として、そのすばらしい車窓とともに有名だが、八戸線も五能線に引けを取らず、なかなか素晴らしい風景である。
日本海という暗く重厚なイメージと、明るく燦燦と太陽が降り注ぐ太平洋との差が、知名度の差になっているのだろうが、これほど絶え間なく海を見られる路線は全国を見ても珍しい。
それにしても、この旅の初日の大荒れ日本海に始まり、昨日・一昨日のオホーツク海、そして今日の太平洋、日本の海の様々な表情を見られてラッキーである。
素晴らしい風景は睡魔にも勝つのであろう、前日は車中泊で大して眠れていないのだが、列車でウトウトすることもなく、車窓が太平洋から離れるとほどなく終点の久慈に到着。
乗り換え時間が短いので途中下車することなく三陸鉄道北リアス線へ。関西チックな駄洒落に苦笑しつつ乗り継ぎ。こちらもそこそこの乗客の数だ。
八戸線と同様、生涯2度目の乗車だが車窓などほとんど覚えていないのでほぼ初めて乗る感覚であった。一時的にツアー客と思しき(元旦早々だが)大勢の客が乗り込んできて驚いた。
ツアー客(?)がなぜわざわざこのローカル線に乗ってきたのか、理由がわかった。途中に下の画像にあるようなダイナミックな車窓があり(今は亡き高千穂鉄道のような・・・)、それが目当てだったのだ。高架橋の上では徐行運転。このローカル線ならではのサービスが非常に嬉しい。澄んだ空と青い海を存分に見られて、私も含め乗客は皆、再びこの路線に乗りたくなったはずだ。
ただ、意外にも三陸北リアス線は路線名に反して海沿いばかりではなかった。途中から山がちになり、トンネルも増えた。変化に富んでいて面白いが、こうなると吹雪の真冬に乗るのも趣がありそうだ。久慈から約1時間半で宮古に到着。ここでも乗り換えに余裕はないので、いそいそと山田線に乗り換え、釜石を目指す。