第2編 冬を求めて道央縦断
網走で迎える新年2日目。前日はホテルの大浴場を貸切状態で泳いだ(?)ためか、心なしか身体が温かい気がした。・・・と思ったのも束の間、外に出てみると粉雪が舞う朝だった。
今日は道央を突破し、帯広まで向かった後折り返しで本州へと戻る旅程。毎度毎度の強行軍ながら、冬を実感するべく、途中下車も予定している。発車間際に北見行きの各停列車に乗り込んだ。
放浪旅
暖冬という先入観があったが、車窓を見ていると網走湖が全面凍結している様子など、やはり北海道には冬があったなと実感した。雪もそこそこ積もっている。北海道の北の端まで来れば、やはり冬は寒いのだ。
しかし、約1時間で北見に到着すると、再び暖冬かという気になった。いくら寒さのピークが2月だとは言っても、北見のキーン≠ニ凍りつくような寒さは全くなかった。もちろん、自分が寒さに強くなったわけでもない。
最初の途中下車は、北見から1時間足らずの町、生田原(いくたはら)。現在は隣の遠軽町と合併されている。特急が来るまでの1時間、街中を散策する。上下の画像のとおり、青空が広がって積もった雪が眩しい。
山あいの町で晴れているとなれば当然、寒くなる。手袋を外していると途端に指先の感覚がなくなっていくので、シャッターを切るとすぐに手袋をはめた。昨日の影響でまだ若干足が痛いので、ゆっくりと雪の感触を楽しむように歩き回った。
石北線に並行する国道はなかなかの交通量で、それにつられているのか、正月の朝にしては人の往来も思ったよりも多かった。特に何を見るでもなく、1時間はあっという間に過ぎた。駅の待合室のストーブの暖かさが身に沁みた。
ところで、前日にも尻羽岬付近で目にしたが、明らかに人の住んでいる気配のない廃屋(と言っても朽ち果てているわけでもない)が、この生田原の町でも目についた。
一際多い屋根の雪がそれを物語っているのだが、高齢化社会の縮図というか、地方景気の悪化の象徴というか、このまま都市圏にだけ人が集中する社会が来るのかもしれない。
歩き回る旅は、そんな世の現実を教えてくれる機会も与えてくれるものだ。
定刻どおりに特急「オホーツク」が到着。車内(自由席)は混雑でもガラガラでもない適度な乗車具合で、窓側の席に落ち着いた。何しろここから先は北海道の屋根≠ニもいうべき石北本線の車窓のハイライトで、どんなに暖かい車内で居心地が良くても睡魔に負けるわけにはいかない。
ところで、出張とのコラボレーションも含めると北海道への旅は数えるのが面倒なくらいな回数になっているのだが、石北本線の車窓は今まであまりじっくりと見た記憶がない。前日の睡眠不足の影響で眠ってしまったり、腹を壊してひたすらトイレで嘔吐していたり、あるいは夜行の「オホーツク」に乗っていて寝ている間に通過していたり・・・。今回の目的は、この車窓でもある。
晴れ間が広がったかと思えば途端に雲が立ち込めて吹雪いていたり、山の天気が変わりやすいうえにこちらも高速で通過しているので、車窓はまるで早送りの画像のようだ。そんな中、人家の見当たらない大自然の車窓に現れる、高速道路とおぼしきコンクリートの塊は何とも不釣合いだ。
上の画像は車内から撮ったものなので若干ピンボケだが、遠軽〜上川の間である。この区間の車窓が石北本線のクライマックスだと思っているが、この中でも特に白滝〜上川の約40キロの間は、普通列車が1日1往復行き交うだけの、おそらく誰も住んでいないと思われる区間。
その間には上白滝という駅があり、かつては他にも駅があったと記憶しているが、真の旅乞食なら、1日1往復しか走らない普通列車に乗らなければいかんな・・・と自分の甘さ(?)に気付いた。ちなみに、上白滝〜上川間の1駅で34キロあり、約1時間を要する。
途中の信号場で通過待ちがあるとはいえ、普通列車で1駅に1時間とは東京どころか他のどの地域にもない北海道ならではのダイナミックさである。
・・・と、ここまで書くと賢明なる読者の諸兄は気付くと思うが、とても乗りたくなってきた。
そんなことを考えているうち、列車は上川へ。上川は大雪山・層雲峡観光の拠点だが、思えば4年数ヶ月前、現在の会社に入社直後の研修が終わってからそそくさと移動し、翌日層雲峡を旅したのが最近のことのように懐かしい。ある意味、凱旋の通過となった。
以前に来たことのある地では、その当時の自分を思い出すのが面白い。そんなうちに時間は過ぎ、悲願の(?)眠らずに石北本線の車窓を満喫≠果たした。1時間ほど前の車窓が嘘のような街並みが広がって旭川に到着。ここから富良野線に乗り換える。
(第2編)