放浪旅
鉄道のない天草島では、バスが唯一の公共交通機関。正月ダイヤということで本数は少なく、1本逃すと命取りになる。フェリーの着いた松島からは、天草島の中心都市・本渡までのバスに乗る。あえて、島の南岸も通る大回りの経路のバスに乗った。
そのような経路をたどるバスだけに、終点まで乗りとおした客は筆者だけだった。起伏に富んだ面白い行程だった。島の中とは思えないような山中をたどったかと思えば、海岸線をひた走ることもあり、民家の軒先を掠めるような区間もあった。1時間半があっという間だった。
本渡に着くと、離島とはいえ一部の島と橋でつながっていることもあってか、人の多さ・車の多さが意外だった。ここで、最終目的地の岬の麓まで行くバスに乗り換えるが、乗り換えに2時間近くあるため海まで散策することにした。待合室は込み合っていて、みな箱根駅伝中継に見入っていた。
夏なら海水客でごった返すであろう海も、この季節は静かで美しかった。本渡バスセンターまで折り返す時間を計算に入れながら、さらに海沿いを北に向かって進んだ。
八代からのフェリーでは遠かった雲仙岳も、相変わらず雲に霞んではいたが、海をはさんで間近に望めた。下の画像は、島原半島と雲仙岳である。
本渡では“ご当地コンビニ”EVERY ONE で大型のおにぎりを買い込み、富岡行きのバスに乗る。富岡はこのたびのゴールとなる岬・・・四季咲岬への起点となる地である。再び、民家の軒先を掠めるような、対向車が現れるたびに道を譲り合うような、そんな田舎ならではの光景の中の旅路となった。
1時間のバス旅の末、富岡に到着。いよいよゴール間近だ!
富岡は長崎行きのフェリーも発着するターミナルだが、ここから北西に約3キロ進んだ地点に四季咲岬がある。この蛇行旅のゴールにふさわしい地点にあったわけだ。
レンタサイクルの文字に一瞬心が揺らぐが、陽の傾き始めた中を歩き始めた。
四季咲岬への道は車も通行できるよう舗装されており、標識も充実していた。かなり観光地化された岬のようだ。歩くにはややアップダウンの激しい道のりだったが、例によって(?)民家の犬に吠えられ、気持ちも高まる。
黙々と歩き続け、ついに到着。その名のとおり、花咲く畑のある岬だったが、一目散に灯台へ。緩やかにたどった山道の先に、こじんまりと、それでいて誇らしげな灯台の姿があった。眼下には、白波立つ東シナ海。ついに到着。なぜか、ため息が出た。
S字曲線の旅はこの四季咲岬が終点なのだが、家路へ帰る旅は、ここが終点ではない。富岡へ引き返し、長崎へフェリーで渡って京都行きのブルートレイン「あかつき」と新幹線を使う帰路である。富岡〜長崎のフェリーが思った以上に揺れた以外は順調な旅であった。
四季咲岬では灯台からの眺望を堪能した後、海岸に降り立った。
夕暮れの時間帯にさしかかり、雲間から夕陽に照らされて、西の果てまでやって来た旅路を振り返った。
海岸には所々に中国や韓国のものと思われる容器類が漂着(?)しており、西国を実感した。
改まって言うのもなんだが、この4日間で様々な天候と様々な地形を見て歩いて感じることができ、日本という国土の奥深さを知った次第である。外国ももちろん素晴らしい所はたくさんあるのだろうが、まだまだ日本にも未知の世界がある。
さぁ、次はどこへ行こうか・・・