放浪旅
VOL.10
続・日本半周
一筆書きの旅
(第1編)
〜SCENE2 山陰路を走破、九州上陸 〜
13時を過ぎて、ほとんど列車に乗っているだけにもかかわらず腹が減ってきた。西舞鶴では北近畿タンゴ鉄道に乗り換えるまでにちょうど良い50分くらいの時間がある。ここで食事ができる店があればベストだが・・・と思っていたら、東舞鶴に比べて地味な駅前ながら、駅前に定食屋があった。今日は食事運が良いらしい。刺身定食を食す。はまちの刺身が美味かった。食後に年賀状を書き投函。
実はこの日は勤務先の本社では通常営業日で、嫌な予感はしていたのだがやはり電話がかかってきてしまった。携帯なんぞOFFにしておけば良いものを・・・と、もう一人の自分は言うのだが、会社の者というより、取引先の人々に迷惑が及んではいけないという思いがある(偉そうな物言いだが)。旅乞食と言いつつ1年のほとんどはサラリーマンをやっている者の悲しいサガである。
そんな中途半端な気分でいる間に陽が傾き始め、時折強烈に西日に照らされた車内で、西舞鶴から宮津あたりまで、渋々PCを開いてメールチェック。当然、途中ではイーモバイル通信も途切れる。ヤキモキしたものの、天橋立に着く頃には、再び身も心も(?)旅モードになった。揺れる車内から撮るので画像は斜めになりがちだが、海を見ていると心が晴れる。
ところで、まだ全国の鉄道を完乗したわけではないが、ほとんどの区間は以前に通ったことのある区間で、そういう域に達すると、前回乗った頃のことを思い出して懐かしむ癖がつく。丹後半島には10年以上前の夏に訪れ、半島の突端の経ヶ岬まで行った。土砂降りの雨に降られたりしたのが記憶にあり、いま乗っている列車が網野で長時間停車している間に、ふとそのときのことを思い出した。
対向列車すれ違いのための長時間停車の間しばらく車外にいた。車内のほうが暖かいのは当然だが、座り続けで腰や尻が痛くなっていたのでちょうど良かった。空気は冷たいが、日差しは温かく空は青く広がっている。雪が全くないので、画像を見なおしても冬のような気がしない。駅周辺に人の気配がなかったのが少し気になった。
駅名板を見ると悲しいくらい錆び付いており、何とも言えない哀愁を感じてしまう。地方経済の衰退が言われて久しいなか、このローカル線もまた厳しい経営に直面しているのだろうなどと思いを巡らせた。
とは言っても、車内にはそこそこの乗客がおり、沿線に観光地を有していることの表れだと思えた。もっとも、年末年始のこの時期に車内がガラガラではどうしようもないかも知れないが・・・。
網野から先では乗車と降車を繰り返して乗客が少しずつ入れ替わり、やがて豊岡に到着。JR列車との乗り換え時間が短いため、小走りで乗り換えを急ぐ。大きなカバンを持った旅行客と思しきお年寄りには
気の毒な短時間だったが、人助けはしない主義(人助けされるのも嫌)なので、代わりに持ってあげたりしない。
すっかり空が暗くなり、城崎温泉に到着。この寒い中にもかかわらず、浴衣姿の湯治客が多い。1時間余りのインターバルを取っているので、さっそく数年前に旅した時に入った駅前の温泉さとの湯≠ヨ。温泉を目的に旅はしないが、旅の途中にあれば迷わず入るようになった。混雑していたが、温泉が最高だと思えるのは歳を取った証拠か。
入浴後に腹が減ってきたが、18時を過ぎたばかりの駅周辺は飲食店どころか弁当を売っている店もない。これが、旅先での食糧調達の難しさなのだ。何年経っても上達しないくらい難易度が高い。
そんなとき幾度となく気分を紛らわせてくれた(?)「じゃがりこ」でその場をしのぐことにして、一路山陰線を西へ。
1時間の乗車で浜坂へ向かうが、途中には餘部橋梁がある。外は真っ暗だがあえて窓の外をスローシャッターでパチリ。右の画像である。次は外が明るいときに来ようと思い直した。
餘部橋梁を渡ってほどなく、浜坂に到着。
駅前のコンビニ風の店が開いており、かにちらし弁当を調達。もともとカニはあまり好きではないためか、美味いとはいえなかったが、贅沢はいえない。腹が減っている勢いで、地元の名産品らしき餅も購入。甘党のせいか、これは美味かった。
浜坂から鳥取までは1時間足らず。車窓も真っ暗のため本を読んだりして過ごしたが、2両編成の車内はガラガラで、いくら県境を越える列車で、しかも夜とはいえこんなものかと心配になってしまう。この区間はほぼ全て普通列車である。
車窓に灯りが増えてくると、鳥取が近い。
鳥取では30分近い待ち合わせ時間を、駅構内のテレビ付き待合室で過ごした。年末の特別番組がやっている。そういえば、この時間になって今日初めて観るテレビだった。
普通列車で移動しても宿泊予定の米子にたどり着けるのだが、一日一本くらいは特急列車にのってみたい気がして、米子までは特急「スーパーまつかぜ」で1時間余りを過ごす。
長いホームを持て余す2両編成。何がスーパー≠ネのか知らないが隣りホームのローカル車両に比べれば確かに車外も車内も綺麗ではある。
しかし先頭の指定席車両に乗客はなし。最後部車両(つまり2両目)には私を含め5〜6名程度の乗客。大丈夫か、山陰本線。沿線に住んでれば毎日乗りたいが・・・。
車窓が真っ暗で退屈だからというのもあるが、特急列車に乗っている気分を味わう暇もなく居眠りしてしまった。途中の倉吉停車で目が覚めたが、城崎で温泉に入った効果と、特急ならではの座り心地の良いシートのおかげであろう。
眠るのにはちょうど良いといえばそれまでだが、けっこう激しく揺れた。
ヤケになって走っているような気さえしたが、それでも米子到着は定刻の21:49。
あんなに高速で走らなければダイヤ遅延になると思うと、JR西日本は相変わらずだ。
米子の駅前は忘年会帰りと思われる酔っ払い団体が数グループ。楽しそうで何より。
こうして、金沢から約15時間の乗り継ぎの1日を終えた。まだ残りは倍以上・・・!