VOL.1
サロベツ原野
VOL.2
室戸岬登山
VOL.3
日本海ヲ北上ス
(第1編)
(第2編)
(第3編)
VOL.4
津軽海峡
梅雨景色
VOL.5
まわり道
最果て行
(第1編)
(第2編)
(第3編)
VOL.6
厳冬の
道東一周
(第1編)
(第2編)
VOL.7
S字曲線で
離島の岬へ
(第1編)
(第2編)
VOL.8
目指せ!
本州最西端
VOL.9
日本半周
一筆書きの旅
(第1編)
放浪旅
(第2編)
(第3編)
VOL.10
続・日本半周
一筆書きの旅
(第1編)
(第2編)
(第3編)
VOL.11
リベンジ!
尻羽岬
VOL.12
前人未踏?!
本州一周の旅
(第1編)
(第2編)
(第3編)
VOL.13
東京発、
最西端経由
最東端行き
(第1編)
(第2編)
(第3編)
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良いことの後には悪いことが起こるものだ。
駅前にあるバスターミナルへ行き、翌日の納沙布岬行きのバス時刻を見ておこうと思ったが、何と1月2日は全便運休との掲示が。現地に着いて初めて知るとは・・・

天気予報では明日は雨。根室から納沙布まで歩くには遠すぎる。金が無いわけではないが、あまり好きではないタクシーに乗るしかないか。ちなみに風景をじっくりと見たいためレンタカーという選択肢はない。
根室駅に近いホテルに一泊し、翌1月2日を迎えた。天気は予報どおり雨。雪ではないのが不思議だが、それだけ暖かいということなのだろう。降り方も、雪に変わりそうには思えない降り方であった。

往生際が悪いので、知らないふりをしてバスターミナルへ行くが、窓口の職員は悪びれもせずに「全便運休です」とのこと。いくら休日とはいえ全便運休とは、乗客となる住民が居ないということか。

仕方なくタクシーに乗り、納沙布岬まで向かった。ラッキーだったのは、1万円少々で名所を廻ってくれるとのこと。そういう利用方法もあったのかと改めて気付いた。
広く真っ直ぐな道を、タクシーは快調に飛ばした。運転手の話では、この季節に雨は奇跡的とのこと。何も嬉しくない奇跡というのもあるんだなと思ったが、海に近づくにつれ風もかなり強くなってきて悲しくなった。

そんな天候では、いかに本土最東端とはいえ最西端と同様に人も少ないだろうと思っていたら、着いた納沙布岬には誰も居なかった。いくつかある店も全く開いていない。全く想像しない最東端到着の瞬間であった。

寒さよりも、雨と風が厳しい。その意味では最西端とは真逆であった。当然のことながら北方領土など見えるはずもない。
運転手に借りた傘を差しながらの岬撮影。このような記念すべき旅の岬探訪以外でも、ここまで悪天候だったことはあまり記憶にない。

じっくりとその場に居ることを噛み締めた最西端に比べると、驚くほど早々に引き上げた。タクシーを待たせていることよりも、あの暴風雨の中で佇むのは辛すぎた。

このように、何とも歯切れの悪い感じで、東京発・本土最西端経由・本土最東端行きは終わった。何事も、予想や妄想の通りにいかないことを、旅によって何度も経験してきたが、今回もまたその経験を重ねた。
タクシーには、根室半島を左回りするように戻ってもらった。納沙布へ向かうとき以上に、荒涼というか、殺伐とした風景が広がっていた。家はあるが、隣の家まで何百メートルあるのかというほど離れていて、むしろ人間の営みがあることのほうに驚く。

相変わらず止まない雨と風が、そういう気持ちに一層拍車をかけるような気がした。

お盆には大賑わいになるという神社にも寄って頂き、昨日に続く今年2度目の初詣≠すませた。大賑わいといわれてもピンと来ないほど、根室の町は静かだった。正月休みだからというのもあるのだろう。根室市街に戻ると、目に入る家も行き交う車も増えた。
根室市街に戻った後は東へ向かった。半島のため、オホーツク海から太平洋へはすぐに移動できた。
太平洋のほうがかなり波も高く荒い。根室車石(くるまいし)、花咲灯台、花咲港などいずれもこんな天候でなければ最高の風景のはずだが、いずれ晴天のときに再訪すれば感動もひとしおであろう。
運転手と北方領土の話になったとき、自分たちの領土ではないという雰囲気を感じて、何となく寂しいというか、やるせない気持ちになった。不法占拠されているというのが私の見解だからだ。
旅を楽しんでいるときに領土問題のことなど思うべきでないかも知れないが、納沙布岬の本土最東端≠フ文字を見て改めてそこが日本の最東端でないことを認識した次第である。

旅に戻ると・・・9年前の新年に訪れたこともある日本最東端の駅%訣ェ室にも立ち寄って頂いた。9年前、日本で一番早く夕陽に照らされた駅に再び訪れて、今度は冷たい雨に打たれた。

岬と駅と、最西端から最東端に移動した数日間。顔もほころぶ晴天も、顔を引きつらせる荒天も、日本が実はとても広くて変化に富んだ国であることを教えてくれるための演出だったのかも知れない。

さぁ、また次の旅へ向かおう。