白い古書、ぞっき本も、時を経て読むと面白いものです。

今月の一冊は、これ!



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1971.4.5 増刊号の表紙







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増刊号に載っている1922.4.2 第1号表紙写真







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岩田専太郎・画「女の装い五十年」から《現代》







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特別復刻版の「時代小説傑作集」が掲載された1926.10.1 秋季特別号の表紙







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第三特集「昭和事件史」から「再録『血文字お定』の情痴」1頁目







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1926.10.1 秋季特別号の編輯後記の頁に入った週刊朝日の広告。「男も女も必読の國民的雜誌」とある。



創刊50年記念   
週刊朝日
      増刊4/5号


編集長:小松 恒夫
朝日新聞社(1971年発行)

 週刊誌を手にしたことがないという人は稀でしょう。個人病院の待合室、理美容院、喫茶店、食堂、ラーメン屋……最近では銭湯の休憩場にまで置かれています。自分で買って読むほどのことはないが、目の前にあって暇を持て余していれば見る――という人は多いと思います。また、旅の車中の暇つぶしに買ったりもするが、新聞広告、地下鉄の吊り広告の惹句を眺めるだけで内容は想像でき、そんな話ならば買って読むほどのこともなかろうと、買う気にもならない――という人も多いと思います。私も現在はその一人ですが、かつては定期購読したこともあったのです。

 一冊は『週刊新潮」。創刊は1956年ですが、私が初めて手にしたのは3年後のこと。ほのぼのと優しく郷愁を誘う谷内六郎さんの表紙絵が書店の平台の上でひときわ目立っていて、手に取ったのでした。当時、創刊時から連載中の柴田錬三郎さんの「眠狂四郎無頼控」が「続三十話」に入っており、何気なく立ち読みを始めたのですが、これがすこぶる面白く最後まで読み切ってしまったのでした。それから2年余り、『眠狂四郎独歩行』の途中まで買い続けたのですが、一話完結の連載で、ある程度の分量になると即単行本になるのを知り、「そちらを買った方が得かな」と購読をやめてしまいました。

 もう一冊は『朝日ジャーナル』。1959年3月創刊ですが、買い始めたのは4、5年も後だったと思います。当時、仲間内でも創刊号から定期購読しているという者も多く、事あるごとに『ジャーナル』の論評、識者のコメントなどが会話のあちこちに出てきて、目を通していないと何の事か分からず、遅れを取ったようで居心地が悪く、購読を始めたのでした。しかし半年もすると、一冊読み終える前に次々と新しい号が発行され、追い付かなくなりました。こうなっては“積んどく”だけの号が多くなるばかりで、お金のない私には無駄。面白そうな号を買うだけにして、定期購読はやめてしまいました。

 これまでに買った週刊誌は数え切れませんが、今現在書棚に残っているのは今回紹介の『週刊朝日増刊号』と、『サンデー毎日緊急増刊・三島由紀夫の総括』(1970年12月23日)、『週刊サンケイ増刊号・総集版三島由紀夫のすべて』(同年12月31日)、『週刊朝日増刊・小野田元少尉ルバング30年』(1974年3月25日)、『週刊サンケイ緊急増刊・最後の日本軍人 小野田少尉の全記録』(同年4月3日)、『週刊文春緊急増刊・昭和天皇の生涯』(1989年1月16日)、『週刊朝日緊急増刊・昭和逝く』(同年1月25日)、『週刊読売臨時増刊・天皇崩御』(同)、『サンデー毎日・復刻版 天皇の昭和史』(同年2月4日)、『週刊読売臨時増刊・即位の礼全記録』(1990年11月27日)ぐらいなもの。『朝日ジャーナル』にいたっては、1981年10月1日増刊「日本が疾走した10年 1960年代」1冊のみ。たかが週刊誌という思いがあったのでしょう、読む端から捨て、引っ越しの度、いの一番に処分対象となるのが古雑誌でしたから、たまたま取り置いた増刊号、特別号も廃棄していました。ですから上記のものは意識して残したわけでなく、偶然残ったと言うべきかもしれません。

          ☆          ☆          ☆

 編集メモに「『週刊朝日』を通じて見た世相史といったものを、基調にしました。『週刊朝日』という雑誌の性質上、それは、政治とか経済といった面にはいかないで、どうしても、事件や風俗を追うことになりました」とあり、内容は下記の目次を見ていただければわかると思います。

 1926年10月1日秋季特別号(定価30銭)の編輯後記の頁に入った週刊朝日の広告を見ますと、当時も今も構成・内容にさほど変わりないことがわかります。《週刊朝日 定価一部十二銭 一箇月四十銭(送料一部一銭)〈男も女も必読の国民的雑誌〉連載小説 西南戦争 平山蘆江 近年これ程面白い小説は又とない。明治維新の傑人西郷南洲の面目が躍如として描き出されてゐる。/本当にあつた事 人生の悲喜劇、読んで泌々と味はされるのが本誌独特の「本当にあつた事」である。/内外時事解説 日本はもちろん、欧米支那の出来事についての平易な解説。これも本誌の一大特色。/コドモ相談と家庭記事 ハガキ一本で名流医家にそうだんが出来るコドモ相談欄。美容衛生、料理、手芸等家庭向のことなら何でもわかる家庭記事。/芝居と映画 西可の劇信は楽屋裏まで見せてくれる。映画解説は内外の名優を目の前に拉れて来る。/その他 名流作家の小説、文壇ゴシップ、脚本、講談、地方色、懸賞募集の漫画等興味と実益を兼ね備へそして定価は至廉だ。/朝日新聞販売店と書店でお求め下さい》

 再録された「『血文字お定』の情痴」を読んでみますと、先ずその文章の品の良さに感心します。今時の週刊誌すべてがそうだとは言いませんが、興味本位に煽情をあおり劣情を刺激するようなエログロ記事が多い現在と比較しますと、出版・編集に携わる者、書き手の矜持の持ちようが違うように思われてなりません。書き手の志の問題でしょうが、今「お定事件」が起きたらば、週刊誌はどんな書き方をするでしょうか。この再録記事は、週刊誌の在りようを考える一助にもなりそうです。

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 ◆ある日、本屋に並んでいた週刊誌◆ 現在何誌の週刊誌が発行されているのか私には分かりませんが、街の書店で週刊誌の棚をざっと眺めただけでも下に記しただけあります。これがすべてではなく、他にもあるはずですから結構な数です。いきおい冊数の食い合い状態で、各誌とも発行冊数は伸び悩み傾向、採算割れで廃刊不安を抱える週刊誌も少なくないと言われます。それぞれに固定読者がいて、それなりに売れるから発行しているのでしょうが、どこも経営は苦しいというのが実情のようです。

 サンデー毎日(毎日新聞社出版局)、週刊朝日(朝日新聞社出版本部)、AERA(朝日新聞社出版本部)、Yomiuri Weekly(読売新聞東京本社)、週刊アサヒ芸能(徳間書店)、週刊現代(講談社)、週刊実話(日本ジャーナル出版)、週刊新潮(新潮社)、週刊大衆(双葉社)、週刊プレイボーイ(集英社)、週刊文春(文藝春秋)、週刊ポスト(小学館)、SPA!(扶桑社)、ダカーポ(マガジンハウス)、FRIDAY(講談社)、FRIDAY ダイナマイト(講談社)、FLASH(光文社)、FLASH EXCITING(光文社)、週刊ゴルフダイジェスト(ゴルフダイジェスト)、週刊ゴング(日本スポーツ出版社)、週刊サッカーマガジン(ベースボール・マガジン社)、週刊パーゴルフ(学習研究社)、週刊プロレス(ベースボール・マガジン社)、週刊ベースボール(ベースボール・マガジン社)、週刊アスキー(アスキー)、週刊少年サンデー(小学館)、週刊少年ジャンプ(集英社)、週刊少年チャンピオン(秋田書店)、週刊少年マガジン(講談社)、サンデージェネックス(小学館)、週刊コミックバンチ(新潮社)、週刊漫画ゴラク(日本文芸社)、週刊漫画サンデー(実業之日本社)、週刊漫画TIMES(芳文社)、週刊ヤングジャンプ(集英社)、週刊ザテレビジョン(角川書店)、週刊女性(主婦と生活社)、女性自身(光文社)、女性セブン(小学館)

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 ◆週刊誌のこと◆ わが国の週刊誌第一号は何か。週刊の一般雑誌という観点からすれば、明治10年(1877)3月14日創刊で毎週土曜発行の風刺雑誌『団団珍聞(まるまるちんぶん)』(団団社)。今の週刊誌と内容が似ているかどうかという観点からすれば、明治四41年(1908)2月1日創刊で大正9年(1920)9月5日の266号まで発行が確認されている『サンデー』(太平洋通信社)――と言えるでしょう。

 現在の週刊誌の先駆となったのが、大正11年(1922)4月2日同時創刊の『週刊朝日』(大阪朝日新聞社)と『サンデー毎日』(大阪毎日新聞社)。朝日は同年2月25日に『旬刊朝日』を創刊し、第5号から週刊にして『週刊朝日』としました。その後、産経が昭和27年(1952)2月23日『週刊サンケイ』を創刊、読売も前年11月に旬刊で創刊したものを7月3日から『週刊読売』とし、新聞社系週刊誌が出そろいます。

 初の出版社系週刊誌の登場は、昭和31年(1956)2月19日創刊の『週刊新潮』(新潮社)。以後、32年3月に河出書房が『週刊女性』を創刊(倒産のため4号で休刊、8月に主婦と生活社が再刊)、33年4月に『週刊ベースボール』『週刊大衆』、7月『週刊明星』、12月『週刊女性自身』が創刊。翌34年には3月『朝日ジャーナル』、9月『週刊時事』、11月『週刊コウロン』の硬派系、4月『週刊現代』『週刊文春』、5月『週刊平凡』が創刊され、子ども向けコミック週刊誌『週刊少年マガジン』(3月、講談社)、『週刊少年サンデー』(3月、小学館)、『少年ジャンプ』(8月、集英社)も出されるなど出版社系週刊誌の創刊が相次いで週刊誌ブームとなり、週刊誌の年間総発行部数が初めて月刊誌の部数を追い越しました。

 出版社からはその後、『FOCUS』(昭和56年10月23日、新潮社。平成13年8月7日1001号で廃刊)、『FRIDAY』(同59年11月9日、講談社)などの写真週刊誌が新たに登場。田中角栄の法廷内隠し撮り写真などを掲載した『FOCUS』は、昭和58年(1983)12月16日に178万部を突破して「フォーカス現象」と言われ、流行語となりました。新聞社系の総合週刊誌から始まり、写真、女性、スポーツ、コミック、エンターテインメントなど諸々の週刊誌が咲き乱れ、盛衰を繰り返して今日に至っています。

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 《目次》【第一特集 時の主役】 疾風怒涛の五十年 昭和の天皇への私の感懐(海音寺潮五郎)/「週刊朝日」に見る時の主役/大宅壮一・野次馬の五十年/「週刊朝日」における三島由紀夫の軌跡

 【第二特集 ヒロイン達】 岡田嘉子 その愛の遍歴と波瀾の半生(戸板康二)/再録・松平節子さん、正田美智子さん 二人の場合/対談・「五十年を彩る美女たち」(渋沢秀雄、芦原英了)

 【第三特集 昭和事件史】 対談・「こんな事あんな事」(荒垣秀雄、高木健夫)/再録・「血文字お定」の情痴/激動の半世紀・私の証言 読者応募の入選十編

 【第四特集 「週刊朝日」復刻版】 《讀み切り時代小説傑作集》 「紅蓮地獄」(今東光・小田富彌 絵)/「大槻傳藏」(直木三十五・三宅鳳白 絵)/「八百屋お七」(土師清二・幡恒春 絵)/「瘧の甚内」(長谷川伸・岩田專太郎 絵) 《特別寄稿》 「都市情景」(谷崎潤一郎)

 【第五特集 作家と作品】 「転落の詩集」の前後(石川達三)/「西郷札」のころ(松本清張)/「新・平家」と「大番」(尾崎秀樹)/再録・「夢声対談」橋本凝胤の巻/編集者のこと(扇谷正造 他)

 【第六特集 昭和世相史】 平和博、そして、幻の万国博のこと/大正十一年・それはどんな年だったか/サラリーマン・心の憂さの捨てどころ/失業者世に満ち、アチャラカ栄ゆ/活弁や、ターキーもストライキ/戦争の日々・暗い谷間に拾った小さなお話/モダンガールからウーマン・リブまで/ガール時代とともに/ああモンペ/小さな赤い花、そして/バナナとイチゴ/あこがれは郊外の赤い屋根

 【第七特集 ミニ五十年史】 「電波」「カメラ」「ベストセラー」/「おもちゃ」「鉄道」「自働車」「映画」/「新劇」「プロ野球」「切手」「洋食」/「銀座」「相撲」「大阪」「将棋」「米」/「オリンピゥク」「航空」「住い」「心中」/「週刊朝日」小史

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