聖女の救済。映画化されないのは…
許さない…そのひとことで聖女は決意した。
ガリレオドラマの最終話前後編で映像化された「聖女の救済」。 文字ではわかりづらかった「トリック部分」のイメージが明確になりました。 ただもう少し精巧だったのでは?と思い、読み直してみたところ、 精巧だったのはトリック部分ではなく、「決意までの過程」です。 ひとまわりふたまわりストーリーに上塗りがあります。
ゾクゾクする…
ドラマでは描かれなかった部分。大きく2つです。 1つはドラマでいう「山口紗弥加」の役割。そしてもうひとつが 「ヒ素にまつわるもう一人の事件のはなし」です。
出版当時は「読後に感じたタイトルの鳥肌さ」のみ印象に残ってましたが、 ドラマを見たうえで改めて読むと「あれ? こんなに惹き込まれたっけ?」という内容です。 ドラマでは見られなくなった内海刑事の鋭い活躍があるからかもしれません。 女性ならではの直感と視点で、事件初期から「女性たち」に切り込んでいきます。
あらすじを整理。
- 「聖女」の北海道帰省中、旦那が不可解な死を遂げます。
- 聖女のパッチワーク教室の弟子、宏実が第一発見者となるのですが、
- 内海刑事の宏実に対する慧眼さが光ります。
- そして聖女に対しても。
- 草薙刑事の「聖女への思い」を絡めて物語は進んでいきます。
ドラマではあまり描かれなかった「ヒ素」の入手経路。 これにまつわるストーリーがゾクゾクです。
聖女の救済とガリレオの苦悩の順番
聖女の救済を読む前に「ガリレオの苦悩の第一章」を読むのが順番としてはおすすめ。
「流星の絆」の次に発売された「聖女の救済」と「ガリレオの苦悩」。 聖女の救済は長編で、ガリレオの苦悩は短編です。 長編のほうが主軸/期待するものがあり、発売当初は聖女の救済から読み始めました。
ただ読み始めると、まず内海刑事/柴咲コウが登場しています。 容疑者Xの献身では登場していなかったので、原作でいきなり登場した印象になります。 数ヶ月ぶりに会いに行く、云々という記述があるのですが、 「ファーストコンタクト」の部分を知らないと、「ん?」となるかもしれません。
まわりくどい言い方をする男だな…内海刑事のガリレオ第一印象です。
唸るタイトル「聖女の救済」
聖女の救済では「あるもの」に焦点が当たります。 ただウチにあるものや知識にあるものと合致しなく、ドラマを見るまでは想像が難しかったです。
それでも読み終えたとき「タイトルの秀逸さ」に唸りましたが… 文庫本392ページと420ページにゾクゾクです。
多少ネタバレになるので注意ですが、発売当時の東野圭吾さんインタビューに それらしきことが書いてあります。こちらは容疑者Xの献身と比較されてて面白いです。
時間が経過してからのドラマ化。 2度目、ドラマ後に楽しみが増す「聖女の救済」かと思います。
聖女の救済ランキングいろいろ
容疑者Xの献身映画公開が08年10月。そのころ出版された「聖女の救済」。 当時スペシャルドラマ「ガリレオΦ/香理奈」が放送されましたが、 その原作が収録されている「ガリレオの苦悩」と同時発売となりました。
聖女の救済はこのミスでは18位、08年の週刊文春ミステリーでは5位。 私の東野圭吾個人ランキングでは19位です。
ちなみにこの年週刊文春ミステリー2位に選ばれたのが伊坂幸太郎。 死神の精度、重力ピエロなど読みましたが、映画化もされた下記作品が有名です。
途中淡々と進むものの最後にグィっと持ってった映画死神の精度。 聖女の救済つながりでこちらも読めたらと思います。